2019_07
10
(Wed)20:44

Blue Jeans #2

じわりと汗が額に滲む。
受け入れるべきじゃない事は重々分かっているのに、分かっていながら毎回そこを許す度に自分はこの背後の男のテクニックに溺れてるんだと。男としての矜持をあっさりと崩させた奴の硬くなったものを押し付けられて、僕は息を詰めながら自覚した。
「…欲しいんだろ?」
やめて欲しい、こんな時にそんな掠れた甘い声で囁くのは。それでなくてもずっと恥ずかしい思いを堪えて尻を突き出してるってのに、これ以上言葉で欲したら僕のプライドは無いにも等しい。
「どっちの口もお堅いか、まっ別にいいけど…」
するりと背後を覆われて自分と同じくらいの体の圧を受けながら、ピタリと吸い付くような肌の質感にぶわりと総毛立つ。でもだからってそれが嫌だと思わない自分に嫌になる。ふっくらとした乳房が背中に張り付いてるわけでもないのに、どくどくと心臓が跳ねる事自体おかしい筈なのに。
「痛くないのはもう分かってるのにな、いつまで経っても慣れないか…」
くすりと背後の影に笑われても、それにも僕は答えられない。ハイ、ソウデスなんて口が裂けても言いたくはないから。痛くされた事は確かに無いけれど、何回されても慣れたいなんて思っていないのだ。
「いいさ、そのままで。慣れてない割に俺のだけは…」
中途半端な所で強引に首を捻られて唇を塞がれる。その続きを、と一瞬よぎったけど聞かない方が身のためだと悟る。
既に突っ張る腕は二人分の体重に悲鳴を上げそうに筋張り、ねっとりと絡み付いて喉奥まで差し込まれた舌に呼吸は苦しいのに。それでもやめて欲しいと思っていない自分がいる。
「ん、」
最後に舌をねぶって離れていく赤いその唇が名残惜しいだなんて。もっとキスしていたかったなんて悔しいから言わないけど、この男のキスは常に極上だった。
その間にも太腿から撫で上げられた手の動きにぞわりと震えが止まらなくて、そろそろ観念するべきだと覚悟を決める。
「ゆっくりと息、…吐いて」
ゴムの膜が薄い皮膚を少しだけ押し開く。怖い、と言う想いが先に来て、固まると必ず髪の毛に柔らかな感触が与えられる。
「大丈夫。ゆっくりやる」
その言葉に安心して泣けそうになるから腹が立つのに、何でこんな事をと。子供でもないのに頭や体を大人しく撫でられた上に、あられもない格好まで、なんで自分がこんな。
「く…っ、」
不意に耳の後ろで吐き出された男の息に震える。僕のこんな狭くて硬い場所をどうしてそんなに切羽詰まってまで入ろうとするのだろうと。
「一気にいかないから、大丈夫…」
気付けば白くなった指先に男の手が触れる。シーツを強く握り締め過ぎて血がそこまで届かなかったのだろう。なのに男の手がその指に絡んだ途端に血が通い出すのが不思議だった。どくどくと熱くて、今の今まで白かったのが嘘のようで。
「痛くないようにゆっくりな」
まるでこれは呪文だ、同じ言葉の繰り返し。それでも不思議と心と体は繋がっていて、気持ちが落ち着けば強ばっていた体も勝手に緩み出すのだ。
「ん、中は柔らかい…」
わざわざ口に出す必要は無いのにと思う。そんなのを受け取ってしまえばただ耳は熱くなるだけだ。だけど体の中の男のものも、負けないぐらい熱いから困る。僕の何がそんな事にさせるのかと。
「はぁ、悪い。俺だけ気持ち良くなって」
一瞬、体に走った電気の正体は男の手の動きだった。まだ全部入っていないのに、僕の体を弄り出すなんて余裕綽々と言いたいけど。でも正直、直接の刺激は有難い。
普段もその男の指はしなやかな動きが美しくつい目で追ってしまう程で、今だって思わず追いそうになり、指の先で目にしたものに慌てて逸らす。
「自分の見て興奮してたのか?」
分かっている事をいちいち聞いてくるのが男の悪い癖だった。でもそれさえも嫌じゃないから咎めないけど。
ゆっくりと全体のフォルムを包み込むように指先で柔らかく握られると僕のは顕著に質量を増して。背後の男が嬉しそうに手を筒状にしてその質量を更に育て出す。
