My Fair Lady #57

結局、僕達が選んだのは当日でも注文可能なショートコースで。
それに合いそうなワインをヒチョルのチョイスでお願いした。
ユノは運転するので一緒に飲めないのに、僕の為にサラッと頼んでくれるところがスマート過ぎる。
恋人にしたら完璧な彼氏なんだろうな…
男女の組み合わせが多く占める店内で、男同士で座っている僕等はどんな関係性に見えるんだろうと、ふと考える。
同僚、友人、恐らくそんなところだろうか。
まさかこの二人が一緒のベッドで寝て、時々思い付いたようにキスをする仲だなんて誰も思わないんだろうけど・・
「珍しいですね、ユノが肩肘つくなんて」
いつも行儀が悪いからって僕がその仕草をすると窘めるのはユノの方なのに。
こんな風に外で食事をする時にテーブルに肩肘をついて物思いに耽る様子が珍しかった。
「あぁ…」
慌てた素振りも見せずに指摘を受けてスッと姿勢を正すと、ユノはいつものユノへと戻る。
けれど、暗がりの中でも何だかバツが悪そうにしているように見えて、今日のユノは何処か違うと感じた。
「ヒョンのあの姿を見ていると、つい昔を思い出してしまう」
「昔?ユノがここで働いていた時の事ですか?」
「あぁ。前に話したが、ヒョンは母親の元から独立した時に俺を店に誘っただろ?」
「えぇ」
「少数精鋭と言えば響きはいいが、始めた当初は人手が足りなくて。まだ料理の腕も無い俺は専らホールでの接客ばかりだったんだ」
「ユノが接客してたんですか!?え、もしかして家で使っているエプロンはその時のだったりします??」
興奮してそう聞いたら、ユノが頷く。
実際にホールであんなに格好いいユノに接客をされたら女性客は惚れてしまうんじゃないかと思っていたら、案の定ユノの口からも同様の事が告げられる。
「ようやく接客にも慣れた頃に、突然ヒョンの命令で厨房に異動させられて。その理由を聞いて呆れたもんだ」
「ユノがモテるから?」
「あぁ、そうだ。お陰で綺麗なままのエプロンは自宅仕様だろ。ヒョンは案外まだ子供っぽい所が残ってるからな」
言いながらユノは懐かしい物を見るような遠い目をしていた。
「…いい思い出なんですね」
ユノの様子からそう感じたんだけど、肝心のユノは「どうかな、あの頃は五里霧中だった気がする」と急に表情を失くす。
「俺は今何をやってるんだと、常に思っていた。レッスン代を稼ぐ為にヒョンの下で働いているのにここの仕事と練習の比率の違いに何度も目の前が霞んだ覚えがあるしな」
公園の駐車場でキンパブを食べながら語った夢への決意とは違う心境だと感じた。
自信から苦悩へと気持ちが揺れていた心を抱えるユノが浮かぶ。
「ヒョンの夢が叶って欲しいと願う反面、自分の置かれている状況に散々苦悩していたな…」
「…………」
初めから順風満帆では決して無かったユノの歌手への道のり。
自信と挫折を経て掴んだそのポジションを……今は───
「何だ?二人して辛気臭い顔して。そんな顔はキュヒョナの料理に不似合いだろ、さぁ食べて笑って」
重い空気を打ち破るヒチョルの明るい声に場が救われる。
前菜の盛り合わせは繊細な感じに仕上がっていて、これを作ったのがキュヒョナだと言うのがにわかに信じ難い程だった。
「今日はキュヒョナが居るんですね」
この席からだと厨房の様子までは見えない。
「居るけど、今は忙しいから呼んでやる事は出来ないんだ。ごめんなチャンミン君」
ヒチョルに謝られて慌てて首を振る。
チラッとユノを見たら目が合ってしまい、尚更焦る。
「いえっ、!特に用事は無いんで呼ばなくていいですっ」
「あ、そう?キュヒョナはしきりに会いたがってたみたいだけど?」
「あ・・・そう、ですか、、」
ユノの前でそんな風に言われるのはなんだか気不味くて返事すら濁してしまう。
「そうなんだよ。人の好き嫌いがはっきりしてるあのキュヒョナが友達になりたいって言ってるくらいだからねぇ」
「えっ、、!!ともだちぃ!?」
あのキュヒョナがっ!
「ふふ、いいよな。ユノ?」
あ、そこの了承は僕じゃないの?って突っ込む暇なくユノは「チャンミンの好きにすればいい」と言下に答えた。
の、割に顔には”面白くない”と書かれているように見えるのは…僕の気の所為なのかな、、、?
