My Fair Lady #38

最後の一皿まで僕が食べていいのかと遠慮していたらヒチョルはもう要らないと言って、皿をこっちに寄越す。
それなら遠慮無くと、綺麗に平らげた。
「いやぁ凄いな。伝言を受けたドンへから沢山作ってくれとは言われてたけど、ここまでとはね」
「お恥ずかしいですが、あればあるだけ食べてしまうんです」
「腹にブラックホールを仕込んでるのか。ふふ、健康な証拠だね」
「はい、お陰様で元気になりました。有難う御座いますヒチョルさん」
「ははっ、礼なんて要ら無いさ。ユノに何かあったら俺は助けるし、ユノの頼みなら断る理由も無いだけ。それで?何があったユノと、話してご覧この兄で良ければ」
「……」
静まり返った家に、まるで僕とヒチョル以外存在しないようなそんな沈黙が続く。
「…さてと、そろそろコーヒーかな」
席を立つヒチョルを止めなかった。
暫くして、コポコポといい音を立てて辺りを炭火の独特な香りが包み込む。
「ユノは自分が傷付くのよりも周りを傷付ける方を異常に怖がってる所があるね。あれは不器用だけど恐ろしく優しい男だから」
コトリとカップを置いたヒチョルがそう呟く。
「傷付けるって…僕をですか?それってどういう意味です」
「ふふ、そうだねぇ。分かりやすく言うなら恐らく今ユノは体調を崩してるか、動けないとかそんな所だろうな」
「えっ」
「だから君を追い出した。空腹だって知ってたのにね。それを満たしてやれないって思ってドンへに助けを求めたんだよ。俺達が昨日のショーの帰りにうちで飲む事を分かってたんだろ」
「あ、昨日は来て頂いて…」
「あぁ。良かったよ、凄く良かった。シウォンがまた悪さをしてしまったのはいただけないけどねぇ」
「…ちなみにシウォンさんも居るんですか?」
「いや。シウォンは泊まらずに帰ってるから居ない」
「そう、…ですか」
コーヒーを一口含むとあんなにキムチに染まっていた舌がコーヒーの苦味に書き換えられていく。
「それを飲んだら戻るのかな?」
「えぇ、そうしようと思ってます」
「じゃあこれを渡しておこう」
スッとテーブルの上に置かれたのは数枚入りのマスクの袋だった。
「これがあればあの弟も眉間に皺を寄せてお小言も言わない筈だろ?」
「…ですね」
ヒチョルと顔を見合わせて吹き出す。
「ヒチョルさん。有難う御座います…何から何まで、ほんとっ、、」
「あぁ、いいよそんなの。ユノが大事に思うモノは守ってやりたくなるものだから」
ユノの周りは、何でこんなに優しい人達が集まるんだろう。
僕もヒチョルと同じようにユノの視点で周りを大切に思えたら・・・って。
「お邪魔しました。ドンへさんには宜しくお伝え下さい」
「分かってる。チャンミン君も気を付けて。それとユノに宜しく」
「…はい」
帰ろう。ユノの元へ。
ヒチョルのマンションを出ると、来た時とは違う景色のように周りが輝いて見えた。
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