おとなりのゆのさん -嘘吐き-

※時系列としては『おとなりのゆのさん#1,#2』の後のお話です。
災厄だし、最悪だ…
一時間前、その災厄は突如やって来た。
「あんたが離婚してから暫くの間はこれでも我慢したのよ」と唐突に切り出すなり。
僕は機関銃の如く喋り続ける伯母に会社の受付から呼び出され、そのまま拉致られていた。
店に入るなり、奢るから好きなだけ食べなって言われた時点で薄々嫌な予感はしていたんだ。
一通り注文を終えたところで「じゃあ本題」と伯母が大きな封筒を鞄から取り出すと、中からは予想通りの物が現れ。
「どの子もイチオシだから」
ニヤッと不敵に笑った伯母は親戚の間では有名な見合い斡旋人の本領を発揮し出し。
あれやこれやと大小の写真を並べて次々に紹介をしていった。
それは食事が運ばれて来ても止む様子も無く、今にも食って掛かる勢いで捲し立て続ける伯母を尻目に僕はただひたすら黙々と食べ続けるだけ。
僕にとって昼休みと言う時間がどれ程貴重だと訴えたところで、この人には聞く耳すら持ち合わせていないだろうと。
半ば諦めながらも口と手の動きだけは止めずに適当に相槌を打ち続けた。
けれど、そのうち一呼吸を置いて伯母が。
「あんた、…まさかもう既に新しい恋人がいるんじゃないの!?え、そうなんでしょう!それならさっさとそう言いなさいよぉーっ!全く、世話焼かせて来たってのに…」
何かを察してそして自己完結を終えた後、冷めたチゲスープに口を付けながら。
「で、顔は良いの?」
白飯を詰め込んだ状態で問い掛けに頷くとすかさず次の質問が飛んで来る。
「じゃあスタイルは?」
咀嚼しながら脳裏にユノさんの身体のラインを思い浮かべる。
全体的に締まっているようでいて、触れると程良い弾力がある。
「ぼんきゅっぼん?」
モグモグ口を動かしつつ、どうだろうと首を傾げると伯母が更に前のめりになり。
「胸はどうよ」
その歳にしては立派な物をお持ちな伯母が胸を突き出してノリノリだ。
胸、ねぇ…まぁ男の割にはあるっちゃある。
イメージをそのままジェスチャーすると、「寄せて上げてAカップ!?」
その瞠目ぶりにムッとすると、すかさず伯母は。
「離婚して一応は学んだか、よしよし。じゃあ外見より中身で選んだって事よね?」
勝手に広げた写真を纏めながら誇らしげに言って来る伯母だったが、僕はそれに対して曖昧に笑ってしまい。
「…何よ、中身も外見も一級品だとかまたほざくんじゃないでしょうね!」
ギロッと睨まれ、身が咄嗟に竦む。
ま、確かに前もそんな風に豪語して結婚を押し進めた感があるだけに後ろめたいものがあるけれど…
「心も身体も綺麗な人です」
キッパリと言い切ると伯母は呆れたように深く溜め息を吐いた。
「そんな人が居たらあんたも離婚してないっての…馬鹿ねぇ」
◆◆◆
休憩終了間際に滑り込み、何とかデスクに戻れてホッとしていると。
後ろから笑いを含みつつキュヒョンが僕の名前を呼んで来る。
またまた嫌な予感しかしない。
「チャンミナ、、、お前さ、本当面白過ぎるんだけど、、」
「…あの場に居たのか」
「あぁ、どっかのおばさんと消えて行くのが見えて慌てて追い掛けたんだ」
「悪趣味」
「まぁな、悪いとは思ったけど好奇心には勝てないもんなんだって」
言いながら本当に悪びれもせずにキュヒョンはジェスチャーだけで例のアレをやってのけた。
"ぼんきゅっ"で胸と腰を示し、最後の"ぼん"は下半身の前で大きく弧を描く。
「立派なんだろ?」
ニヤッと不敵にキュヒョンが笑う。
「…ばーか。普通だって」
意外そうな顔で見返す奴を無視して仕事に戻った。
◆◆◆
「チャンミンくん、、もういいから…」
頭上から途切れ途切れに吐き出される淡い吐息。
顔を動かす度にくしゃりと髪の毛に長い指が絡まる。
はっ、とか。んっ、とか。
決して子供達の前では聞かせられない淫らな声を耳にする度に至上の喜びに浸るのだ。
「…今日はどうしたのかな…?」
ちゅぷちゅぷと口に咥えた物を舐めていると、顎下を指先で撫でながらユノさんが僕に問い掛ける。
その甘美な囁きにより熱が下へ集まりそうになってしまい、急いで別の事に意識を散らした。
「…特に変わりは無いですよ」
顎を上に逸らし、割れ目に沿って舌を往復させながら頭上のユノさんに視線を絡めると僕の口から容易く嘘が飛び出す。
今日……僕は、大きな嘘を吐いた。
昼休み、キュヒョンに虚勢を張ってユノさんのココを"普通呼ばわり"してしまったのだ。
けれど実際は普通のスケールでは収まりきらないのがユノさんの代物なのである。
チロチロと割れ目を擽ると塩気が舌先を刺激して、無意識のうちに自分も下の方が上を向き出す。
しかし、今は我慢の時だと必死に戒めて尚もユノさんに喰らい付く。
ふと、ユノさんが笑う気配にまた顔を上げると。
「理由は分からないけど、俺は今…奉仕、されてるんだろうね」
眇めた目から優しい視線が僕に降り注いで居た。
…ユノさん、ごめんなさい。
貴方ほど、器もアソコも立派なお方を"普通呼ばわり"した僕をお赦し下さい…
独り、胸の中でこっそりと懺悔をし。
僕が施すユノさんへの愛撫はその後も長々と続いていったのだった。
◆◆◆
「今日、同僚の女性社員にチャンミン君の話をしたら嘘吐きと言われてしまってね…」
ユノさんの奥深くに欲望の杭を埋め込み、快感に震えるさなかにそんな事を唐突に言われて固まった。
「…僕の事ですか…」
「あぁ。そうなんだ。近頃笑顔が絶えない理由は何だと聞かれてね。だからありのままを話したらね…」
そっとユノさんの手が背に回る。
「あ、ありのままって、、」
背骨の一つ一つを慈しむように撫で上げる仕草に身体が粟立つ。
「ありのままさ…チャンミン君と言う存在をそのまま伝えたら笑われて嘘を吐くな、だと」
ふふっ、と。
穏やかな笑みをユノさんが作り。
「素直で、可愛くて…そして家事も育児もこなせる素敵な男性。それに床上手だって」
背に当たるユノさんの手が僕を引き寄せる。
つられてまだ硬度を保ったままの杭が更に奥を突くとユノさんの顔から余裕の色が消えて行く。
「…ね、本当の事だろう?」
ユノさんの言動の一つに、容易く杭は弾け飛んだ。
◆◆◆
朝一番で出社するキュヒョンを捕まえるなり、人気の無いトイレに連れ込んで僕は叫んだ。
━━━お隣のユノさんは。
心も身体も僕が思った以上に綺麗で、嘘も吐けない正直な人だと。
だから…
僕もキュヒョナだけに打ち明ける、と。
「はぁーーーッ////!?」
ユノさんの実際の寸法を指で例えた時のキュヒョンの反応が。
これだ。
end
エイプリルフールに因んだ小話でした。

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