My Fair Lady #65

「…チャンミン、頼むからまた戻って来てくれないか」
理解が追い付かず完全に呆けた僕に、念を押すようにユノが言う。
また逃げ出すと思っているのか、再びユノは僕の腕を掴もうとしていた。
「いやいやいやっ、ちょ、ちょっと待ってください、、!」
掴まれる前にユノから一歩引いて離れてそう叫ぶと、明らかにショックを受けた様子を見せるのでこっちも更に慌ててしまう。
「違うんですっ!ユノが嫌いだからとかじゃなくて」
体を引いた理由を述べようとしたけど、慌て過ぎて主語が抜け落ちた。
あぁもうっ、、!
「ユノは狡いっ!!」
「あ゛?」
この際眉間に寄った皺なんて気にしてられない。だってユノは肝心な事を言ってくれないんだから…っ
「僕の事、、好きなんですか…?」
「あぁ」
「っ、だから、、ッ////!?」
ちゃんと言葉にしてくれって言おうとした途端にいきなり唇をユノから奪われてしまう。
もう、、相変わらずユノの考えている事が分からなすぎる、、、
「俺は男が好きなのかと随分悩んで何度もこのキスで気持ちを確かめた」
悪戯でキスをしたわけじゃないと告白をし出したユノを僕は黙って見つめた。
「今まで男に触れたいとは一度も思わなかった俺が、嫌悪感も無く、寧ろもっとその体に触れたいと思うのに時間も掛からなかったんだが…チャンミンの将来性と自分の未来をふと冷静に考えた瞬間に熱が急激に冷めるのも事実だった」
悩んだと言うだけあって、話す表情がいつもの自信に満ちたユノとは違う雰囲気なのもあって相槌さえ打ちづらい。
「もしかしたらいっときの気の迷いかとも思って問題をひたすらに先送って、その反面、チャンミンが俺に抱く好意が他の奴へ向けられるのも恐れてた…今思うと卑怯で間抜けだが」
「え、僕の好意って、、!?」
「最初は口の減らない男だと思っていけ好かなかったが、途中から俺に対する態度を変えただろ」
「は、、!?ちょっと待ってください、じゃあユノはずっと僕の気持ちに気付いていたって事です!!?」
「あぁ、ずっと分かっていたが?」
「っ////!?」
それがどうした、とでも言わんばかりにしれっと言ってのけるユノが信じられなかった。
僕なんて散々ユノのキスで、言動一つで、あんなに振り回されていたのに、、、
ユノは好意に気付いていたくせにそれを受け流してたって事だ……っ
「帰らない」
「あ?」
「ぜっっったいに僕は帰りませんっ!!やっぱりユノだけ帰って下さいよ!?」
言いながら沸々と怒りが腹の底から湧き上がる。
両思いでした、めでたしめでたし、ちゃんちゃん。で、終わると思ったら大間違いだ。
ユノが悩んだと告白をしたけど、そんなの知った事かと憤慨してやりたい。
なのにユノは相変わらず僕の気持ちなんて御構い無しに「どうしてだ、理由を聞かせてくれ」だなどと平然として言って来る。
正直、無視して突っ撥ねてユノを置いて自宅へ引き返したいところだけど。
こんな人気の無い公園なんかでタクシーを拾える筈が無いと思うと、送って貰う為にユノを頼らざる得なくて悔しい。
「…じゃあ理由を言ったら家に送ってくれますか?」
「あぁ」
理由を言ったからってユノが本当に帰してくれるかは賭けだったけれど、ずっと抱いていた気持ちを告げるには良い機会だと思った。
「ユノの考えてる事が、僕には全然分からないんです。だから一緒に居ると幸せなのに苦しくなる…っ」
だからそれを聞いてユノがどうするかなんて考えも及ばず…
「そうか、苦しいか。……分かった」
それだけを言うと、ユノは来た道を引き返そうとする。
「あのっ、、」
「安心しろ、約束通り送り届ける」
「………はい」
自ら望んだ事とはいえ、振り返りもしないユノの背中を寂しく思ってしまう。
先に惚れた方が負け、かよ…っ、、
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