おとなりのゆのさん - おかえりなさい -

「……もう…そろそろ…、っ」
その言葉を合図に口の中で弄んでいた粒から唇を離した途端、ユノさんの口から淡い吐息が漏れて。
「チャンミンくん、、もう無理だって、、」
まだユノさんの身体の中に納まっている僕の息子(ミヌじゃない下半身の方の息子)がまた元気を取り戻した為にユノさんは大慌てだ。
チラッとサイドテーブルに置かれた時計を見れば確かにミヌ達のお迎えまで一時間を切っている。
「ふぅ…」
一呼吸置きユノさんと視線を合わせると、ユノさんはホッとしたのか脚の力を抜いて僕の息子を抜こうとしていた。
「っ!?こらっダメだって、、」
再び奥を突き出した僕の行動をまるでドフン君に言うように嗜める。
「すみません、こんな機会滅多に無いもんで……あと一回で終わらせますから、、、」
そう同じ台詞を今日何度口にしたのか自分でもカウント出来ないくらいに言ってる自覚だけはある。
ユノさんが本気で拒んだら僕だって素直に引き下がるつもりではいるんだけど…
「…仕方ないな、これで本当に最後だよ」
本当に僕はドフン君のようだ。
ご飯前におやつをせがんで駄々捏ねている子供のようにお許しを得て喜んでるなんて。
そしてそんな僕を見てまたユノさんの顔が綻ぶ…
はぁ、ユノさんが好き。
大好き…
今日はユノさんの有給休暇を消化するのに付き合う形で僕も会社を休み。
息子達を保育園に登園させてから今の時間までずっとずっと繋がっていた。
普段は息子達に気を配りながら声を潜めて喘ぎを漏らすユノさんを焦ったく思っていただけに。
それを遠慮する事なく聴けると思うだけでもう興奮が抑えられずに僕はひたすらがっついた。
ユノさんを上にしたりひっくり返したり。
四つん這いにさせた時はもうその光景を眺めているだけでもイキそうになった。
だけど、どんな体勢にしてもあまり乱れないユノさんと向かい合って睦み合っている時に。
男の割に膨よかな胸の先端を僕が口に含み出した途端に身体を捩って淡い吐息を吐き出したんだ。
そして僕の息子を納めていた中も、乳首への愛撫と同調してヒクヒクと収縮を繰り返す。
だから溶けて無くなってしまうんじゃないかって程にその小さな粒を舐めて舐め回した。
ユノさんの中は熱かった。
もっと、もっと、と何度もせがんでその中をいつまでも僕は堪能していたかったんだ…
◆◆◆
「…はぁ」
「朝っぱらから悩ましいな。で、今度は何だ。ユノさんと喧嘩でもしたか」
今朝、爽やかに出社したユノさんの笑顔をキュヒョンに上書きされるのは嫌だったが。
会社に勤めている以上、人との接触は避けられない事だ。
「馬鹿、ユノさんとは喧嘩なんかしない…はぁ、、何でこの会社にはユノさんが居ないんだろって…そう思うと溜め息がさぁ…」
願わくばユノさんと朝から晩までずっとずっと一緒に居たい。
最近の僕は強くそう思うようになっていた。
「…チャンミナ。やっぱりお前、先週会社を休んだ日からなんかおかしかったけど原因はユノさんか」
「………」
そう。
僕はユノさんと休んで気兼ねなく睦み合って過ごしたあの日の事が忘れられていなかったんだ…
「……はぁ…」
沈痛な想いで窓の外を眺めると、高層ビルの上空は曇天で。
一層僕の気分を落として行くだけだった。
◆◆◆
「じゃあまた明日な。ふらふらして側溝に落ちんなよ!」
会社の最寄りのバス停前でキュヒョンと別れ、程なくして到着したバスに乗り込む。
普段は席が空けば腰を下ろして降車するまで寝たフリを決め込むのに、今日は生憎どの席も埋まっている。
仕方なく人の波を掻き分け空いている吊り革を掴むと、発車しだした揺れに身を任せた。
思い返せば浮かない気分で仕事に向かっていた今日は本当に散々だった。
おまけに天候も良くない。
