2019_02
10
(Sun)00:00

Road -2月14日-

「よっ、キュヒョン」

「うす」

僕等の間ではこんな短い挨拶が今の流行りだ。

ネットの世界で知り合えたキュヒョンとたまたま同じ大学の同じ学部だった事には驚きを隠せなかったけど、それ以上に喜びが上回った。

でも何故か同様に喜んでるくれると思っていたユノはその報告に大層不貞腐れた。
勿論、いまだにユノは僕にとってかけがえの無い友人の一人であって。
相変わらず今も同じアパートの部屋で同じ空気を共有している。

そのユノにキュヒョンを紹介して縁を繋げたいと思ったのに…ユノは何故かキュヒョンにライバル視をしている気がするのだった。


「豊作じゃん」

「そっちこそ」

二人して互いの手荷物を見合ってニヤリと笑みを浮かべる。

僕はキュヒョンと一緒に所謂キャンパスデビューなるものをやった。
髪の毛に少し手を掛けるように心がけ、親からの入学祝いとして念願のレーシックの手術も受けさせて貰い。あの忌々しい瓶底眼鏡ともおさらばをしていた。

だけどその変化にユノが浮かない顔だったのが、僕はとても面白くないと今も思っている。
だからこそ、このバレンタインという名のイベントに僕とキュヒョンは賭けていたんだ。
今年こそは一つでもチョコが貰えたら僕達のデビューは成功だったと胸を張って言える、と。


「7、8、僕は8個」

「お、チャンミンの方が少ないな。俺は11個だ」

したり顔でキュヒョンは自分の勝利に酔いしれる。

でも8個も貰えただけで僕は満足だった。
何故なら母親以外から今まで義理でもチョコなんて貰った記憶が無いのだ。

「気を落とすなよ?」

「うん、別に落としてなんかないけど」

「そっか。ま、チャンミンはそこいらの女子よりビューティホーだから、女子が尻込みするんだろ」

「はぁ??僕が??」

「自覚無いって罪だよなぁ。お前、時々男の方から熱い視線送られてんじゃん。誰とは敢えて言わないけど」

ニヤッと嫌な感じで笑うキュヒョンの言う事は俄かに信じ難かったけど、一緒に暮らしているあのユノでさえ僕の事を綺麗になったと言う時がある。

「う、微妙。嬉しいような嬉しくないような」

自分の顔を鏡で見てもどこがどう綺麗なのかいまいち分からない。
寧ろ女性に好かれる男でありたいと願ってのイメチェンだったのだから、胸中は複雑だ。

「それ、チョン・ユンホに見せんの?」

広げたチョコを再び紙袋に仕舞おうとした所でキュヒョンに聞かれる。

見せるって言うか、一緒に住んでるから自然と見られるって言うか。

「うん」

見せなくてもユノから聞かれるかもしれないし。

「そりゃご愁傷様な事で」

「は?」

「いや、俺の大きな独り言」

意味不明な事をキュヒョンは呟くと、僕の肩を解すように揉み込んだ。

は?一体何なんだ、、、?









帰りにスーパーで夕飯の買い物を済ませた際に、ある物を買ってみた。
それを使って夕飯の支度の傍らで初めての事に挑戦をした。

ユノが僕との共同名義で住んでいるアパートに帰宅したのは、19時を過ぎた頃だった。
サークル活動を終えた足でそのまま走って来たらしく、ダンスで掻いた汗をまだ体から発していた。

「風邪引くから先にシャワーを浴びて来たら?」

玄関先で出迎えるなりユノの汗ばんだ顔を見て言ってみたのに、当の本人はじっと僕の顔を見つめるなり。
「チョコは?」と、唐突に聞くのだ。

「え?」

内心、もうバレたのかと焦る。

「えっと、今は冷蔵庫に入れてて…」

ユノって案外鼻が利くんだと新鮮な発見と共に落胆の波も同時に押し寄せる。
出来れば夕飯の後に登場させたかった物だけに、残念過ぎる。

「…冷蔵庫、まさか手作りのケーキとかじゃないよな、、」

ぎくりとする。
玄関開けただけでそこまで分かってしまうものなのか???

答えに詰まる僕の体を押し退けてユノはズカズカとキッチンの方へ向かってしまう。

「あっ、え、今!?シャワー浴びて、ご飯食べてからでもー・・」

慌てて後を追うのに、ユノの行動は恐ろしく素早く。既に冷蔵庫から小さな四角い箱を取り出していた。

「こんなの…どうやって、まさかっ」

ユノの箱を持つ手がぶるぶると震えている。
僕は何故そんなに怖い顔をして箱を掴んでいるのか理解が及ばず。
どうにかしてその手から箱を奪取出来ないものかと恐る恐る腕を伸ばそうとした。

