イクメンウォーズ Season2 #20

腰に回していた両手を緩めた園長は、利き手の方を使って僕の後頭部を自分に引き寄せていた。
その一方で、服の裾から悪戯な手が忍び込む。
「…押し倒されてただろ」
園長によって引き寄せられた顔はもうすぐで鼻が触れ合うという距離。
唇がくっ付くかどうかっていう寸前で頭を止められて、熱い息が唇を掠めて行く。
舌を伸ばせばその肉厚な下唇に届きそうなのに、園長が僕を射る目がそれを許そうとはしていなかった。
「コウ君の事、、?」
なんだ。
気にしてたんじゃないか。
まるで興味なんて無いって風を装って砂場から去って行った園長の後ろ姿が脳裏に焼き付いて離れなかったのに…
だから僕は思わず口元を緩めてしまった。
「チッ」
園長は僕のその反応が気に食わないって顔だった。
だけど"しまった"と後悔した時は遅いもので。
「"補給"は撤回だな」
地を這う冷たい響きで、僕に制裁を下した。
補給をしないと宣言をした園長が何をするのかと最初は肝を冷やしたけれど。
服の裾から忍び込んできた指はやわやわと脇腹を撫でたり、臍あたりにある下着のゴムのラインに沿ってなぞったり。
愛撫にもつかないなんとも言い難い触り方をし始める。
そして、その間。
僕の間近にある唇から差し出された舌は唇の表面だけを舐め回すような動きだけ。
蠢く舌を招き入れようと唇を薄く開いて誘っても、そこには一切興味が無いとでも言いたげに虚しく通り過ぎて行く。
そんな僕に許されたのは僅かな舌先での愛撫のみ、、、
赤く艶やかなその舌で口腔を蹂躙して欲しいのに…
「あ、、も…触って欲しい、、!」
濃厚な口付けもお預け。
それなのに決定的な胸への愛撫も施す動きの無い指に焦れてしまう。
巧みに胸だけを避けて上半身を撫で回す園長が恨めしかった。
お尻に当たる園長の雄が俄かに硬さを増しているのがかえって僕の身体を疼かせるんだ、、、
ジリジリととろ火で炙られた身体は、本格的に燃え上がる寸前で揺らいでいた。
痺れを切らしてお尻を擦り付けようとすると、スッと指が服の外へと出て行ってしまった。
触れられてもいない胸の粒が服越しにぷっくりと浮かび上がっている。
「そろそろ、時間だな」
僕の腰を再び強く掴んだその手は、躊躇する事なく膝の上から下ろそうとしていた。
「そんな、、!こんな中途半端で、、!?」
「あぁ。俺も仕事がまだ残ってんだ。…先に寝てろ」
キスもしてくれなかった唇、、、
それが恭しく髪の毛に落とされる。
時として、優しさは痛みよりも残酷だと思う…
「また…あの人に会うんですか、、?」
その問いに対して、園長は答えなかった。
答えがないのが答え…だと。
そんなに色気を纏って、、、僕じゃない誰かに会いに行く気なんだ……
「そう…行ってらっしゃい…」
静かに去った園長の後ろ姿をぼうっと眺めていた。
とろとろに炙られた身体は虚しさを覚えて急激に冷えていくようだった。

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