My Fair Lady #53

キュヒョナは当たり前だろとでも付け加えそうな口ぶりでブラックカードの名義人をあっさりと明かす。
「言ったろ?シウォンさんは俺の大事なパトロンだって。今日も本来なら夕飯も一緒に食べるコースだったのに、急な仕事が入ったって悪がって俺にこれをさり気なく渡して出て行ったんだし」
「あ?さっき??」
「そっ。だから使わずに返したらそれこそシウォンさんに悪いだろ。だから好きなの頼もうぜ」
「あ、うん..」
言いながら殆どキュヒョナがオーダーしてしまって僕の注文はあってないようなものだった。
だけど次から次へとテーブル席を小皿が埋め尽くしていくうちに、そんな些細な事がどうでもよく感じて来るから困るんだけど。
「これ何?うわ、、こっちも美味しそうっ!」
最初にビールで乾杯して、様々な料理を前に思わず唸ってしまう。
キュヒョナの話ではこの小皿は”タパス”と呼ばれるスペイン料理だと言う。
よく見ると店のあちこちに異国の情緒が溢れているのを今更ながら気付く。
「もうワイン頼んでもいいよな?俺、この銘柄が好きでさ」
意気揚々とメニュー表を掲げるなり、目は店員の姿を探している。
ビールグラスにはまだ半分も黄金の液体が残ってると言うのに、オーダーのピッチがやたらと早い。
「キュヒョナってせっかちだな」
ボソッと呟いたら、即座に「短気で悪かったな」ともれなく拾われて返されてしまう。
しかも。
「俺の血って多分、ワインで出来てるんだ」
などと嬉々として言い放つ姿に大いに引いた。
ゴクッと喉を鳴らせて本当に美味しそうにキュヒョナはワインを飲む。
けれどキュヒョナの持論からすればこの行為は輸血にあたる筈なんだけど・・・
そう思うとまともにその様子を見る事が出来ないので輸血の件は頭の隅に追いやった。
「ところでさぁ、ユニコーンガ◯ダムが好きなわけ?」
さっさと食事を終えて帰らせて貰おうと、口と手を一生懸命動かしてる僕に向かって。
ワイングラス片手にキュヒョナが唐突に質問をぶつける。
「?」
口の中をパンパンにした状態でキュヒョナに対して首を傾げる。
なんで急にそんな事を・・
「部屋にあったから」
あぁ、そう言う事。
肯定の意味を込めて首を縦に振ると、キュヒョナの目の色が変わったように見えた。
「、、?」
「お前ほんと、…最高」
ドボドボと勝手に僕のグラスにワインを注ぐキュヒョナは物凄くご機嫌だ。
それからはずっとキュヒョナはガ◯ダムに対する講釈をたれてはワインをがぶ飲みし、その合間に僕を”最高”と繰り返した。
「はぁ、っ…チャンミンってかなり酒に強いんだな」
ワインを水のように飲み続けるキュヒョナに対して、僕は自分のペースで飲んでただけなのにそんな風に言われて驚く。
「キュヒョナは自棄酒かと思ったけど、これが普通なんだ?」
「まぁな、でもこのペースで付き合える奴なんてそうそういないけど~」
若干酔った雰囲気なキュヒョナを気遣いつつ、トイレに行こうかと席を立とうとしたら。
「なに…お前ってシンデレラなのぉ?」
「は?シンデレラ??」
キュヒョナの視線は明後日の方を見ていた、僕と全く視線がぶつからない。
完全なる酔っ払いめ・・・
「ちょっとトイレに行くだけだって」
スマホに軽く触れると、ディスプレイに時間が表示される。
その時、丁度0時だったからキュヒョナが突然席を立った僕をシンデレラと茶化したんだと思った。
「何処に行く」
「、え、っ」
立ち上がった体を止める力に振り向くとそこにはユノが居た。
「何処に行くと聞いている」
相変わらず眉間に深い皺を寄せているユノ。
その後ろでキュヒョナはさっきから「お前やっぱシンデレラじゃん~っ!って事は俺が王子?」などと何がそんなに楽しいのか、ゲラゲラと煩い。
「…トイレ、です」
ユノとキュヒョナのあまりの温度差に一瞬尿意まで忘れるところだった。危ない、、、
それを聞いてユノは掴んでいた腕をパッと離してくれる。
トイレの場所を店員に聞いた後、もう一度テーブルを振り返ると僕が座っていた席にユノが脚を組んで座っていた。
「大丈夫かな…?」
キュヒョナとユノを二人だけにしたのが気掛かりだったけど、キュヒョナ程じゃないにしろそれなりに飲んだ分を出すのに少し時間を要してしまった。
トイレを出て急いで席に戻ると、ユノは脚を組んだままの状態を維持していたのに対して。
「寝てる・・・?」
キュヒョナはテーブルに突っ伏して寝息を立てていたんだ。
「大分飲んだんだろ、急に寝始めたからな」
「はぁ、、じゃあキュヒョナはどうしましょう。運びますか?」
キュヒョナならユノと二人で協力すれば車までなら運べると考えた。
けれどユノはその必要は無いと答える。
その答え通り、数分後にあの男が寒い台詞と共に現れたんだ。
「うちの眠り姫は俺のキスが御所望かな?」
いや、キュヒョナは絶対に所望しないだろうと、心の中で突っ込みつつ。
ニタリと笑みを浮かべるシウォンに鳥肌が止まらない僕だった。
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