2018_04
01
(Sun)00:00

イクメンウォーズ Season2 #46






「園長…」


そう呟いてから、この人をそう呼べるのもあと僅かなんだと気付いてまた気持ちが沈んだ。


「ミンせんせぇ!」

僕の気持ちが沈んだのをコウ君にも勿論伝わったんだろう、ぎゅっとまた腕にしがみ付いてくる力が強い。

「…あっ」

こんなの園長が見たら臍を曲げかねない。
そう思って俯いていた顔を上げたら…

「あ?」

さっき見たままの恵比寿顔と目が合う。

…コウ君がこんなに密着してるのに全く怒ってないなんて、、おかしいな、、?

「あの、」

「園長代理と少し話があって寄ったんだが、帰りは一緒のつもりだからちゃんと待ってろ」

「…はい」


園長は僕の話を完全に遮ると、勝手にあとの予定を決めてしまった。

…それにしても口調と言い表情と言い、何だかとてつもなく甘い気がするのが気掛かりだな、、


「えんちょとミンせんせが一緒?ぼくは?!」

僕等の会話をそれまで黙って聞いていたコウ君が、帰宅の事だと察して慌てて間に割り入る。

「君はママのお迎えを待ってなさい」

「ぇ、、……はぁぃ…」

「良い子だね」


・・・・怖っ。

元気いっぱいで主張を曲げない筈のあのコウ君を黙らせた園長の満面の笑みの謎を僕は薄々勘付いてはいるんだけど……













「やっと本音を明かしたんだってな」

車に乗り込むなり園長がそんな事を言うから内心僕は”やっぱりなぁ・・・”と思っていた。

「あの…ボアさんに聞きました?」

「あぁ」

運転中だって言うのに園長はスーツのポケットを漁り、僕の目の前に例のICレコーダーを突き出して口の端を不敵に上げる。


「お前がそんなに嫌ならテミンと交わした契約は白紙に戻す」

「え、あ、?!そんなっ、、だってもう契約は締結したんじゃ…」

「あ?俺を誰だと思ってやがる」


園長…って言おうとしたけど、もう園長じゃないんだって思ったら口からその言葉は出せなかった。


「…ユノさん」

だから出せない言葉の代わりにそう答えたら一瞬園長は面喰らったように固まったんだけど、その後直ぐにハンドルを握り直して。
法定速度ギリギリまでスピードを上げていった。

あれ、、なんか怒らせた……?









マンションに帰ると、園長はスーツも脱がずに何処かに電話を掛け出して寝室に籠ってしまったから。
怒ってるのか、用事を思い出して急いで帰ったのかも分からないままで僕はリビングのソファで途方に暮れていたんだ。

だけどそれも束の間の話で、、、


「わっ!な、なんだろ…」

玄関のドアを誰かが外から思いっ切り叩く音に驚いて慌てて玄関まで駆け寄ってドアスコープを覗くと、そこにはなんと…


「早ぇな、ったく。もう耳に入ったのか」

玄関の向こう側の人をもう分かってるみたいな言い振りでいつのまにか電話を終えた園長が僕を押し退けて鍵を開ける。


「んもーーーーっ!一体どうゆう事なのかちゃんと説明してっっっ!!」


そこには、端正な顔を歪ませて怒りを露わにしたテミンさんが待っていたんだ。


どうぞと迎える間も無くテミンさんはズカズカと部屋の中に上がり込むと、さっきまで僕が呆けていたソファにボスンッと腰を下ろした。

「いきなりうちのヌナに電話して来て契約の解除って、そんな事がまかり通るとでも思ってんの!?ユノさんは会社の宣伝に貢献しなきゃいけない立場でしょー!?契約条項違反!違約金だよっ!」


テミンさんが言ってる事に血の気が引いた。
だって、、さっきの電話が今のこれで、その発端になったのが僕の本音の所為で、、、

うわ、、うわわわわっ


「あのっ、、」

「チャンミンは黙ってろ。マネージャーに話は付けたんだ、それでも納得がいかねぇってんなら俺が直接説き伏せるまでだろうが」

「ふんっ!どうせチャンミンさんが関わってるんでしょう!?じゃあ僕が納得するようにちゃんと説明してよユノさんっ」


腕に縋り付くテミンさんを園長はそっと引き剥がして落ち着かせるようにソファに座らせる。
僕はと言うとこのままこの場に居てもいいものかとワタワタしていたら、園長が手を引いてテミンさんから少し離れた所に座るように言うんだ。

