My Fair Lady #36

いきなり家に帰れって…
頭の中ではユノが放った一言がぐわんぐわんと鳴り響き、眩暈さえ襲ってきそうな程にショックを受けて暫く呆然とした。
「チャンミン」
「…分かりました。今すぐ出て行きます、お世話になりました」
ユノが何か言いだけに僕の体に触れようとしたのを振り切ると、自分の私物だけを搔き集めて一直線に玄関に向かう。
僕の背中めがけてユノが何か言っていたようだけど、振り返らずに家を出た。
エレベーターが来るまで少し待ったのに、結局ユノが追って来る事は無かった。
一人で乗った箱の中はがらんと広く、虚しさが込み上げる一方で胸の真ん中はぎゅっと縮む。
「ユノの、、ばかやろう…」
1階に着くのがこんなにも長く感じるなんて、知らなかったのに…
ユノのマンションから僕の住むアパートまでは地下鉄で乗り換えが必要だから、取り敢えず駅に向かう為にトボトボと歩いた。
「はぁ、、」
心もお腹も空っぽで前を見て歩くのさえ辛く、一歩一歩が重く感じる。
そんな沈んだ気持ちで地面と睨めっこしながらのろのろしていたら前から来た人に思いっ切りぶつかってしまう。
「すみませんっ、!だいじょ、、!?」
正面からぶつかった人が怒ったのか、いきなり腕を掴まれて道の端へと引っ張られる。
「ごめんなさい、わざとじゃないんですっ!ボーッとしていて」
必死で頭を下げてもその人は全く腕を離そうとしない。
怖くなって恐る恐る様子を伺おうと顔を見たら、なんとドンへだったんだ。
「あはは、やっと気付いたか~!駅の方から歩いて来たけど全然前を見ないもんね、チャンミン君。結局そのままぶつかったから取り敢えず避難させたけど」
「あ、そうなんですか。すみませんでした、、」
「俺じゃなくて変な人だったらどうすんの、因縁つけられたら困るだろ?」
「ハイ、、すみません…」
「ん、反省してるならいいけど。今度から気を付けて歩くように!じゃ、行こうか」
「は?何処に!?え、ちょっとドンへさんっ!」
行き先も聞いてないのにドンへは掴んだままの腕を引っ張って僕を駅の方へと向かわせる。
「あのっ、、ドンへさんっ!?」
「行けば分かるからほらっ、ちゃんと歩く!」
「え、でもっ、、」
何だかこの感じ、誰かさんに通ずる。
「…ユノっぽい」
「ん~?なんか言った?」
「ドンへさんってユノと同じ匂いがします…」
言葉よりも行動。
僕の意見よりも先に自分の意見を貫く所とか。
「えー!?嘘っ!!そんなに訛ってた俺!?ショック~!!!」
頭を両手で抱えて天を仰いでる隙に、ドンへから距離を取る。
「多分そんなに訛ってはいないと思います。僕もまだ習得の途中だから人の事言えないですけど」
「あ、そう?じゃあなんで俺とユノが同じ匂いなんかするって言ったの。俺達が同じ地方の出だって知ってたんでしょ?」
「いや、それは初耳ですけど…ドンへさんはユノと同郷なんですか?」
「ありゃ、ユノから聞いてなかったのか。そうだよ、俺達全羅南道出身。って言って分かるかな?」
「・・・いえ、すみません。実はよく知らないです」
「地図で言うと下の方で、訛りが独特なんだけど。ユノと居ると時々出ちゃうんだ。方言が」
「へぇ、じゃあ今度よく聞き耳立てておきます」
「ははっ!その大きな耳をピンッと立てて!?」
豪快にドンへは笑う。
ユノの訛りなんてまだ聞いた事も無いから、是非その機会を…って、もうそんなの無いか、、、
「………」
「あれ?どうして急に黙るの」
「…ユノに、、追い出されたんです、さっき」
「あぁ、うん。知ってる。だからこうして迎えに来たんだよね。さっ、行こう。話は歩きながら聞くから」
「え、知ってるって、、」
「ユノから電話があったんだよ。『腹を空かせたチャンミンを家から出してしまった』って。だから飯食いに行こ、な?」
「…っ、」
ポンッと背中を押された時に思わず気持ちが溢れそうになった。
ユノの行動は謎ばかりだけど、どうしてこうも僕の心を揺さぶるんだろう。
熱くなった目頭を押さえて、ドンへに続いて取り敢えず歩み出す事を決めた。
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