My Fair Lady #35

翌朝のユノはなんだか僕の目から見ても怠そうで、よく眠れていないのが原因じゃないかと思って尋ねてもユノは大丈夫だと言うばかりで心配だけが募る。
頑固なユノ。本当、頑固者だ。
そんな頑固なユノは昨日とは打って変わり、緑色のパーカーを着込み。
とてもカジュアルな装いでまた僕の目を愉しませていた。
垂れた前髪で目元を隠すユノはとってもセクシーなのに、服装が若々しくて見る者に柔らかい印象を与える。
朝からこんなに見惚れてどうするんだって程、カウンター越しからキッチンに立つユノをうっとりと眺めた。
「顔洗ったのか?」
「はい、もう済んでます」
「テーブルのセッティングは」
「それももう終わってます、、もうっ!僕だってそれくらい学習しますよ」
「ふっ、そうか。それは悪かったな」
「…いえ」
ユノが僕を鼻で笑うのがあんなにムカついていた頃が信じられないくらい、その仕草に今はときめく。
はぁ…これが恋と言う沼の入り口と言うやつか、、、
気を取り直して今朝のメニューを聞くと海鮮チャーハンだと教えてくれた。
昨夜のうちに冷凍庫から取り出しだと言うシーフードミックスは名の通りあさり、いか、海老がたっぷり入っている。
シンクに置かれたそれを見ただけでお腹が鳴りそうで辛い。
もし鳴ったのを聴かれて笑わられるのも恥ずかしいけれど、ユノがそれを聴いて料理の手を早めたりしたらどうしようなんて…
自信過剰か。
「っ!」
「えっ火傷した!?」
「あぁ、、」
「早く水で冷やして下さいっ」
「分かってる。これくらい大した事ない」
「…でも結構手が赤くなってるし、チャーハンなら僕がやりましょうか?」
「……出来るのか?」
「む、失礼な。パンケーキは無理だけどチャーハンくらいなら作った事あります。ね?そうしましょう?」
ユノが料理をしていてこんなミスをするなんて、恐らく寝不足がたたっているんだ。
フライパンを扱っていた手を止めてユノは少し迷った挙句、僕に続きを譲った。
けれど、火傷した手を冷やし終えてもキッチンからユノは出て行こうとしない。
「そんなに不安ですか?逆にこっちは見られてると緊張で失敗しそうなんですけど」
「いや、意外と出来るんだなと思って驚いてるだけだ。気にするな」
「はは、それって一応褒めてくれてるんですよね?」
「おい、よそ見ばかりしてると」
「アチっ!!」
ユノと話しながら具材をポイポイとフライパンに投げ入れていたら、魚介の水分が油で跳ねて顔に少しだけ飛び散った。
その瞬間、僕はユノに引っ張られて、顔を両手で挟まれてしまう。
「言ってるそばからこれだ。何処だ」
「え、、?何が!?」
「跳ねた所だ。痕に残ったら大変な事になるだろ。何処だ」
「えっと、目の脇辺り、、」
「あぁ、ここだな。少し赤くなってる…ちょっと待ってろ」
そう言うとユノは新しい布巾を棚から取り出してそれを水で濡らし、僕の顔にそっと押し当ててくれる。
「氷で冷やした方がいいか?」
「そんな大袈裟な、これで充分ですって。痕が残るような熱さじゃなかったから大丈夫です」
「…そうか、それならいいんだが」
呟いたユノは酷く疲れた顔をしていた。
そんなに心配を掛けてしまった事に申し訳なく思って早く料理を作ってしまおうと。
濡れた布巾を頬に当てながら戻ろうとしたら、その行く手をユノが止める。
「…もういい」
「え、でもまだ途中ですし」
「今日は帰れ」
「え…」
「悪いが今日は自宅に帰ってくれ」
唐突にユノが僕を切り離す。
まだ沼の入り口に片足も突っ込んでいないのに。
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