Road Bonus track -エッセンス-
キッカケがそれであったとしても、そこにはちゃんと僕自身の意思が伴っていたんだって、それをユノに伝えたかっただけで。
本当は僕だっていつも優しくされてばかりじゃ不安で仕方がなかったって事も。
ユノに抱かれる度に常に幸福の絶頂に達するのは僕の方ばかりで。
意地悪くする振りをしたって必ず自分の優先順位を僕の後に回す優しい人だから…
勝手に思い描いたリードする大人の余裕を表現したつもりだった。
単純にユノの欲望をそのままさらけ出させられればいいとも。
──だからこれは願ったり叶ったりの結果なんだろう。
いまだかつてない程に僕の体は大きく揺さぶられていた。
でも決してそれはガツガツしている感じじゃないのに、確かにユノは僕の体よりも自分の快楽を優先しているような腰遣いで。
ゴリゴリと抉られる内壁は、いつも僕が攻められる部分とは別の箇所を突いている。
だからと言ってそれが僕にとって不快なわけじゃなくて、寧ろ。
ユノに貪られている感が、かえってゾクゾクと甘く思考を痺れさせてくれる。
「…、んあ゛っ、、、!」
がつっと強く穿たれて思わず上げた声にユノの視線がかち合う。
唇を少し開き、何かを言い掛けてまた引き戻す。
そして一層眉の皺を寄せて、脚を抱え直すと更に最奥地を穿つように腰を大きく振りだした。
「ん、んっ、、ん、゛、!」
一瞬、声を上げた事でユノは動くのを躊躇するかと内心で焦ったのに…いつものユノなら僕を労って止めたに違いない。
こんなに一方的に攻め立てるユノなんて初めて…
ガツガツと奥ばかりを突かれて体を通して脳まで揺さぶられるようだった。
ユノの猛々しい腰遣いに、僕の中心からは知らぬ間に白濁が溢れ出している。
ぼやけた視界の中で凝らして見たユノは、自身の汗で湿らせた髪を振り乱しながらもギラギラと目を輝かせている。
これがユノの素の欲望・・・
ぎゅぅぅと下腹に強い衝撃が走り、内壁が蠕動するように収縮を繰り返す。
同時にユノの低く発した唸り声が耳にこだまし、ぶるぶると震える指先が腰に食い込んでくる。
「く、っ」
ユノが腰を引くのに連れて、中から液まで引き摺られて溢れ出す。
尻の下がじわりと濡れる感触。
気持ちが悪いと思う暇もなく体を横に倒され、ベッドに横たわったままで背後をユノに取られてしまう。
「…っ!」
ぬるぬるした物体が尻に当てられて背筋が思わず震える。
もうそんなに硬くなっているという驚きと共に、後ろでイカされた僕の方はまだ体が敏感に反応をしているのだから。
だけどそんなのはユノにとってはお構いなし、まだユノの吐き出した体液が入り口に留まっているそこにあてがわれるだけで嫌な水音が室内に響く。
決して濡れないそこからの、雄を引き入れる為の酷く厭らしい音が耳を犯す。
「んぅ、、っ、、!」
しかし期待したよりも遥かに物足りない物が後ろの口に差し込まれてしまう。
それと同時にゆるりと握り込まれる萎れかかった前のそれ。
前も後ろも同時にユノが指で弄り始めたのだ。
「や、っ、、」
ぴちゃぴちゃと搔き回す指に伴って前を大きく擦り上げられる。
でももっと大きな刺激が欲しいと、体が、心が欲して止まない。
「…ん?…何が嫌なんだ」
耳朶を半分口に含まれたままでユノに囁かれ、全身を鳥肌が襲う。
望みを知っていてわざとそうしているのは分かりきっているのに、、、
「…ハァッ、、これ、これがいい…っ、」
後ろ手に触れた物の熱さに、電気が走ったように体が跳ね上がった。
そう、これじゃなきゃ嫌なんだ。
僕の体はもう指じゃ物足りないのだから。
「よく言えた」
後ろから掬い取った蜜を胸の膨らんだ粒に塗り付けられるのを目で追いながら、僕の後ろは望むべきものを受け入れたのだった。
ユノが横から穿つ度に二人の密着した体を僕の前と後ろから溢れる物が汚す。
もう僕は限界だと思うのに、ユノの手によって握られてしまうとそれなりに芯を持ってちゃんと透明な液体を滴らせた。
