My Fair Lady #18

じっとりと嫌な感じの汗が脇を濡らす。
どんなにユノに睨まれても本当の事は言えない。
「はぁ、もういい。この曲は課題曲として、また折を見て歌って貰うからな。その時までに自分の感情をもう少し工夫して出せるようにしておけ」
「…はい」
感情の引き出し。
僕のは露骨過ぎたって事か。
エロい事を考えないと、って頭の中に真っ先に浮かんだのがユノのトッポッキを食べる画だった。
あれがダメなら…
昔付き合った彼女とのセックスを思い出したらいいのかな?
「なぁ。先に聞かなくて悪かったが、ここに今日も来ていていいのか」
「・・・はい?特に予定は入れてなかったので問題は無いですけど」
「……」
「あ。……彼女とかはいないんで」
「恋愛は?」
ユノが意外とぐいぐい来るので引き気味で「ご無沙汰です」と答えた。
その返答に対して、ユノは無言でこめかみを押さえていた。
「…胸が締め付けられるとか、ドキドキして苦しいとか。そう言うのも無いのか?」
そんな可哀想な者を見るような顔をされてもこっちだって困るのに…
しかも、ユノが言う現象なら今日思い当たる節があるだけに本当に困る。
「それは・・・無くは、…無いです」
「なんだ、中途半端だな。まぁいい。心がまだ鈍ってるわけじゃないのだけは分かった」
「あの、彼女がいたり、恋愛してたりとかって歌うのに関係があるんですか?」
「それこそ、無くは無いだろ。恋愛に溺れ過ぎて歌えなくなるのも困るが、失恋の痛みも知らずに別れの歌で人の心を動かす事すら出来ないのも困る。要は程々に人生経験を積めって話だ」
「なるほど…」
危ない・・ユノの質問の意図が掴めずにただ単にロマンチストな人かと勘違いする所だった。
となると。
「ユノはその経験が豊富なんですね」
この僕の一言が余計だったらしい。
ユノの地雷なんて知りようがないから仕方ないのに、「豊富な筈の俺が何故お前の世話をしてる?」とイライラをマックスにさせて。
「女に愛想を尽かされて時間がある、そして、お前を育てる事にした、だが、今は疲れて寝たい、以上だ」
一気に捲し立てると僕ごと仕事部屋から出して、「シャワーを浴びて来る」とだけ言い残して去って行ってしまう。
人の家で寛ぐわけにも行かず、手持ち無沙汰でスマホで音楽を聴いていたらあっという間にユノが上がって来る。
「パジャマはあっちに用意しておいたぞ。あとは勝手にしてくれ」
なんて、またしても一方的に言って立ち去ろうとするので、慌てて引き止めるとユノはげんなりした顔で「あ?」と言った。
「パジャマは有難う御座います。って事は泊まってもいいんですよね?でも僕はどこで寝たらいいか聞いてません」
チッと舌打ちをされて怖いのに、こんなユノも格好いいと脳で感じてる僕は馬鹿だ。
「生憎ベッドまで用意してやれなくて悪かったな。半分空けておくから入って来い」
悪いなんて全然思ってない口振りに吹き出しそうになる。
慣れって怖い、ユノのその口調が面白いと思えるようになってるなんて。
「分かりました、じゃあシャワー浴びたら遠慮なくお邪魔します」
僕が丁寧にお辞儀してる間にユノは消えていた。
「よほど疲れているのかな…?」
ユノを追うようにそそくさと僕もシャワーを浴びに行く事にした。
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