2019_02
09
(Sat)00:00

Road -卒業-

「はぁ……」


本日何度目かの重い溜息にダチは俺を鬱陶しそうに扱う。

胸にはこの門出を祝う為の愛らしいコサージュが刺されている。
通い慣れた学び舎をいよいよ去る日が来たのだ。
だが、卒業式は滞りなく無事に済んだものの、いまいち晴れやかな気分にはなれていない俺だった。



「「ユノ先輩っ」」

担任の先生から改めて祝辞を送られ、後は自由に帰ってもいい段階で教室を出た途端に後輩達の一軍に囲まれる。
怯んだ隙を見て、更に後輩達は躙り寄って来るものだから流石の俺でもたじろんでしまう。

「何だよっこんな大勢で、みんなに迷惑が掛かるだろ!?ほら、こっち寄れって」

廊下の端にその群れを寄せると、他の生徒から投げ掛けられる視線は和らいだ。
俺だって目立ちたくて目立っているわけじゃないのに、ったく。

「あのっ!僕達、ユノ先輩に憧れてるんです!」

「あっそう。有難うな」

キラキラと輝く目で見上げられても喜んでいいものなのか。
一人も女子生徒が居ないってのもちょっとな、と複雑だった。

「ですから、是非、どうか僕達にユノ先輩の私物を分け与えて下さいっっ!」

その言葉を皮切りにあれ欲しいこれ欲しいと皆口々に叫び出す。
もう煩いったらありゃしない。

スゥッと深呼吸をしたら、その様子にザワつきはピタリと止んだ。

「それは無理なお願いだな。じゃ、お疲れさん」

言ったと同時に輪の中から抜け出す事に成功をした。
往生際悪く何人かは、走り抜ける俺に着いて来ようと必死だったが、脚力に関しては自信があるので振り切るのにそう時間は掛からないで済んだ。










「お疲れさん」

約束のカラオケ店でダチと合流は果たしたけれど、その中にチャンミンの顔は見えなかった。

「誘ったんだけどな。約束があるって断られたんだよ。チャンミンも隅に置けないよなぁ」

ニヤニヤと笑うダチに釣られて笑う事は俺には出来なかった。
約束、その響きだけが頭の中で何度もリフレインをする。



3時間歌っても結局モヤモヤの残る俺は、ダチに断りを入れて早々に帰宅を決めた。
帰ると既にチャンミンは私服に着替えていて、何事も無かったかのようにお帰りと言って俺と顔を合わせた。

「何で今日来なかったんだよ」

着替えもせずにチャンミンに詰め寄ると、明らかにその目が泳いだのを俺は見逃す訳もなく。畳み掛けるように、約束って何?と問いただした。

「それは、帰ったら話そうと思ってて…」

「女?彼女出来たって話かよ」

吐き出す言葉にチャンミンは体を竦めた。

よくある話だ。
卒業をキッカケに告白をして付き合うパターン。

俺の頭の中では勝手に妄想が膨らんで、口にするそばからチクチクと胸が痛み出す。
まるでコサージュがそのまま心臓を貫いているみたいに、自分の言葉で傷を抉るみたいに。

「彼女、?僕が…?」

信じられないとでも言った風に目を丸くさせて尋ね返す様子に、じくじくと痛む胸を押さえながら俺は言葉を続けた。

「チャンミン、かっこいいじゃん。男の俺が見ても男気があるし、それに」

そこまで言い掛けて次の言葉の危うさに出かかったそれを飲み込んだ。

“それに綺麗だよ、俺はずっと見てたから”を──





「それに、何?」

突然勢いを失って黙り込んだ俺を下から覗き込んで来たチャンミンに対して、唐突に押し倒したい衝動に駆られて焦った。

「それに、優しいから…モテるだろうなって」

ふいっと、直視出来ずに逸らして言葉を繋ぐと、チャンミンからは笑いが漏れ出る。

「あははっ急に何!?もぉ、違うよ。僕も寮に入る事にしたって、ユノ君を驚かせようと思ってたのに。彼女?僕の方がびっくりした」

目の端に溢れた涙を擦ってもまだ笑いは止まらないようで、ユノ君って不思議、とくつくつと笑い転げていた。

「…寮、」

「うん。頑張れば通えない事はないとは思うんだけど、僕もユノ君みたいに家から出てみたくなってね。父さん達はいいって言うし、寮もまだ空きはあるって聞いたから今日、わっ、、!」

押し倒したも同然にチャンミンにタックルする勢いで抱き着いた。

クシャリと耳慣れない音が二人の間に擦れる。

「この家を出る気があるなら俺と一緒に住もう!」

「え、っ、?」

めでたく同じ大学に合格を決めた俺達だけど、学部の違いから殆ど接点が無くなると予想をしていたんだ。

しかも、シム家の居候期間は高校に通っている間の約束だ。
だから卒業と同時に俺の住まいは大学の学生寮に移る予定だった。

チャンミンを見下ろしていると、胸の中のモヤモヤが少しずつ消える感覚を覚える。
同時に、あんなに燻っていた原因が何か気付いてしまった。

…もう認めざる得ないよな。


決して胸のコサージュが針を突き立てて心臓を貫いてるんじゃない。
この胸の痛みは、恐らく。








猛烈にチャンミンと唇を重ねたい。



それが痛みの答えだ。




















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C.O.M.M.E.N.T

ど、同棲ですねっっ!

2019/02/09 (Sat) 03:38 | 723621mam #- | URL | 編集 | 返信

723621mam様

That's right.( ̄∇ ̄)v ドヤッ!

2019/02/09 (Sat) 06:30 | あゆ #- | URL | 編集 | 返信

ユノ、やるなー( ̄ー ̄)ニヤリ
ユノも男気あるじゃん(*´艸`*)
でもさー、一緒に住んだりなんかしちゃったら、止まれないよ?止まらなくていいけど。←

2019/02/09 (Sat) 12:39 | まりおん #- | URL | 編集 | 返信

まりおん様

まりおんさんこんにちは(*˘︶˘*).。.:*♡コメント有難う御座います。

ユノ、やる時はヤル男です( ✧Д✧) カッ!!あ、やる男か。
ま、どっちにしろいつかヤリます〜(*/∀\*)イヤン

2019/02/09 (Sat) 20:44 | あゆ #- | URL | 編集 | 返信

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