横で散々突かれたかと思えば力の抜けた脚を大きく開かれて有り得ない角度で突き上げられもした。
今まで見た事もない景色を体験させられている感覚にも似て、次第に僕もハイになっていった。
でも、流石にうつ伏せの状態でもう腰を上げる気力も体力も無く。
ところどころ濡れたシーツに沈む僕を、まだ突き続けているユノには既にお手上げで。
ユノの素の欲望を引き摺りだすのは命がけなのかと、心の中でそっと呻いたのだった。
「本当に悪かった、、あっ、その段差ゆっくりな…」
「いや、何度も言うけどユノが悪いわけじゃ無いし、…これくらいなら大丈夫」
自分から仕掛けておきながら、次の日の講義スケジュールを見誤っていたのが悔やまれる。
自業自得とは言え重い腰と痛む脚を引き摺りながら、ユノの支えを借りてようやく構内まで辿り着けてホッと息を吐く。
「よう」
すると、前方から偶然宜しく昨夜の元凶、もといアドバイスの神が降臨する。
「ヒョンッ、、!」
ユノは僕の体を瞬時に壁に預けたかと思ったら、相手が声を発する間も無くヒュッと空気を切り裂きながら拳を繰り出していた。
「、、!」
ピタ、と。顔面すれすれに止まった拳。
浮き出た血管がユノの心情をあらわにする。
「何故、避けないんだよヒョン…」
スッと下げられた拳を見て、引いた血がたちまち巡り出すのが分かった。
それくらいにユノは本気だったように僕には見えたんだ。
「それは俺に避ける理由が無いからな。ユノヤ…お前はチャンミンを盲愛しているが、それが不安要素になり得るという事を知らない」
「………」
「ちゃんと会話をしろ、時には体を使ってでも。お前がチャンミンを想っているように、チャンミンも同じだと。…お前らを見ているとな、自分がしてきた事を嫌でも顧みらされるんだよ」
「…ヒョン」
「俺もそろそろ取り戻しに出掛けるさ、お前らに負けない絆を」
ヒチョルさんは僕の様子を痛々しげに眺め「エッセンスは程々がいいな」と苦笑いをする。
その表情が、今まで捉えどころのない謎な彼では無く、人間味溢れる彼の素の顔なんだと。
僕はそう感じていた。
その出来事から暫くして、ヒチョルさんが留学手続きを済ませたとユノから聞かされたのだ。
「あの天才を振った更に天才を追って?」
「あぁ、そうらしい」
ユノ曰く、大学で運命的な恋に落ちたヒチョルさんが失恋の痛手から抜け出せずに数年留年していた事にも驚いたのだけど。
「は!?男!?」
「チャンミン、声が」
しっ、と、口元を指で押さえられてハッと我にかえる。
ここはいつものカフェテリア、何故か周りからどよめきが上がっているのは気の所為だと思うけど。
やたらいつも僕等の周りが混み合うのは頂けない。
おちおち内緒話も出来やしないじゃないか。
「は~・・そんな展開、あ、ユノここにソースが」
「ん?」
教えた方と逆を拭き取ろうとしたので、そうじゃないよと教えながら結局僕の手で拭き取ってしまう。
それをペロッと舐めるとまた周りが騒がしいんだけど。
「じゃあ僕達があの天才の背中を押したって事になるのかな…?」
「まぁな。よくヒョンが口にする”エッセンス”にはなれたのかもな」
「はぁ、、天才の考えてる事は僕にはさっぱり分からないけど」
「天才と馬鹿は紙一重だろ?」
そのユノの一言にぷっ、と吹き出す。
確かに失恋したからって留年を繰り返すなんて馬鹿げていると思う。
でももしかしたら留学から戻って来た彼をヒチョルさんは待ち続けていたのかもしれないじゃないかとも思えてしまう。
でも僕はあの人ではないから、その恋路にどうこうは言えない。
“ご馳走様、旨かった”と。
空っぽになったお弁当箱を眺めるそんな穏やかな午後のひととき。
刺激もエッセンスもそこには存在しないけれど、そう言う時間が二人の間に流れる続ける事が幸せの証かもしれない……

Bonus track end

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