2017_09
03
(Sun)00:00

Yes, my lord.〜執事の素性〜#2








僕の家は由緒ある御屋敷に仕える為の執事を育て上げる養成所のような事をしていた。

勿論、そんな所に産まれたのだから行く行くは僕も養成所の講師として父や祖父のような立派な執事を育てられる立場になる筈だった。


のだけれど………

修行の一環でとある御屋敷に執事見習いとして住み込んだのが運の尽きだった。
そこの御令嬢からあの手この手で僕は猛アプローチを受けるようになり、初めこそ穏便に済まそうとやんわりと御断りをしていたのだが。
執拗な御令嬢は僕を罠に陥れてしまったのだ。

既成事実すら無いのに、全くの濡れ衣を着せられた僕は身の潔白を証明する為に。
遂にある事を告白する羽目となり。

その告白によってめでたく誤解は解けたのだが。
代わりに、実家の親からは勘当同然の仕打ちを受けてしまい。
家にも他の御屋敷にも何処にも居場所が無く、僕は途方に暮れたのだった。

そんな僕を遠縁にあたるイ・ソジン様が拾って下さったのだが…


「ゲイである事を知られてはいけない…ユノ様を誑かしてはいけない…」

御屋敷に入る前にイ・ソジン様と交わした契約の違約条項を思い出すと、先程までの食欲が急に失せてしまう。

ユノ様がわざわざこうしてホテルまで取って下さった御好意を僕はそのまま素直に受け取ってはいけない。
立場を弁えろと何度も念仏のように繰り返した。


「どうした、禅の心得でもあるのか?」

煩悩を取り去ろうと必死な僕をよそにヒョイッとユノ様が無邪気な笑顔で覗き込む。
「うはっ///」と心の中で悶絶したが、日頃の精進の賜物で心とは裏腹に顔には出さなかった。

と、思う…

だが何故かユノ様は口元を手で覆うと僕から距離を取りながら肩を震わせてるのだ。

「ユノ様…?」
「っ、いや何でもない気にするな。さぁ腹を満たして早く汗を流そう」
「……え、えぇ、そうで御座いますね」

一瞬、汗を流すと言う意味を不埒な事に置き換えた煩悩満載な頭を一振りして頷く。

「ん?どうした」
「あ、いえ、お腹が空きまして目が回った次第です」
「そうか?その割には頬が赤いようだが…」

そっとユノ様が指の背で僕の顔の隆起した部分をくるりと円を描くように撫でる。

内心では小さな悲鳴が上がったが、それも何とか押し殺して耐えた。

筈なのだが…

またしてもユノ様は顔を思い切り背けて肩を震わせてるのだ。

「ユノ様、?」
「いや、済まない。大丈夫だ、少し取り乱し掛けただけだ。直ぐに戻る」
「はあ…左様で御座いますか…」

言葉通り、ユノ様はひと呼吸つくとスッと背筋を正していつものシュッとしたスマートな紳士に戻った。

はぁ…いつ見てもユノ様は素敵だ。

昨日と言い、今日と言い。
ユノ様のプライベートな時間をこうして一緒に浸れる幸せに思わず頬が緩みそうになるが。
気を引き締めなければいつボロを出すか分かったものじゃない。




────『違約条項を犯した場合は、即刻解雇ですぞ?私のように長きに渡りユノ様にお仕えをしたいのならば、お忘れなきよう。シム・チャンミン君』


イ・ソジン様は、実は僕と同じくゲイなのだ。

僕は御令嬢との関係を疑われた際に、自身が女性を性の対象として見ていないと発言した事により。
御屋敷の旦那様からの誤解は解けたものの、その告白は実父の逆鱗に触れてしまい、御屋敷にお仕えする事も叶わなくなってしまった。

父とは幾度話し合っても分かり合える事もなく。
僕を持て余し始めて遂に家を勘当されそうになった頃に、突然現れたのが遠縁にあたるイ・ソジン様であった。

イ・ソジン様がお仕えしているチョン家の格は有数の財閥の中でも群を抜いていた為、初めは実父も首を縦に振ろうとしなかったのだが…

三度目にイ・ソジン様が訪ねて来られた時に、あっさりと僕は当面の生活資金と一緒に引き渡されてしまったのだ。

それ以来、僕はイ・ソジン様の所有されるアパートに住み。
平日は執事の基礎を一から学び直し、週末になるとアパートに様子を見に来るイ・ソジン様によって実地の執事指導を受けたのだった。

そんな生活を三年送ったある日、僕はイ・ソジン様の後継者としてチョン家の御屋敷に招かれたのだが。

そこで出逢ったチョン家の御当主様に在ろう事か、惹かれてしまったのだ…………


チョン・ユンホ様に。










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