My Fair Lady #74

「、、っ、ゆのっ…もういかなきゃ……っ、」
「…あぁ、分かってる、今日は送れずに済まない」
分かったと言いながらもユノは全く僕を離そうとしない。
───初めが肝心とはよく言ったものだとつくづく思う。
「離れ難いな…」
こうして恋人の関係になる前からもユノは僕に良くしてくれていたし、甘やかしてる部分も多々あったと感じていたのに。
気持ちが通じ合ってすぐの頃に僕が”ユノの気持ちが分からない”と不安を吐露してからは余す事なく、胸に抱いた想いを包み隠さず伝えてくれるようにユノは変わってきていたんだ。
「そろそろほんとに、、待たせ過ぎですからっ、、」
「…そうだったな」
今日はユノの仕事が追い込みで、ヒョクの店に髪を切りに行く僕を送ってやれないからと、代わりにタクシーを手配してくれていたのを失念している様子のユノ。
「わざわざタクシー呼ばなくっても地下鉄で行けるのに……」
実はヒョクとドンへの店までなら地下鉄を使って行ける範囲内なんだ。
それなのにあまりのユノの過保護ぶりに遠慮というか、困惑というのか、、、納得のいかない僕はその事をまだ気にしていて…
「あ?何を言ってる、こんな顔を晒したまま地下鉄に乗せられるか」
「なっ///!?こんな顔って、、!」
どんな顔だよっ!って言い返そうとした途端にまた唇が重なってしまう。
「っ、、んっ//、、、」
はぁ、、ユノのキスって蕩ける……
「って!!もうッッ」
半ギレでユノの厚い胸を押しやるとククッと嬉しそうに笑うんだ。
「ハッ!わざとやってました!?」
「ん?もう行くんだろ」
笑いを噛み殺して、これは絶対に確信犯ってやつだ。
だけど。
「…帰って来たらまたチャンミンに惚れ直すんだろうな」
なんて、クサくて寒くて鳥肌が立つような台詞を慈愛に満ちた表情で注がれてしまえば胸がキュンと高鳴り。
「ゆのぉ、、、」
すっかりと離れ難くなってしまったのは僕の方のだったわけだ。
「ハァ……………」
相変わらず一人で乗るマンションのエレベーターの中は心細くて仕方がなく、気を抜くとすぐに溜め息が漏れてしまう。
さっき最後のキスだって約束して別れたばかりなのにもうあの部屋に引き返したくなっている自分が悲しい。
だから一階に到着した箱のドアが開いても、進む足取りは重く。
目の前に人が立っていたのも気付かずにドンッとぶつかってしまったんだ。
「おっと、、、おや、シム様?」
「あ、…トゥギヒョンっ!すみませんッ」
どうやら僕はトゥギの背中にノロノロと突進してしまったらしい。
「こんにちは、シム様。今日はお出掛け日和ですね」
ぶつかった事はスルーされたまま、トゥギはコンシェルジュとして僕に接してくる。
夜間は一人体制を取るらしいけれど、今みたいに日中の時間帯は二人体制なので、トゥギ的にも同僚の目を気にしての言動なのだと理解していた。
「あ、そうなんです。こんなに天気が良いんだから地下鉄でぶらぶら行ってもいいなって僕は思うんですけど…」
マンションの前で待たせてあるタクシーを誰が呼んだものなのかも、管理側であるトゥギは把握済みなのだ。
「そうですね、確かに気ままに歩きたい気分にさせるお天気ですが。私はユノ様の判断がシム様の諸々を考慮しての事だと推察致します」
「??諸々ですか、、?」
「えぇ、タクシーは安全圏だという事でしょうね」
そう言ってトゥギは苦笑いを見せる。
「安全圏・・・」
「さぁ、あちらまでお送り致しましょう」
トゥギはユノの事をよく分かっているみたいなのに、僕はイマイチ今の話が理解出来なかった。
そんな僕をトゥギは親切にタクシーまで誘導してくれる。
「…トゥギヒョン」
「はい、何ですかチャンミナ?」
エントランスを抜けて外に出た途端、人目を忍んで言葉を選ぶトゥギに急に親しみが湧いて、思わず「今度の休みに一緒に遊びに行きたいです」なんて唐突に誘ってしまった。
「あー・・・ユノ様の了承は得てるのかな?」
聞き返すトゥギは困惑していたけれど、明らかに喜んでいる様子だ。
「いえ、まだです…ね」
「それならユノ様の了承を得たらでお願いします」
「あ、ハイ、分かりました」
「お気を付けて」
最後の方、トゥギは無意識に敬語に戻っていた。
やはりトゥギは僕とユノの関係性に気付いているんだとタクシーの中で確信を持った。
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