My Fair Lady #59

ユノがセレクトした映画は僕も観た事がある《ノッティングヒルの恋人》だった。
主演はイギリスとアメリカを代表する男優と女優だし、脚本も素晴らしいから世界的なヒット作品となっている。
映画好きでなくともタイトルくらいは耳にした事がある名作をユノはワインを飲みながらとてもリッラクスした雰囲気で見始めたんだ。
だからつられて僕もワインとツマミに手を伸ばしながらソファで寛ぎながら視線をテレビへと向けた。
見始めてすぐにあらすじをザッと思い起こす。
確か、妻に逃げられた挙句に経営している書店も傾いてるようなそんな冴えない男に何か惹かれるものがあって、出会ったその日にその男にキスをした著名な女優とのラブロマンスだった筈だ。
物語全体はさっぱりとした感じで、ラブシーンの露出も少なく爽やかな恋愛映画だった印象だったので、ユノと一緒に観ても気不味くなる要素は何一つ無いのだけど…
冴えない一般男性と女優との恋は擦れ違いから何度も離れたり近付いたりを繰り返す展開が続く。
一見、それがもどかしいようにも思えるのだけど、それを補うのが男を支える友人達の存在なのだ。
その友情が小気味良く恋愛のストーリー展開にスパイスとして加わるのがまたこの映画の味になっていた。
そして、冴えない男は何度も著名な女優である彼女を諦めようとするのにどうしても忘れる事が出来ない…
けれどそれは彼女の方も同じ想いで───
気付いたらツマミもワインも忘れて映画に見入っていた。
「面白いよな」
「…えぇ…」
ユノがまだ半分くらい残っている僕のグラスにワインを注ごうとしていたので、少し口を付けてから足して貰った。
面白い、って感想がユノから出て来るくらいによく観ている映画なのかもしれないけど。
僕は久々に観たからか、何だか爽やかな余韻よりもチクチクと胸を刺すような痛みがあった。
「…チャンミン?」
ユノが驚いたような顔をして僕の名前を呼ぶ。
「え、あ…!」
頬を伝う涙に自分でも自覚が全く無かったので、止めようとしてもどうして泣いてるのか分からず、次から次へとポタポタと膝を濡らす。
「無理に擦るな、目が腫れるだけだぞ」
止まれ止まれと必死に目元を手で拭っていたら、その腕をユノが抑える。
その代わりに濡らした布巾でそっと目元を押さえてくれた。
「あ、…有難うございますっ、、」
「いや。しかし」
そこで区切って、ユノは言おうとした言葉を飲み込んだみたいだった。
恐らく言いたかったのは『泣く程か?』とかそんなところだろうけど、困惑気味にまだ涙が止まらない僕を見てふっ、と苦笑いをしていた。
「すみません、なんかちょっと…」
「ん」
涙の理由を言わなくてもいいと言わんばかりにユノに突然、抱き締められてしまう。
この状況でどうして抱擁なんだって、ユノにもし僕が恋をしてなければ突っ込みどころ満載なのに。
心の中がユノでいっぱいの僕にとってはその抱擁ひとつでまた泣けてしまいそうだった。
涙の理由をあげるなら、僕は映画の途中から冴えない男とユノがダブって見えて来て、男を支える友人達にヒチョルやドンへ達を重ね見たんだ。
冴えない男の不器用だけど一途な想いは、ユノが抱く元恋人への未練と同じだと感じたから。
離れても、いつかは巡り巡って実を結ぶ時をユノはジッと待っているような気がして…
僕だって、最初から成就するような恋だと思っていなかったのに、ユノから与えられる思い遣りや優しさにどんどん嵌って甘えてしまって・・・
「ユノ」
初めて自分からキスをした。
ユノはそれを軽く受け入れて、僕の顔を更に引き寄せようとする。
決してキスに抵抗のない、そんなユノに胸が苦しかった。
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