My Fair Lady #28

テラス席は喫煙スペースらしく、食事の後の一服を楽しむ女子達で賑わっていた。
ユノはそちらに目をくれる事もなく、むっつりと黙って目を閉じ、まるで瞑想に耽っているようなそんな雰囲気だった。
ただ、胸の前で組んだ腕が微妙に揺れて落ち着きが無い。
やっぱり吸いたい欲求を抑えてる分、手持ち無沙汰なんだろうか。
「ストレス溜め込むのもよくないですよ?僕は別にそんなに喉は気にしてませんし」
「あ?」
「ユノも知ってる通り”Heaven”だってそう言う所じゃないですか」
服装も煙草も規制なくショーを自由に楽しめる場所、それがオーナーが決めたうちの店の売りだ。
「…煩い。今、俺は吸いたい気分じゃないから吸わないだけだ」
「・・・そうですか、それならいいんですけど」
はぁ、、言えば言う程意固地になるパターンだ。
会話は終了とばかりにまたしてもユノは不機嫌なオーラを身に纏って長い脚を組み替える。
そんな不穏な空気に耐えられなくなって店内の様子を眺めようと視線を外すと、バチッと斜め前の席の女の子と目が合ったんだ。
えっ、と思って周りをぐるりと見回すと。
皆んなサッと顔を伏せて僕から明らかに逃げた感じだった。
見られてた・・・?
「ほい、お待たせ。メインの前のサラダだ」
ナイスなタイミングでヒチョルが席に戻って来てくれた。
おかしな空気が一変したので、僕は目の前の皿に注目した。
「うちは女性客が多いだろ?だからじゃがいものガレットにしたら好評でさ。腹持ちも良いしね」
「ガレット?」
「おっと、知らないか。う~ん、平たく言うと蕎麦粉を使ったクレープ生地の事かな」
「蕎麦粉…でもこれはじゃがいもですよね?」
「ハハッそうだね!あれだよね、アレンジってやつ。ふふっ、チャンミン君は面白いねぇ。とても素直で宜しい」
席に座ってるから立っているヒチョルの方が背が高いので、頭を撫でられてしまう。
完全にお子様扱いだし…あっ!もしかして馬鹿にされてんのか!?
「っ、ユノまで何で笑ってるんですか//!」
目を瞑ってた筈のユノが口元を手で押さえて笑いを噛み殺していた。
「おやおや?最近、ユノヤに新しい彼女が出来たって聞いてたけど。出来たのは彼女だけじゃなくて、可愛い可愛い弟分もだったんだなぁ~本当、羨ましい限りだよ」
「え?彼女ですか?」
微笑ましく僕等を見つめるヒチョルに思わず聞かずにはいられなくて口からついて出ると。
「うちの母親には見せびらかしに行って、何故俺には紹介しないんだろうな、この弟は。そうだ、チャンミン君は会った事ある?スタイルが良くて可愛いらしいって話じゃない」
「……?」
いつの間にそんな人を作ってたんだろう。
と言うか、新しい彼女居たんだ。知らなかった…
「ヒョン、、」
「ユノヤ。いつまでそうやって笑いを堪えてんだ、兄に対して感じ悪いぞ」
「いや、悪いそう言うつもりは無いんだが、、目の前に居るだろ、おばさんが見たって言うスタイルが良くて可愛いやつが」
「は?何言ってんだ、どこにそんな・・あぁ!?」
いきなりガシッと顔をヒチョルに掴まれて、それで僕もピンと来た。
「弟分かと勘違いしてたけど恋人だったのか~チャンミン君。そうかそうか、ユノも遂にソッチに」
あぁ、なんだかデジャヴ。
ヒチョルがそう発言すると、ガヤガヤしていた店内が一気に静まる。
「ヒョン、誤解を招くような事を言うなよ。チャンミンは趣味で女装をしているだけだ、俺の恋人じゃない」
う、ユノめっ。
初めて名前で呼んで貰えたのに、おかしな情報をヒチョルに提供しないで欲しい!!
だけどユノがそう言った途端に店はまた騒つきを戻した。
「何だか訳ありだね。ゆっくりと話を聞こうじゃないの」
混雑している店内をよそに、ヒチョルは僕等のテーブルの空いてる席に腰掛けた。
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