イクメンウォーズ Season2 #36

目上の人の頭を気安く撫でたら駄目だって、分かってはいるんだけど、、、
「あ、?俺を慰めてんのか」
「まぁ、そうなりますね…」
「チッ、」
サラサラと梳いても梳いても指の間を擦り抜ける髪の感触が心地よくて、ついつい頭を撫でる手が止められない。
園長も本当に不快に思うなら振り払ってまで阻止するんじゃないかな?って勝手に都合の良いように捉えて、大人しくされるがままの園長に触れ続けていた。
「ところで、さっきの話の続きはどうなったんですか?」
ダイニングテーブルの対面に座っていた園長は僕に撫でられるのが悔しいのか心地良いのか分からないけれど、さっきからテーブルに顔を突っ伏したままだ。
「………今それを聞くかぁ?チッ、相変わらず空気読めねぇな」
悪態を吐く割には顔も上げず、手も振り払わない。
「あは、すみません。それは自覚してます」
いつもは凶暴な狂犬を手懐けるってこんな気分なのかな…凄く可愛いっ、、
思わず身を乗り出して左手も伸ばして両サイドからわしゃわしゃと撫でたら流石にむくりと顔を上げて少し不満気だ。
「調子のんじゃねぇぞ、こらぁ」
慌てて引っ込めた手をすかさず掴み返されればあっという間に形成逆転。
急に立ち上がった園長は鍋のラーメンをぶちまける勢いでテーブルの上に身体を乗り上げると、僕の顔を両手でがっちりと押さえ付けて。
そして、唇をがっつりと食べたんだ。
「いだっ、、」
「煩せぇ腹減ってんだ、大人しく食われろ」
「んーっ///!、、」
はむはむと言うより、ガブガブが正しい。
舌も入れずに本当に唇だけを貪るようにして園長から一方的なキスを与えられて、僕はなすすべも無くいいようにされてしまう。
「ほんと、てめぇは人の気も知らずに、、」
「、ん、゛、!?」
大体、これはキスって言うよりも甘噛みに近いかも、、
現に何だか園長は怒ってるっぽいし…
「あの手この手でアピールしてやってたってのに、ちっとも引っ掛からねぇし、、」
「、、!?っ、、!」
な、何の話!?
「俺だってな、好きで下着のモデルなんかした訳じゃねぇんだ、、だが、あん時はああするしか無くて渋々、、」
「ん゛!んん゛!!」
唇が千切れるぅ~////!
「うちの母親が資金難で保育園の存亡危機だとかぬかしやがって、、その当時飛ぶ鳥落とす勢いだっつう下着のブランド会社との契約交渉を俺にけしかけてなぁ、要は身体張って化粧品のスポンサーを獲得させる算段だったってわけだ、、、チッ」
「・・・・」
忌々しげに吐き捨てた園長はもう僕の唇も解放してくれていたのに、やっと自由を与えられた口で何を言っていいのか思い付かない。
「噂でな、…聞いたんだ。チャンミンが保育士になりてぇって」
「え・・・・?」
だ、だって、、やっとつい最近僕は保育士になれたのに…
園長がモデルを引き受けたのなんて、恐らくまだ僕が大学生かもしくは高校生ぐらいの頃なんじゃないかな…?
「それっていつの話ですか、、!?」
「んあ?俺が大学の時だからな、お前はまだ高校か?」
「・・・・」
やっぱり。
だけど僕はまだ将来の事もぼんやりとしか考えてなかった筈なのに…
自分の性癖に悩んで、どうするべきか、どうあるべきか。
模索していた頃の話だよ、、?
看護士も考えたし、教師も夢見た、勿論、保育士も選択肢に入れてはあった。
そんな漠然とした夢の一つを園長はずっと信じて待っててくれたって事、、、?
「はぁ、、」
「あ゛?」
「あ、いや、、じゃあ『僕に見つけて欲しかった』ってのは…?」
「大々的に自分の存在をアピールすりゃお前から連絡でも来るかと思ってな」
「・・・・」
なんて、、単純な、、、
だって僕は園長に会っても全然ガキ大将だったって気付かなかったのに、、、?
「んな目で見んじゃねぇよ、チッ。分かってんだ、ボアにも散々言われてっしな。あぁ、くそッ、言いたくもねぇが、言うしかねぇか」
「へ、、?な、なんです、、」
「俺はな、…ずっとお前を、、」
「僕を…?」
ガシガシと頭を掻き毟る様子は昔のやんちゃだった頃の園長を彷彿させた。
「、、、、張らせてたんだ…」
・・・・・は、?

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