「ここ擦られるの好きだよなぁ」
キスも上手いけどピンポイントで性感帯を見つけるのも上手いから、簡単に僕のものは男の手の内で転がされて大きくなる。
「このまま出したい?」
かぷりと甘噛みされた耳の縁にまた唇の熱が押し付けられて、首筋から這い上がって来る鳥肌を払うように僕はかぶりを振った。
「…分かった」
男はそう短く答えると添えた手はそのままに、僕の体の中に留めていたものをゆっくりと動かした。出る事はあっても入れられる事など有り得ない器官を男のものが抜き差しされる。痛みは無くても違和感で埋め尽くされた腸内、自然とまた力強くシーツを握ったタイミングで男は手の内のものをゆるりと扱き出す。
「痛いか…?」
ゆったりとした腰の動きに合わせて僕のものも緩々と擦られる。違和感はまだあるが、痛みは無いので小振りに頭を振った。
「でも凄い汗だな」
背を這う舌の生温さにまた鳥肌が立った。何がいいのか分からないが、男は僕の体から噴き出した汗をぺろぺろと舐めとっていく。擽ったさはあるものの嫌悪感は無く、時折強く吸われるたびに顔を上げた。何故か背中にだけ痕を残す男の行為が不思議で、けれども一度もその理由は尋ねられていない。幾つか痕を付けて満足をしたのか、男の両手が僕の腰に回され、緩慢な動きから本格的な腰振りへと変わる。傷付けないように壊さないようにと、男の労るような腰使いも悪くないけれど、奥へ奥へと強く穿たれる例え難い刺激に痺れた。
「声、我慢すんなって…っ、」
腰を一層強く掴まれ揺さぶられて、とっくに抑えていた声なんて漏れ出て止まりやしないのに。これ以上の喘ぎを求めて気持ち悪くはないのだろうかと不思議に思う。
けれども僕はそんな男の心理よりも刺激される中の具合に没頭していたかった。中でイク事を覚えてしまった体はもう手だけでは満足がいかなくて、そんな体にした男の腰使いに酔いしれる事だけに夢中だった。まるで獣の交尾のように快楽だけを追い求めて体を開き、その対価として期待以上のものをこの男は僕に与えてくれる。
汗で滑る腰を抱え直され、より一層強く掴まれた指先が僕の皮膚にめり込んで、ぶつかる肌と肌の音が激しさを増す。目に見える物はぼやけ、犬みたいな呼吸が続く。男は僕が言わなくても無言で快感を送り込むように無我夢中で動いていた。
けれどある瞬間を迎えると腸が戦慄くと言うのか、とにかく物凄い衝撃に体が襲われる。堪えきれずに膝から崩れると、視界に無数の星が飛び散った。ガタガタと止まらない震えをやり過ごしながら、こんな快楽をまた楽しめたと喜びに浸る。
「ふぅ、…」
溜め息と共に繋がりを解かれ、喪失感を覚える間もなく体を返されるとようやく男の表情が見えた。やり切ったような達成感を滲ませつつもまだその顔には余裕が窺える。
「まだ…出来るよなぁ」
汗で濡れた僕の下の毛を指の腹で撫で上げながら男は口の端だけを上げて笑う。そんな行為ですら敏感な今の体には堪らないのに、毛の中をうねりながら進む指にぞくぞくと鳥肌が止まらない。
「ここに欲しいのは何だ?」
指が辿り着いた先をくちくちと弄り、男は薄く笑って僕を見下ろす。充血して過敏になっているその場所は指だけでもかなりひくついていた。でも僕が欲しいのはそんなのじゃなくて、いまだに萎えずに薄い膜に包まれたそれに手を伸ばす。すると男は正解とばかりに唇を重ねる。舌をいいようにねぶられながら触れた男のものを握ると、膜を隔ててもその熱さは僕の手を溶かしてしまうようで。堪らずに自ら受け入れる場所へとそれを導いていた。
「やっと素直になったな」
笑う男の言う通りに、僕の体は浅ましく今か今かと口を大きく開けてそれを飲み込む。元々は女としか経験の無いこの体を、ここまで作り替えた男のそれはそうそう簡単に僕の中で弾けない。あと何度このまま揺さぶられてイカされるのだろうと再び熱に浮かされ始めた頭でぼんやりと思った。
霞む視界の中でも男の唇の黒子は妖しく輝いていた。
関連記事
«  HOME  »