My Fair Lady #32

ふわっと重なって一瞬離れたところでユノと目が合う。
「そういう性癖か?」
唐突にそんな事を言われたので、その意味を聞き返そうと口を開こうとしたら。
「、、っ、、!」
その隙を狙うようにユノの唇が再び重なり、中途半端に開けた隙間から舌を挿し込まれてしまう。
抵抗しようにも顎を掴まれていて、首を振る事も出来ないし。
頭の中では今起こっている事を整理しようとフル回転なのに、それに反して体はユノの舌によってグズグズにされる。
「ん、、、っ……んっ…はぁ、、」
あんなにもぎこちなくユノの舌に絡めずにいたのが嘘のように、時間が経つにつれ僕の方でも抵抗が薄れていく。
そしてただただその心地良さに蕩けた。
ユノとのキスは僕の中のキスの概念を一変するようなそんなキスだった。
脳髄までぐちゃぐちゃに侵されて何も考えられなくなるような・・・
「…っ、あ」
腰が抜ける程に気持ち良かったのに、突然口元が寂しくなってユノを見ると。
「結局最後まで開けたままだったな…」
そう呟いて僕の濡れた唇を親指で拭う。
「っ、だって驚いたから、、」
やっと最初に聞かれた”性癖”の意味を理解したけど、ドッドッドッとずっと心臓も煩いし、車のクラクションの音も騒々しい。
「それは悪かった」
ユノは前を向き、独り言みたいに言うと、ゆっくりと車を発進させる。
信号はいつの間か青になっていて。
煩いと思ったクラクションは後続車のだと、少し時間を置いてから気付いた。
沈黙がまた戻り、どうしてユノが突然あんな事をしたのかと、惚けた頭で考えあぐねていると。
「今、俺としたキスを思い出しながら課題曲を歌えるか?」
なんて、無茶振りをしてくるので。
ふわふわと心がまだ浮わついたままで鼻歌混じりにワンフレーズ歌ってみせた。
「あぁ…だいぶマシになった。頼むから今度やる時は目を瞑ってくれ」
「………」
このユノの発言に僕の理解が追い付く頃には、心臓は破裂寸前にドクドクと跳ね上がっていた。
次が、ある……?
またユノとあんなキスをする機会が訪れると考えるだけで体が熱くなるし、心臓も痛い。
あれだけ心の通わないキスは嫌だと思った矢先でのこれ。
理性と本能の狭間で揺さぶられても尚、またキスがしたいなんて思う馬鹿な僕がいる。
「…なんて顔してんだ」
また訪れた信号待ちの短い間、僕の顔を覗くなりユノが触れるだけの口付けをする。
「!?…もしかして口寂しいんですか、、?」
「……」
ユノの考えている事は本当に分からない。
けれどその理由を今、ユノの口から聞かされなくて良かったと。
甘く痺れた唇をそっと撫でて思った。
この胸の高鳴りをユノに知られたくない。
キス一つで翻弄されるようなそんな単純な奴だと思われたくもない。
なのにもう、僕の心は次に来るユノの唇を恋しいと感じているんだ…矛盾してる。
だけど見慣れた景色が今日はやけに煌めいて見えたんだ。
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