My Fair Lady #22

朝から高カロリーな食事を摂ったからか、ユノは僕を連れてジムへ行くと言い出した。
だけどジム未経験の僕には何を準備したらいいのか分からない。
結局ユノに一から教えて貰って、家を出たのは11時を過ぎた頃だった。
「意外と時間を食ったな」
ハンドルを握るユノが口惜しそうに呟く。
僕だって昨日渡された服の中に運動するのに適した服があったのは知っていたんだ。
けれどそんな頻繁に使う物でも無いって勝手に認識してしまったばかりにそれらを袋から出さずにクローゼットの隅に置いておいたのが仇となった。
ユノはそれを見つけると低い声で「やり直せ」と命じ、ユノ好みの収納を最初からさせられる羽目となって、、、
終いには下着まできっちりと色別に綺麗に畳んで入れ終わるまで出掛ける事が出来ず。
で、今に至るわけだ。
「すみません、、」
「まぁ、いい。俺が別に困るわけじゃない。お前が泣くだけだし」
「は?」
この時は服の収納一つでどんな事になるのか意味が分からずにキョトンとしたけど、そもそもユノとの会話の中身が噛み合って無かったんだと。
この後、身を以て僕は知る事となる。
ユノが連れて来てくれたジムは完全会員制と言うので、僕も登録の手続きをした。
ロッカーの鍵を受け付けのスタッフから渡されて着替える為に更衣室へ向かうと、既にトレーニングウェアに着替え終わったユノに出くわした。
「だいぶイメージが変わりますね」
「そうか?見慣れないだけだろ」
ユノはそう言うけど、革パンから一変して全身を黒のピッタリとした服になったからなんだか日本の忍者のような雰囲気を醸し出していて。
人差し指を立てて「忍法水遁(すいとん)の術」なんて言っても似合いそうだと思った。
「ユノ、ちょっとだけいいですか?指をこうして…」
「あ?何をやらせようとしてんだ」
「ははは、冗談です」
あわよくばまた一枚撮らせて欲しかったけど、ユノは流石にこの手に引っかかって来なかった。
絶対に格好いいのに。残念。
僕も急いで自分用のトレーニングウェアを出して着替えてみたら今まで無縁だと思い込んでいたピンクの差し色が入ったウェアが意外と似合っていて驚いた。
ピンクと言えばユノからプレゼントされたピンクのアメジストが思い浮かぶ。
ユノってピンク好き…?それとも僕に合わせてるとか、、?
どちらしてもユノに会ってから身に付けるようになった色なので嬉しい。
「すみません、お待たせしました」
「いや、いい。それにしてもガリガリだな」
「あ~、、今までの生活が不規則だったからどんどん体重が落ちてしまったんです。勿論食欲はあるんですけど、作るのが面倒臭くて食べずに昼まで寝たりしてましたから」
「食欲はあるんだな?それなら問題は無いか…」
「少食ってわけじゃないです。実はこう見えて凄くよく食べます」
「なんだその変な言い回しは。まぁいい、今度からは遠慮なく腕を奮わせて貰うぞ」
「はいっ!喜んでっ!!」
ユノが今まで遠慮していたと言う事を聞いて、本当の事を早々に話して良かったと思った。
何故なら僕の胃袋はブラックホールだから。
働き始めた頃だけ張り切って自炊なんかしてみたりしたけれど。
“Haven”の仕事を終えて帰宅すると昼まで寝てしまい、一日2食の生活に体が適用しようとした結果が今の僕の体型だ。
でも、ドレスを着る分には痩せてる方が良い気がするのに。
どうしてユノは肉を付けさせたいんだろう?
「ユノさん、本日は僕が担当させて頂きます」
「あぁ、シウか。宜しく」
「はい宜しくお願いします!えっと、それでですね。こちらの新会員のシムさんを担当するのが…」
「シウォンだろう?早い時間帯に来れたなら避けられたものを」
「あ、はは。シウォンさんも優秀なトレーナーなんですけどね。でもシムさんだと……どうなんでしょうか。シウォンさんだって職場で流石にトラブルになる事はしないと思いません?」
「さぁな。俺はシウォンじゃないから何とも言えない」
「っ、そうですよね…あぁぁ~どうしよう、、あっ!僕がシムさんを担当するのは駄目ですか?」
「断る。シウォンだけは勘弁してくれ」
「・・はぃ、分かりました」
ユノとシウと言うトレーナーらしき人との会話から察すると、僕が早く支度しなかったのが原因で。
僕の担当が何やら曰く付きの”シウォン”になってしまったらしい。
そしてそのシウォンをユノは拒んでいる、、、
「シムさん、こんな言い方したらおかしいんですけど。もし、担当トレーナーから変な事をされたらすぐに僕に言ってくださいね?」
くりっとした猫目の彼が、その目をうるっとさせて僕を見上げて言う。
「は!?変な事って、、」
聞き返そうとした所をガタイの良い体が遮った。
「シウミン。余計な心配をお客様にさせたらいけないだろう?」
ガタイの良い体に窘められて猫目の彼はしゅんっと縮み込んだ。
「お待たせしました、初めましてシム・チャンミンさん」
ガタイの良い体が振り返って僕に握手を求める。
「シウォンです」
にっこりと彫りの深い男が笑う。
ユノも相当なイケメンだけど、この男も負けず劣らずに顔が良いと思った。
「あ、ハイ、よろしくおねがいします」
僕が手を差し出すとそれをシウォンは勢いよく掴んで引き寄せ、そして抱き留めた。
「あのっシウォンさん、、!?」
「ふふ…ただの挨拶ですよ?驚かせたかな」
でもその割には一向に体を離して貰えてない。
しかも身長差があまり無いからもろにシウォンのアレが僕のアレに押し付けられてて、、、
「おい。シウォン」
体を拘束されたまま首だけをひねると、渋い顔をしたユノが立っていた。
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