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ユノは運転するので一緒に飲めないのに、僕の為にサラッと頼んでくれるところがスマート過ぎる。
恋人にしたら完璧な彼氏なんだろうな…
男女の組み合わせが多く占める店内で、男同士で座っている僕等はどんな関係性に見えるんだろうと、ふと考える。
同僚、友人、恐らくそんなところだろうか。
まさかこの二人が一緒のベッドで寝て、時々思い付いたようにキスをする仲だなんて誰も思わないんだろうけど・・
「珍しいですね、ユノが肩肘つくなんて」
いつも行儀が悪いからって僕がその仕草をすると窘めるのはユノの方なのに。
こんな風に外で食事をする時にテーブルに肩肘をついて物思いに耽る様子が珍しかった。
「あぁ…」
慌てた素振りも見せずに指摘を受けてスッと姿勢を正すと、ユノはいつものユノへと戻る。
けれど、暗がりの中でも何だかバツが悪そうにしているように見えて、今日のユノは何処か違うと感じた。
「ヒョンのあの姿を見ていると、つい昔を思い出してしまう」
「昔?ユノがここで働いていた時の事ですか?」
「あぁ。前に話したが、ヒョンは母親の元から独立した時に俺を店に誘っただろ?」
「えぇ」
「少数精鋭と言えば響きはいいが、始めた当初は人手が足りなくて。まだ料理の腕も無い俺は専らホールでの接客ばかりだったんだ」
「ユノが接客してたんですか!?え、もしかして家で使っているエプロンはその時のだったりします??」
興奮してそう聞いたら、ユノが頷く。
実際にホールであんなに格好いいユノに接客をされたら女性客は惚れてしまうんじゃないかと思っていたら、案の定ユノの口からも同様の事が告げられる。
「ようやく接客にも慣れた頃に、突然ヒョンの命令で厨房に異動させられて。その理由を聞いて呆れたもんだ」
「ユノがモテるから?」
「あぁ、そうだ。お陰で綺麗なままのエプロンは自宅仕様だろ。ヒョンは案外まだ子供っぽい所が残ってるからな」
言いながらユノは懐かしい物を見るような遠い目をしていた。
「…いい思い出なんですね」
ユノの様子からそう感じたんだけど、肝心のユノは「どうかな、あの頃は五里霧中だった気がする」と急に表情を失くす。
「俺は今何をやってるんだと、常に思っていた。レッスン代を稼ぐ為にヒョンの下で働いているのにここの仕事と練習の比率の違いに何度も目の前が霞んだ覚えがあるしな」
公園の駐車場でキンパブを食べながら語った夢への決意とは違う心境だと感じた。
自信から苦悩へと気持ちが揺れていた心を抱えるユノが浮かぶ。
「ヒョンの夢が叶って欲しいと願う反面、自分の置かれている状況に散々苦悩していたな…」
「…………」
初めから順風満帆では決して無かったユノの歌手への道のり。
自信と挫折を経て掴んだそのポジションを……今は───
「何だ?二人して辛気臭い顔して。そんな顔はキュヒョナの料理に不似合いだろ、さぁ食べて笑って」
重い空気を打ち破るヒチョルの明るい声に場が救われる。
前菜の盛り合わせは繊細な感じに仕上がっていて、これを作ったのがキュヒョナだと言うのがにわかに信じ難い程だった。
「今日はキュヒョナが居るんですね」
この席からだと厨房の様子までは見えない。
「居るけど、今は忙しいから呼んでやる事は出来ないんだ。ごめんなチャンミン君」
ヒチョルに謝られて慌てて首を振る。
チラッとユノを見たら目が合ってしまい、尚更焦る。
「いえっ、!特に用事は無いんで呼ばなくていいですっ」
「あ、そう?キュヒョナはしきりに会いたがってたみたいだけど?」
「あ・・・そう、ですか、、」
ユノの前でそんな風に言われるのはなんだか気不味くて返事すら濁してしまう。
「そうなんだよ。人の好き嫌いがはっきりしてるあのキュヒョナが友達になりたいって言ってるくらいだからねぇ」
「えっ、、!!ともだちぃ!?」
あのキュヒョナがっ!
「ふふ、いいよな。ユノ?」
あ、そこの了承は僕じゃないの?って突っ込む暇なくユノは「チャンミンの好きにすればいい」と言下に答えた。
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