で、その二人の間に園長が座って…



「お前、自分のマネージャーからよく話も聞かずにここに来たんじゃねぇのか?」

「え、だってヌナが契約は解除だって、、」

「なんだ、ちゃんと聞いてんのか。その通りだろ、契約は解除したってな」

「は?それのどこが説明になってるって言うの!?」

「俺が伝えたのは、俺の代わりに違う者がCM出演する事だったんだが。それを向こうが突っぱねて『テミンはユノさんでなければ出ないでしょう。契約は白紙に戻させて頂いて結構です』って話だった」

「はぁ!?何それ、おかしいでしょ…何でいきなりユノさんが引くわけ。だってアレってユノさんじゃなきゃ駄目だって記載があるから、それを破ったら多額の違約金が発生するんじゃないの?まさかそれをユノさんが払うつもりとか!?」

えっ!そんな、、僕なんかの為に…

サーッと再び血の気が引いて震え出した僕の手をそっと園長が握り締めてこうテミンさんに言い放ったんだ。

「あぁ、それは俺が辞めたから違約金は発生しないぞ?」

その言葉に、テミンさんも僕も一瞬時が止まってしまったんだけど、、、


「え?辞めたって…何を、、」

やっと口をテミンさんが開いて、僕の疑問を口にしてくれたけど園長は再び同じ事を繰り返しだけで。

「だから何度も言わせんな。契約書には出演者欄に俺の役職しか記載が無かっただろ、だから俺が役職を辞すれば代理の者が動く事になる。それをお前のマネージャーが拒否しただけだ。で、ついでに会社も辞めて清々した」

「「・・・えぇーーーーーーっ!?」」

テミンさんと僕は絶妙な間合いで絶叫した。

「あん?そんな驚く事か?これで第二の人生を心置きなく歩めると思うって俺は浮かれてるってのに」

「へ、第二の人生って、、?」

そんな話聞いてないし・・・

「引き継ぎに少し時間は掛かるが、それが終わったら正式にチャンミンと同じ職場に就く事になる。嬉しいか?」

テミンさんがまだ部屋に居るってのに、園長の目には僕しか映っていないみたいに珍しく相好を崩して聞いてくるから思わずヘラっと頷いてしまう。

「って、いやいやいや!だって園長の職を解任されたんじゃないんですか!?園長代理からそう聞きましたよ…」

「あぁ、まぁな。園長としては怠慢業務だったから解任されて当然だったが、ボアの母ちゃんは相変わらず俺に対して厳し過ぎる」

「はぁ・・じゃあ園長は”園長”じゃなくて、何になるんです」

「決まってるだろ、保育士だ」

「えっ!?だって資格無いじゃないですか」

「これから取得する。だから手取り足取り教えろよ、”チャンミン先生”」

「…っ、////」


言うなり軽く唇を合わせられて顎を擽られる、その手付きが優しくて思わず喉を鳴らしてしまうんじゃないかって思っていたら。

横からいきなりクッションが飛んで来て、、、


「あったまきた、、覚えてろこの馬鹿ップル!!」


来た時と同様にドカドカと怒りに肩を揺らしてテミンさんは去って行ったんだ。


えっと、、一件落着?じゃないよなぁ・・・


テミンさんが居なくなって二人きりになると、園長は再び僕をソファに座らせて自分もその横に腰を掛けた。

「なぁ、もう一度アレを言ってくれないか」

「アレって何です?」

「俺の名前をさっき呼んだだろ」

さっき…?って、どのさっきだ、、、?

「園長?」

呟いた途端に園長のこめかみがピクッと動いたので、こっちじゃなかったかと慌てて。

「ユノさん…っ、」って呟いたら。




「ん、」


って。

物凄く破顔したユノさんが僕を強く抱き締めた。




“園長”よりもただ単純に名前で呼ばれるのをこんなにも喜んでくれる人を。


僕は愛おしくて仕方がなかった。







Season 2 end







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