「この家まで届けに来たんだな!?」

叫んだと同時にユノが箱から手を離すものだから、危機一髪でなんとか僕はその箱を受け止める事が出来た。

「ちょ、っ!折角作ったものを何するんだよ!崩れるだろ!?」

普段、そんな乱暴な事は絶対にしない筈のユノがどうしてこうなってしまったのかと急に哀しくなって、僕は箱を抱えたまま俯いてしまう。
目からは今にも涙が溢れそうで、とてもじゃないけどユノの顔を直視するには耐え難いものがあったんだ。

「…チャンミン、それは…そんなに大事なのか…?」

哀しいのは僕の方だと思っていたのに、俯く僕の頭の上からは。耳にした事も無いくらいにユノの辛そうな声が降って来るのだ。

「ユノ…?」

「………」

思わず顔を上げた先にあったのは、ユノの、とても哀しそうに歪む表情だった。
それを目にした途端、まるでユノの心と同化したように僕の胸も引き攣れる痛みが走る。

「…大事だよ、少なくとも僕にとっては。ユノの事だから沢山貰って来てるんだろうなって思ったんだけど、あげたら喜んでくれるかもって」

箱をそっと開けると、ユノが手を離した時に側面が削れてしまったであろうガナッシュケーキが姿を現した。

「初めての割に上手く出来たと思っていたんだけどなぁ……」

腹に入れば形なんて崩れていようが全て同じなんだろうけど、それでもやっぱり…開けた瞬間にユノが歓喜するような物を作ってみたかったんだ。

「初めて、、?…え、、」
急にユノの様子が変わり、纏っていた空気がやわらんで見える。
崩れたケーキに対して謝罪の念が込み上げたのかと僕は思っていた。

「うん、ケーキとかスイーツ系って作った事無かったし」

「…チャンミン」

「うん?」

「ごめん、俺、、もしかして取り返しのつかない事を」

「あぁうん、いいよ。ユノも悪かったって思ってくれてるみたいだしね」

ユノがこれ以上自分を責めないようにと、笑って終わりにするつもりでケーキを箱に納め直そうとした僕の手を取られてしまう。

「このケーキ以外にも今日、誰かに渡した物とか無いのか?例えばキュヒョンとかに」

「は?キュヒョン…何でキュヒョンが、僕にあげる義理はない筈だけど」

不可解な質問に対して率直に答えると、急に破顔し出して、更に僕はユノの考えている事が理解出来ずに混乱した。

「じゃあ、今日。チャンミンがチョコを渡したのは俺だけでいいんだよな?」

何だか分からないけれど、あんなに怒りのオーラを纏っていた後とは思えない程に。
喜びを隠さないユノがやたらと念を押して聞くから。
釣られて僕も念を押すようにあげたのはユノだけだと強く伝えた。

「…チャンミンがどう言う意味で俺にチョコを渡したのかは今は敢えて聞かないけど、」

そこまで言うと、ユノはおもむろに伸ばした手を僕の頬に添わす。

「俺はずっと好きだったよ、こうやって特別な意思を持って触れたいくらいにチャンミンを…」

ユノの親指の腹をもって僕の唇が撫でられる。

「っ!…」

「シャワー浴びて来る」

ユノは僕にとてつもない爆弾を落としたまま、颯爽とその場から消えた。

僕もまた。
シャワーを浴び終えたユノとどう接していいのか分からずに、中途半端に箱から飛び出したケーキを放置して自室に逃げ込んでしまったんだ。





朝起きると、ユノはもう出掛けて家には居なかった。
そして冷蔵庫の中にもあのケーキの箱は見当たらず。
悪いかなと思いながらそっと覗いたユノの部屋の中にあの箱を見つけた僕は、思わずその場に蹲って高鳴る胸を押さえた。








ふわふわした気持ちで大学に行った僕を、何故かキュヒョンは人気の無い所に引っ張って行き。
唐突にユノにチョコをあげたのかどうかが問題だと息巻いた。

そして、ケーキをあげた事実を告げた僕に、キュヒョンは昨日のユノの武勇伝なるものを聞かせたのだった。




───求める一つのチョコ以外は受け取らないって宣言したんだぜ、チョン・ユンホの奴。結局、長蛇の列を片っ端から断ったらしいけど。






僕はふと、ユノの部屋にぽつんと置かれていた箱が尊い物に思えて。

喉の奥に何か詰まって苦しいみたいに、上手くキュヒョンの話に相槌を打つ事が出来なかった…















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あまーい❤バレンタイン

あまーい❤あまーいHAPPYバレンタイン❤(ΦωΦ)フフフ…ユノの勘違いからの慌てっぷり好きだなぁ~チャンミンがレーシック手術受けたり髪の毛気にする様になって男女問わずモテる様になって内心面白くないユノが可愛いなぁ~しかもキュヒョンにライバル視してるしね(ΦωΦ)フフフ…ユノだって人気者でバレンタインのチョコ長蛇の列だったのにバシッと断って一目散にチャンミンの元にダッシュしてきたユノの武勇伝にオBBAは朝から猛烈に嬉しくてダッシュしたいwwwって今まだベッドの中だけど(笑)ユノがチャンミンにさらっと告白しながらあの綺麗な指でチャンミンの唇を触ったかと思うと(°∀°)ヒィィィィって変な声出ちゃったわ( ✧Д✧) カッ!!2人のあまーい❤バレンタインにむかーしむかーし遠い学生の頃に作った←めっちゃ遠いやないかいwwwバレンタインの手作りケーキを思い出したとさ(笑)