ひと雨降られる前にさっさと帰宅してミヌと遊んでやろう…
けれど。
シャカシャカと耳障りな音を発する隣の乗客から意識を外するように外の景色に目をやった瞬間、僕の思考は完全に停止した。
耳障りなシャカシャカ音も。
女子高生の甲高い笑い声も。
母親が手を焼く子供の駄々も。
一切、耳に入らない。
暫くして降車を促す運転手の声に我に返るまで。
僕は放心状態だった。
幸い、終点が僕の降りる所で良かったと。
まだ虚ろな頭で考える。
けれどその後、迎えに行ったミヌと思い切り遊ぶ事は無かった。
ミヌには悪いけど、遊ぶとかそんな気分になれないんだ。
今夜、ユノさんは用事あるからって言っていたけど…
───僕はバスの中から見えたひと組の家族に心を囚われた。
それはユノさんとドフン君と、そして…後ろ姿で顔は見えなかったけれど恐らくユノさんの前妻だ。
一瞬しか見えなくてもとても仲睦まじく歩く3人の様子を思い浮かべては胸が張り裂けそうになる。
うちと違って円満に離婚したユノさんだからこそ、こうして月に何度か会う約束をしているって。
頭ではちゃんと理解していたつもりだったのに、、、
現実を目の当たりした後のこのショックはどうしようもない。
ユノさんが異性を愛せない人だってのは分かってる、だけど、、、
「…僕は本当に、心が狭いな…」
だけど嫌なものは。
嫌なんだ…
◆◆◆
就業時刻が近付くにつれてソワソワし出した僕を密かにキュヒョンだけ気付いていたらしい。
「デートか?」
「…まぁ、そんな所かな」
「やっぱりな。見ててなんかこっちまでソワソワするんだけど」
「じゃあ見なきゃいいだろ」
「まぁまぁそう言わずにさ。見るのは俺の自由って事で。で?行き先は?」
「………分からない」
「は?」
間抜け面のキュヒョンから視線を外し、腕時計の秒針を見つめる。
あと10秒。
「6、5、4、」
「ん?何が」
鞄に荷物を詰め込んで席を立つ。
1、ゼロ。
「じゃ!」
まだ何か言っていたキュヒョンを振り切ってフロアを小走りに駆け抜ける。
エレベーター前で下りボタンを連打した。
早く、早く。
この前みたいにこっそりキュヒョンにつけられたくないんだ。
チンッと音が鳴り、身体を滑り込ませると同時に今度は《閉》ボタンを連打。
もしかしたらまだ誰か乗りたかったかもしれないけれど、僕ほど早く降りたいと願う人も他には居ないと勝手に決め付けてドアが完全に閉まるのを見守った。
「やぁ、早かったね」
社屋を出た所で颯爽と歩み寄るユノさんに声を掛けられた。
今朝、ユノさんは僕の会社があるエリアを仕事で回り、そのまま直帰予定だと話し。
仕事が終わったら外に出掛けないかと言って来ていた。
だけど、行き先は聞いても教えてくれなかったんだ。
お迎えまでの僅かばかりの時間を使って何処へ行くのか…
「時間を貰って済まない。勝手に決めてしまおうかと思ったんだが、やはり2人で選んだ方が揉める事も無いと考え直してね」
子供達を連れて歩く時よりも少しユノさんの歩調が速い。
コンパスの差が僕には無いと知ってるのが地味に嬉しい。
「揉める?何の話ですか…」
聞き返しながらふとこの辺りに見覚えがある気がして、記憶を遡るとじわりとしたものが込み上げる。
そうだ…ここって、、、
「先日、ドフンの誕生祝いに何か贈りたいと彼女が言い出してね。それで俺も初めてこのお店に来たんだけど、なかなかいいのが揃っていたから一応目星は付けておいたよ」
言いながらユノさんは目的地のお店の前で足を止め、僕を先に促す。
レディファーストのつもりなんだろうけど。
この時、初めてユノさんを恨めしく思った。
何故なら一歩踏み出すのを躊躇するようなラグジュアリーな家具がセンス良く置かれた店内に、相応する店員の佇まい。
キュヒョンを凡人呼ばわりしていたけれど、僕だってもれなく凡人である。
