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2018_04
22
(Sun)20:00

My Fair Lady #12








ユノは“Haven”の前で車を停めた。

助手席から降りる時になって、着慣れないドレスの不自由さを痛感してしまう。
宝石店に行った時は強引だったけど、ちゃんとユノのエスコートがあったからその不自由さを感じなかったんだと改めて分かる。

チラリとユノを見ると、目で”早くしろ”と促すばかりで運転席から移動する気配すら無くて。
だから仕方なく一人でもたつきながらも何とか車の外に出られてホッとしたのも束の間。
ユノは車を発進させて何も言わずに走り去ったんだ。

「あ、着替え…」

ドンへの店でドレスを着用した際に、ユノから借りていた服を何処に仕舞ったか僕は分からない。
もしかしたらユノの車に乗せてあったのかもしれないのに。

ユノに連絡しようとして初めて連絡先すら知らない事に気付き、がっくりとうな垂れた。

まぁいいや…いざとなったら誰かに頼んで男物の服を貸して貰えばいいし。
いつもより少し早い入りになったけど、取り敢えず楽屋に行ってみる事で気持ちを切り替える事にした。





「あれ?チャンスニちゃん…だよねぇ!?うわっ、色々変わってて一瞬誰だか分かんなかったよぉ~!ねぇ、みんな見て見て」

年の近いダンサーの女の子が女装の愛称で僕を呼んだから、その声を聞いてあっという間に出演者達が周りに集まって来る。

「おっ。可愛い・・いや、綺麗?ちょっと目線を下げてみて。そうそう…あぁぁ~いいねぇっ!!」

よく飲みに誘ってくれる先輩の男性歌手が記念にとツーショットの写メの催促に対し、言われるがままの仕草をして見せたら思いの外、反響が凄かったので僕は気を良くし。
その後も色んな人の要求に応え続けていった。


「カンタヒョン、この前楽屋に来ていた男性を知っていますか?」

リニューアルした僕との撮影会がひと通り終わり、またいつものガヤガヤとした楽屋の雰囲気に戻ったところでこの店の古株を捕まえて、ユノの事を尋ねるとやっぱりカンタヒョンは知っていると答えたんだ。

「あんな事故さえ無かったらユノももう少し表舞台に立てた筈なんだ。勿体無いよな、でも本人が一番苦しんだんだろうし」

「事故?」

「あぁ。詳しい事はネットで調べてごらん、すぐに分かるよ」

「…はい、有難う御座います」


出番まではたっぷり時間はあるんだ。
今日は早めに来たんだし。
だけど…カンタヒョンの口から出た”事故”と言う物騒な単語になかなか僕の指は動かない。


“ユノ”

僕はユノのフルネームも聞かされていない。
だけどこの単語を入力するだけですぐにユノの情報が溢れ出した。


へぇ…ユノってダンスナンバーもこなせるアーティストだったんだ。
ドンへが聴かせてくれた曲の他に数曲動画を閲覧していたら、その中にユノが軽やかに動き回っている映像もあって思わず釘付けになって見ていた。

「おや、雰囲気がガラリと変わったもんだね。それはユノの趣味かい?」

次々と上がるユノの動画に夢中になって見ていたから、そばにオーナーが来ていたなんて知らなかったんだ。

「あ、…はい」

スマホから顔を上げると、反対にオーナーは僕の手元に目線を落とす。

「懐かしいな…、と言ってもまだ数年前なんだがね」

「あの・・実は僕、ユノについて何も知らないんです。だからその、過去に何があってユノが歌わなくなってしまったのか…」

そこまで言って黙ると、オーナーはその続きを引き継いでくれた。

「昔、知人を通してユノを紹介されてね。その頃まだユノは無名の新人で、このステージにも何回か立たせた事もあったな。だがユノはこんな所で満足のいくような子じゃなかったから。更に私の知り合いで芸能事務所の上役がいたからね。ユノをそこに預けると、あとはとんとん拍子。新人賞を総なめという快挙さ」

昔を懐かしむオーナーの表情が、ユノの”過去の栄光”を物語る。

「それから数年は出す曲出す曲ヒットが続き、あのビジュアルに甘い声とくれば若い世代からはアイドル扱いだ。その流れを読んだ事務所が盛んにメディアへの露出をユノに要求したんだろう。頻繁にテレビに出始めたユノだが、ある音楽番組のステージで……」

「事故、ですか…?」

「…あぁ。生放送の最中だと言うのに突然、上の照明が落下し。ユノは咄嗟の事で避けきれず、もろに顔面を直撃だった。悪い事にそれまでの疲労が蓄積していて、ユノはその場で気を失った」

「…っ、」

「だが、その事故については今でも不可解な憶測が飛び交っていて、いまだにユノを苦しめている。決してユノが目立ち過ぎたわけでは無かったのに、どうしてユノがあんな目に遭ったのか。…私は今も悔いているよ」

オーナーの後悔は、ユノを知人の芸能事務所に託したからなんだろうけど。
事務所としても旬な者を旬な時に推すのは鉄則だ。

厳しい芸能界において、オーナーの想いはユノへの思いやり以外何物でもない…

「…私は君を同じ目に遭わせるつもりは無い。だからこうしてユノに引き合わせたんだ。彼なら悪いようにはしないさ」

「有難う御座います。僕もユノともう少し向き合ってみます」

「そうしなさい。焦らずじっくりと。才ある者は必ず秀でると私は信じてるよ」

「あ!すみませんもう一つだけ!!」


楽屋を出て行こうとするオーナーに、ユノと連絡先を交換しないままに別れてしまった事を話すと。

「それなら心配は無いだろう。後でホールを見てごらん」

それだけを言うと、オーナーは「今日の主役は君かな」と独り言のように呟いた。









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