イクメンウォーズ Season2 #17

今朝の職員達の申し送りで園長が本日も不在だと聞いて、少しがっかりする僕がいる。
前に僕が園長の残り香を臭いって言ったから、それを消す為に園長は帰宅前に何処かでシャワーを浴びて着替えてから自宅へ来るようになっていて。
それでなくても例のCM起用の接待の所為で帰宅時刻が遅いのに、それが更に遅くなってしまい。
深夜、ドロドロに疲れてベッドに沈み込む園長はそのまま朝も僕の出勤を見送ること無く眠りこける日々が続いていたんだ。
だからあの嫌な匂いがあるうちは、接待が続いているわけで。
その匂いがあるから、早く帰って来る事も叶わないわけで。
仕事、ましてや園以外の事に口出し出来る立場じゃない僕は、無性にその接待されている相手に嫉妬を覚えてしまっていた……
園長を独り占めして、、、狡い…っ
「ミンせんせ~♡あっちいこ!」
園長の事を考えて悶々としていた僕の手を小さな手が触れる。
どうしたらそんな身体から出るんだろってくらいに一生懸命引っ張っていくコウ君にふと目尻が下がる。
今の時間は特に決まりも無く園庭や教室を自由に使う時間になっていて、みんな好きなように遊んでいる姿が本当に微笑ましかった。
コウ君は僕を園庭の砂場に連れ出すと、自分用のスコップと僕用のスコップの色をお揃いにしてニコニコと嬉しそうに笑う。
「お山作って。トンネル!」
片言だけど、韓国語も上手になったコウ君は子供ながらにこの環境に順応しようと必死なんだ。
そんないじらしいコウ君の様子を見ているから、つい僕もコウ君のお願いには甘くなっていたと思う。
『園児達には分け隔てなく接して下さいね』
園長代理からよく言われていた僕へのお小言を、決して軽んじていたわけじゃなかったのに、、、
やっぱり。
純粋な子供相手に仕事をするのは容易な事じゃ無いんだと、身を以て知る羽目になるのをこの時の僕は思いも寄らずにいたんだ…
砂場に出来たお山は、以前園長と作った時みたいに園児達の注目を浴びながら両サイドから穴を慎重に掘って行く。
開通間際のひと掘りをコウ君にやるように促したら、コウ君は最後の最後まで僕にも掘り進めるようにお願いをして来る。
だからあと少しで繋がるって所を両サイドから掘ったら、直ぐにコウ君の指先が僕の爪に当たって。
「やったねコウ君!」
触れた指を軽く握ってあげると、思いもかけずにコウ君に強く引っ張られた力によって開通したばかりのお山が呆気なく崩れてしまう。
「えっ、、!」
何が起きたのか一瞬把握出来なかった。
で、その間を突いてコウ君の顔が僕に覆い被さってきていて、、、
ぶちゅーーーーーッ!
外野に居た園児達が一斉に黄色い声を上げる中、しっかりと手を握り締めたままのコウ君が僕の口に押し付けていた唇を離すと。
「ケッコン!ミンせんせ、ケッコン!!」
そう叫んで僕の身体を砂場に押し倒していたんだ…

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