My Fair Lady #39

ドンへにくっ付いてヒチョルのマンションに向かっていた時はもう少し距離があったように感じていたのに、来た道を一人で歩いたら案外それ程遠くない事が分かった。
ユノのマンションに帰る前に近くのコンビニに立ち寄る。
ヒチョルの助言がもし本当だとしたらのこのこ手ぶらで戻ってユノに更に迷惑を掛けるわけにはいかないので、必要と思われる物を手当たり次第買い込んだ。
だけどいざマンションに到着してとある事に気付いて立ち止まってしまう。
そう言えばオートロックの解除が出来ない、、っ
うろうろとエントランスをうろついていると、コンシェルジュの男性がこちらに近付いて来たので、慌ててエントランスを出ようとした所で「もし、お名前をお聞かせ願いますか?」と声を掛けられる。
「あの、怪しい者では無いんですっ、、」
「えぇ、存知上げております。しかし念の為、お名前を先にお伺いさせて頂ければこちらを解除致しますので」
「はぁ、、?そうなんですか…えっと、名前はシム・チャンミンです」
「はい。シム・チャンミン様ですね、ユノ様からお名前を確認次第お通しするように仰せつかっております」
「ユノから?」
「えぇ、そうです。シム様のお顔は何度か拝見して私共も存知上げておりましたが、ユノ様からそのように言われておりましたもので」
「あの、それって今日言われました?」
「いえ、一昨日ですね。ユノ様が私にお声を掛けて下さったのは。さぁ、お入り下さい」
「あっすみません」
コンシェルジュに続いてエントランスを抜ける。
「有難う御座いました。助かりました」
「いえいえ、私もユノ様とシム様のお力になれて喜ばしい限りです。シム様もお困りの事がございましたら何なりとお申し付けくださいませ」
とても好感の持てるコンシェルジュに会釈をして、エレベーターに乗る。
「ユノが僕の事を…」
事前に言付けしておいてくれた事実に胸の真ん中がポゥッと温かくなるようだった。
ヒチョルのマンションの時と同様に、ユノの家から飛び出した時とは打って変わり。
上昇するエレベーターはあっという間に僕の体を目的の階へと運んで行く。
どんだけ好きなんだって話。
ユノにただ会いたい、会って困らせるのは分かってるのに…
会いたくて仕方がないと思ってしまうんだ。
けれど案の定、家の玄関の暗証番号を自力で解除出来ない僕は早速ユノを玄関まで呼び出して困らせてしまう。
勿論、ユノは快く迎え入れてはくれなかった。
「はぁ…何で戻って来た。腹は満たされてるんだろ」
声は不機嫌そのものだし、顔色は悪くて覇気が感じられない。
一見するとただ単に苛ついてるユノだと思えばそれまでだけど、ヒチョルの助言通りにマスクを装着してユノに近付くと髭がまだ剃られていないのを確認出来た。
「体調を崩してるから僕を家に帰そうとしたんですよね?」
「……」
「しかもわざわざドンへさんに僕の事を託して。そんなに僕は頼りになりませんか?具合が悪いからって、ユノが一人になる事なんてないと思います。もっと甘えてくれたっていいのに…」
「そこまで言うなら好きにしろッ頼りになる奴なら具合が悪い人を叩き起こして玄関まで迎えに来させないだろうがな!?」
ユノはそう言うと僕の手を掴んで強引に引っ張って行く。
その手が異様に冷たくて小刻みに震えてるのが掴まれた所から伝わる。
荒々しく吐き捨てるユノは初日に見せた寝不足のあのユノを彷彿させる。
乱暴な素振りはユノの心に余裕の無い証拠だ。
少し前の僕ならそれに気付けずにいたかもしれないけれど・・・
今はユノのやる事なす事に意味があるんだと思えるようになっていた。
「…寒い」
「ユノッ、」
寝室に連れ込まれるなりユノは僕をベッドに押し倒してそのまま抱き込んでしまった。
体は酷く冷たくて、ガタガタとユノは震えていた。
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