My Fair Lady #58

ムスッとしたユノの様子をヒチョルは何だか楽しんでるみたいで、「まぁそれは当人同士にお任せで」と話題を中途半端にしてまた自分の仕事へと戻ってしまう。
だから残された僕は機嫌の悪いユノと食事を再開しなきゃいけないのかと心配したんだけど。
「案外キュヒョナも癖のある割に悪い奴じゃない筈だ」
なんて。
意外な事にユノの方からキュヒョナのフォローが入る。
仄暗いあかりの中で、ユノの真意は見えなかったけれど。
その後の食事の様子からしてもさほど機嫌の悪さは感じられずに、僕は内心ホッとしていたんだ。
食事を終えてユノが会計をしている間にヒチョルからお土産だと言い添えられてハーフボトルのワインを渡される。
「飲まないユノの前で少し遠慮していたみたいだから」
「あ。いや、ははっ、、すみません、ご馳走様です」
一人でがぶ飲みするのも何だかなぁと思って食事を楽しめる程度にワインを頼んでいたのをこのヒチョルにはお見通しだったらしい。
「ユノに奢られるのは嫌?」
「あー・・いえ、でも幾ら払うって言ってもユノは受け取ってくれないんです。しつこくすると終いには『稼げるようになったら奢って貰う』なんて言われてしまうから」
生活費すら受け取ろうとしないのは困るので、最近だと家の掃除と少しずつだけどユノから料理も教わるようになった。
「ふっ。出世払い、いいじゃない。その時は俺にも是非還元して貰いたいね」
「それは勿論です!」
「ん、楽しみにしてるよ」
ヒチョルはユノが熱を出した時の僕のはしたない行為に一切触れないでいてくれるし、ユノに抱く好意についても見守る姿勢でいてくれるのが有り難かった。
お陰でこうしてまた前みたいに食事に来ても気不味くないのだけど…
気掛かりなのは、、ユノもその件に関してまるで記憶がすっぽりと抜け落ちてしまったような振る舞いで、僕のした自慰が無かった事にされているのだった。
確かに熱で浮かされていたのだから、本当に覚えてないって事もあり得るのかもしれないけど。
でも、僕は・・・時々、あの熱っぽい目で行為を見つめているユノを思い出しては何度か抜いていたりするのだ…
「どうした、酔ったか」
いつの間にか支払いを終えたユノが僕の顔を覗き込んでいた。
「あの、これ。ヒチョルさんから頂きましたけど」
ユノの問いに首を軽く横に振って否定してからそう言うと、ユノは僕の手からそのボトルを取り上げてラベルに明記された年号を確認するなり目を眇める。
「希少な物をくれたもんだな、家に帰ってからゆっくり飲もう」
トン、と。背中を優しく押されて帰宅を促される。
「はい…」
そんな些細な行為が僕にとってとても嬉しい事だとユノは知らずにしているんだろうけど。
当たり前のように同じ家に帰る喜びをこうしてユノは与えてくれるのだから。
噛み締めるような幸せの日々に泣きそうになる。
帰宅すると早速ユノはワインを楽しむ為に簡単なツマミとワイングラスを二つ用意してくれた。
そして自分の仕事部屋からディスクケースを持って来て、僕にもリビングのソファに座って一緒に飲む事を促したのだ。
「映画ですか?」
「あぁ、見た事あるかもしれないがな」
今日は日中のうちにユノからレッスンを受けたので、今はのんびりと過ごそうと言う誘いだと捉えて、促されるままにユノと同じコーナーソファの端に座った。
ユノと映画鑑賞。
まるで本物の恋人同士のひとときの訪れに胸が含むばかりだった。
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