2019/02/10 (Sun) 07:18 | くみちゃん #- | URL | 編集 | 返信

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2019/02/10 (Sun) 07:55 | # | | 編集 | 返信

チャンミン自分の作ったケーキでのど詰まらせてる感。
ぷぷぷ。

2019/02/10 (Sun) 09:05 | 723621mam #- | URL | 編集 | 返信

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2019/02/10 (Sun) 22:27 | # | | 編集 | 返信

くみちゃん様

くみちゃんこんにちは(*˘︶˘*).。.:*♡コメント有難う御座います。

あらら!お布団の中から熱いコメをヾ(≧з≦)ゞブッ。かく言う私も現在布団の中でポチポチしていますけどね〜〜。
なになに!?手作りのケーキだぁ!?それはもしや…○ん○ちにあげる為Σ(*゚Д゚ノ)ノ←この伏せ字めっちゃ怪しい(T▽T)アハハ!
そうだったのかー・・・青春だねぇ(≧∇≦)b
で?今年は?あげるのかな??
って、話から脱線しました笑。
甘い展開、お好きでしょう(σ≧∀≦)σ??

2019/02/10 (Sun) 22:28 | あゆ #- | URL | 編集 | 返信

は***ん様

は***んさん初めましてこんにちは(*˘︶˘*).。.:*♡コメント有難う御座います。

はい、初めましてですね。そして久々の更新にお気付き頂けて嬉しいです!
ユノは自他共に認める熱い男ですから、気持ちを自覚してしまえば一途なんです(〃艸〃)ムフッそこが可愛いんですけどね〜〜。
一年前までは高校生ですもん、大人と子供の境い目を彷徨ってる印象が伝わればいいなぁと思って書いてます♪
さぁ!今後チャンミンはどのようにしてユノへの想いを変えていくんでしょうか(*´罒`*)ニヒヒ♡

2019/02/10 (Sun) 22:35 | あゆ #- | URL | 編集 | 返信

723621mam様

mamさんこんにちは(*˘︶˘*).。.:*♡コメント有難う御座います。

窒息死寸前、否、自滅です笑笑

2019/02/10 (Sun) 22:37 | あゆ #- | URL | 編集 | 返信

「求める一つのチョコ以外は受け取らない」宣言するなんて、さすがヤルときゃヤル男…もとい、やるときゃやる男ユノ(*´艸`*)
ギュったんのお陰でチャンミンもユノの気持ちと自分の気持ちに気がつけたみたいだし、あと少しですかのぅ(*´艸`*)

2019/02/10 (Sun) 22:48 | まりおん #- | URL | 編集 | 返信

鈴***様 私はシ○ミテ○トのおぴんく♡

*口鈴*さんこんにちは(*˘︶˘*).。.:*♡コメント有難う御座います。

↑合ってます?改名してないんですよね?
お久し振りです( 。-_-。)ε・ ) チュッ
仰ってましたよね、寮生活するからリアルで妄想出来るみたいな事を笑笑。
やはり色々ヤバいのですか(*´д`*)ハァハァ??
男子寮って思ってる以上に凄い所なんだと、ネットで情報はチラ見しましたけど。
ユノとチャンミンに置き換えるにはグロ過ぎて閲覧注意でした…_:(´ཀ`」 ∠):
チャンミンなんか寮に放り込んだら恐ろしい事になるんじゃないでしょうか!?
義警の時は馬様とドンへがある意味守ってくれていたんだと思ってます(´、ゝ`)ふw
えへ。
なになに?御長男もボーイズラブを匂わせてるんですか(//∇//)
いやーん、妄想の宝庫やー!

2019/02/10 (Sun) 22:50 | あゆ #- | URL | 編集 | 返信

まりおん様

まりおんさんこんにちは(*˘︶˘*).。.:*♡コメント有難う御座います。

《さすがヤルときゃヤル男…もとい、やるときゃやる男ユノ(*´艸`*)》ですよね笑笑!
ギュのナイスアシストもなかなかやるでしょう(๑°ㅁ°๑)‼✧ !?
そろそろね、動いてもいいんじゃないんでしょうかね( ̄m ̄〃)
私も展開が早いのは好物でぇす♡
でも、エッチなのを書くのは久々過ぎて………ちょっとどうなるかワカンナイヨポク(*∵)って感じなんですヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3ドヒャー。

2019/02/10 (Sun) 22:56 | あゆ #- | URL | 編集 | 返信

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