2017_08
12
(Sat)00:00

Yes, my lord.~試用期間にて~#3








「美味かった、御馳走様」

手を合わせて作ってくれた料理長に感謝する。

食べ終えた食器を再びトレーに乗せて厨房に戻ると、料理長が休憩がわりに使う丸椅子に座るチャンミンが何かを飲んでいるのに気付き。
トレーを持ったまま近寄って声を掛けた。

「それは自分で作った物か」
「えぇ、材料があったので勝手に拝借させて頂きました。申し訳御座いません」
「あぁ。別にここにある物は自由に飲み食いして構わない。だから使った分を律儀に返す必要も無いからな」
「そうですか…有難う御座います」

匂いからしてチャンミンが作ったのは二日酔いに効くと言われるプゴクスープのようだった。

酒に滅法弱い俺が付き合いで飲まなければならなかった夜の翌日に、じいがそれを用意してくれるものだから材料が揃っていて当然なのだ。

「自炊はどの位出来るんだ?」
「そうですね、簡単な物ばかりですが自分の食べる分くらいは作れます」
「そうか…」

朝食を食べたばかりだと言うのにチャンミンの手の中にあるプゴクスープについ目が行ってしまう。

「…あの、馴染みの味だとは思いますが一口召し上がりますか?」
「あぁ…じゃあ、悪いな」

俺がじっと見過ぎたようで、チャンミンが食べ辛くなって止む得ず俺にスープボウルを差し出す。

トレーを脇に置き、スープボウルを受け取ったが今朝はスプーンを使わない食事だったので、スープを掬う為のスプーンをチャンミンが握っていた物を借りようと手を伸ばすとギョッとたじろいて身体を引いてしまう。

「新しいのを使えば宜しいのではありませんか、、!?」
「洗い物が増えるだろう。チャンミンが貸してくれればそれで済む」

あーん、と大きく口を開けてみれば更にチャンミンはその大きな目を見開いて慌てた。

「ユノ様っ///!」
「あ?」

チャンミンがこれ程までに取り乱すのも珍しく、嫌がってるのを重々承知で再び催促するようにスープボウルを顔の前に持って行くと。
目を白黒させて悩んだ末におずおずと後ろ手に隠したスプーンを差し出して来た。

「あ」

スプーンは受け取らずに口を開けて待つ俺の態度に、流石のチャンミンが折れた。

「ユノ様…失礼致します」

チャンミンが掬ったプゴクスープが口元に寄せられると俺はそれを口に含んで微笑む。

スプーンを持ったままのチャンミンは複雑そうに眉を下げていたが、構わずもう一口催促すると渋々掬ってまた差し出してくれたのだ。

あーん、などという行為は小学生以来か。

「美味かった、御馳走様」

三口飲ませて貰った所でそう言うと明らかにホッとした表情を見せたチャンミンに申し訳無い思いよりも、面白いものを見たなと感じる方が大きい。

「邪魔をしたな。有難う」

椅子から腰を浮かし掛けたチャンミンを座らせるつもりでその頭を撫でて礼を言えば中腰の姿勢のまま固まってしまったのだ。

チャンミンが石化して動かなくなってしまったので、俺は仕方無く厨房を出たのだが。

スープを飲む時に脇に置いたトレーの食器達を思い出して来た道を引き返すと…

「ぁぁぁぁ………」

頭を抱えて悶えるチャンミンを厨房の隅で見つけて俺はそっとまた引き返したのだった。





「俺が何か悪い事をしたのか…?」

自室に戻って首を捻るが、思い当たる節が無い。
寧ろ常にパリッと執事服を着こなして、白い手袋に、髪はカチッと固めていかにも執事らしいチャンミンの完全なるオフの姿に心がほこほこさせられて。

「無精髭にボサボサの髪…」



だらしのないチャンミンもまた俺にとっては好ましいだけだと感じたのだった。











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