「どう?雰囲気が良いだろう」
背中をそっと押すようにユノさんに触れられて、遂に一歩足が進むと。
ふわっと何処からともなく良い香りが鼻先を擽る。
「…お高そうです」
思ったまでをそのまま口にしたら、ユノさんは周りの目を気にする事も無く僕の頬の上部を撫でながら。
「ははっ、確かに高いと思うよ。だけどお値段に相応しい物しか置いてないそうだから、じっくりと選んでより良い物を探そう」
お得意のあのウィンクを一つ僕にお見舞いし。
するりと頬を撫で下ろした手が僕の指に絡み付く。
呆気に取られる間にユノさんは店内をそのまま闊歩する。
男が2人で手を繋いで歩いている事自体が目立つのに。
ユノさんが目指した行き先は明らかに……
「も、もしかして、、」
「そう。ベッドをね、買い替えたいんだ。チャンミン君はどれが良いと思うかな?」
そう言うと、パクパクと魚みたいに口を開け閉めして突っ立ったままの僕をグイッとユノさんが引き寄せる。
因みに俺はこれが一番良いと思ってる、とか。
靴を履いたまま、手も繋いだまま。
恐らく店員の視線が此処に集中しているのもお構い無し。
繋いだ手を離す事なく僕を抱き寄せ。
そして後ろのお高そうなベッドへと倒れて行くんだ。
「どう?こうしても全く音が聞こえ無かっただろう。次は少しバウンドしてみようか」
そんな風に耳元で囁くユノさんに身体がカッと熱くなる。
「も…ほんと…」
「ん?他のも乗ってみたい?」
知ってた。
知ってた、知っていたよ僕は。
ユノさんって本当に大胆な人だって知ってたけどさぁ~~~~
「…あの、何でいきなりベッドなんですか、、///」
抱き締められた状態でしか聞けなかった。
だってそこから抜け出せば人の目が気になってまともに話せる自信が無いからだ。
「いきなりかな。そうでも無いよ。ずっと嫌だとは思っていたからね、俺は。機会があれば早く買い替えたいと考えていただけだよ」
「え・・」
ユノさんは胸に包む僕の身体を強く、そして熱く抱き締める。
「チャンミン君は…前の奥さんを抱いたベッドで俺を抱き続ける程、無粋な人なのかな?」
「あ、それは、、」
忘れていた訳じゃ無いけれど…
ユノさんが何も言わないのをいい事にしていたのは確かで、、、
「ベッドも然り、他の食器やら家具やら。全て叩き壊したいね。願わくば引っ越したい所だけど、チャンミン君はあのマンションを相当な覚悟で買ったんだろうからそれを強要する程俺も子供じゃない」
「ゆのさ、、ん、、っ」
淡々と述べながらユノさんは僕をぎゅうぎゅうと締め上げていた。
子供じゃないけど、でも言ってる事は単純にヤキモチって事…っぽい。
「あと。ベッドが届く頃に俺とドフンも移る事にするよ」
サラッと。
なんかサラッと言ってるけど、これは…
「一緒に住むって事ですか、、?」
「そうだよ。嫌かな?」
冷静を装っていそうでそうでもないのは、この僕の顔の前のお胸が語っていた。
ドクドクと僕の顔をやたら刺激する。
「ユノさん////!!」
─────僕の答えは勿論、YES。
だけどその後の展開は…言えない。
危うくベッドを買う前に通報される所だった、とは…
決してキュヒョンには言えないデートの裏話である。
end
Best wishes to you on your birthday!
今日は大切なお友達のお誕生日と、そして大切なお友達のブログ記念日です♡
そのお二人に気持ちを込めて…
そして、お帰りなさい。ユノさん。

にほんブログ村
- 関連記事
-
- おとなりのゆのさん #2 (2017/04/21)
- おとなりのゆのさん #1 (2017/04/21)
- おとなりのゆのさん - おかえりなさい - (2017/04/20)
- おとなりのゆのさん -嘘吐き- (2017/04/01)