My Fair Lady #54

ユノはシウォンの登場にげんなりした表情を隠しもせずに。
「姫とか王子とかそんなお伽話は他所でやれ。そもそも先に潰れてしまうような奴に俺はチャンミンを預けた覚えはない筈だが?なぁ、シウォン」
ユノはそう言うと、キュヒョナが大事そうに握り締めていたブラックカードを奪い取ってシウォンに突き付ける。
「こんな物を易々渡す神経も俺には到底理解出来ないしな」
「ハハッ!大事な物程、大切な人に使って欲しいと言う俺の心理がユノには分からないか。それは残念だなぁ」
「それならもう少し躾してから使わせろ。いつかお前の足元まで掬われかねないぞ」
ユノは厳しい口調を崩さずに店を出ようとする。
「あのっ、」
「何だ。まだ何かあいつに言ってやりたい事でもあるのか」
「いえっそうじゃなくて、お会計がまだでっ」
その言葉を聞いてシウォンがサッとブラックカードをかざして「俺がここは払うさ」と言ったのと同時に。
「もう支払い済みだ」と、ユノが言い放った。
「お?ユノが払ったのか??」
「お前に借りは作りたくないからな」
一刻も早くこの場から去りたいのだろうか、ユノの手が僕の腕を掴んで強制的に出ようとしていた。
「そうか、それはもうヘジンの件で懲りたって事かな。しかし、まだヘジンへの想いは絶って無いんだろう?そうだよな、結婚まで考えてた女なんだし」
最後はまるで独り言でも呟くような感じでシウォンが話すのに対して、ユノは無言を貫いた。
けれど……、ユノに掴まれた僕の腕が痛い。
自然と力が入ってしまったにしても。
平静を装ってやり過ごそうとしているユノの心中がこうして嫌でも知らされる僕の胸は。
掴まれた腕よりもギリギリと痛んだ。
「ご馳走様でした」
どのタイミングで御礼を述べたらいいのか分からない程にユノが纏う空気感が重くて。
結局そう言う事が出来たのは帰宅してようやく僕の顔を見て「シャワーを浴びて来い」と言ってくれた時だった。
「…あぁ、別に大した額じゃないからな」
あの流れでお小言の一つでも降って来るかと思いきや、ユノはそれだけを言ってドカッとソファに沈んでしまう。
今はそっとしろって事かも…
そう察して言われた通りにシャワーを浴びに行った。
でも服を脱いでみたら、手首が赤くなっていて思わずその部分をそっと握ってしまう。
ユノの想いの証が刻まれているようで辛過ぎて見ていられないから…
だから時間を掛けて体を洗った。
そうして手首の痕が薄れるのを待ったんだ。
時間が掛かった分、すっかりと酔いが醒めたので、水を飲もうとリビングに戻ると。
そこにまだユノの姿があった事に正直驚いたんだ。
「寝ないんですか?」
てっきりもう居ないか、それともソファでそのまま寝てるかと思っていたのに…
結構な時間をユノはただボーッとしていたらしい。
「これから寝る」
そして言うなり着ていた服を突然脱ぎ出すんだ。
下着一枚になるまでの間、僕は当然目のやり場に困ってしまったんだけど。
そんなのもお構い無しにユノは淡々と脱いだ服を軽く畳んでリビングを出て行こうとする。
「あ、お休みなさい」
その背中に慌てて声を掛けてみたら、ピタッとユノが歩きを止めてしまう。
「…チャンミンは寝ないのか?」
振り返ってそう僕に聞くユノの顔は少し寂しい影が差していた。
だからまだ眠気も来ていないのに思わず「寝ます、今僕も寝ようと思ってて」なんて…
傷を見て見ぬ振りしたばかりで学習の無い自分に嫌気さえ覚えるのに、ユノの言動一つでこうも簡単に心が揺れる。
でも。
「そうか」
僕の言動一つで。
こうして寂しい影を潜めたまま、ユノが目尻を下げて柔らかく笑ってくれるなら・・・
だから鼻の奥にツンと込み上げた痛みを無視して。
ユノが僕を通して誰の熱を欲していようとしても、それでもいいと思ったんだ。
ユノが僕の体をすっぽりと包んで安眠を貪っているのが。
今の現状なのだからと言い聞かせて…
ユノの後を追った。
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