2016_12
01
(Thu)03:00

イクメンウォーズ Season2 #15









初めてあの香りを嗅いだ日から、度々園長がその香りを纏って帰宅する日が続いた。



最初から駄目だと思ったから、もう日に日に嫌悪感が増して来て。

夜遅くに帰って来た日にはわざとベッドの端っこに丸まって、園長が布団の中に入って来ても気付かない振り。

一緒に眠るようになってからこんな事をするようになった自分が信じられない、、

そうは思いつつも、身体があの香りを家に持ち込む園長を拒否してしまうんだ…



「…おやすみ」

僕がぐっすりも眠り込んでいると思って、起こさないようにそっと髪の毛に降りてくる口付けに泣きそうになる。


一人でぐるぐるして馬鹿みたいだ…







「寝てないです、、」

「なんだ…起きてたか」


寝ていないと分かるなり隅で丸くなっていた身体を引き寄せられてしまう。

「あっ…」

腕の中にすっぽりと包まれるとやはり安堵しか感じない自分にまた泣きたくなる。


だけど…今日もまた、この部屋の何処かにあの香りが染み付いた上着が放って置かれている筈だ。

だって、身動ぎするとその動きによって空気の流れが変わるみたいであの香りが時々鼻先を掠めて行くから…


だから思わず

「…くさい」

言ってしまったそばから口を塞ごうとしても遅かった。



「………」


ギュッと後ろから抱き締められる腕の力が強くなる。

…やっぱり心当たりあり、か…



「もうここに匂いは持ち込まない…俺もあの香りは苦手つっうか」

「…でも仕事なんですよね」

「あぁ、、まぁな」

「……女性ですか?」

「………いや。ちょっと厄介な案件だと思って回避してたんだが、ボアの奴が、、」


ボア。

あぁ、この前会ったあの綺麗な人。


ボアさんが、…何?



「CMで起用したい奴のご機嫌を取って来いってな、」



チッ、って小さく舌打ちが聞こえて。

面倒くせぇな、って…決してそんな事を一言も発してないのに勝手にその舌打ちを自分への非難だと思い込んで…

咄嗟に身体が凍り付いた。


けれど無意識って、、、怖い。



「誰なんですか」


身体とは裏腹に唇がそう呟いていた。





「……………」




…園長が。

ううん、違うな。


化粧品会社に勤める上層部の彼が。

CM起用を打診している段階でその候補者を口にするなど。

軽率な言動が許されるわけがないって。


普段なら冷静になって考えられるべき事柄が頭に浮かんで来なかった。


「…寝ます」


何も返って来ない沈黙がただ単に嫌だった…

いつも裏表なくズバッと言い放つ園長が好きなんだ…




"手の掛かる子供かよ"

園長が言わない代わりに自分で毒づいて瞼をキツく閉じた。



いっそ、子供なら良かった…

素直に、好きと嫌いで色分け出来る世界に居れるのに…………








「今日は新しいお友達を紹介しますね♪日本からお父さんのお仕事で韓国に来ているオダ・コウ君です!」

子供達に沈んだ心は関係無い。

飛び切り明るく声を張って僕の傍らにおずおずと隠れる小さな身体をそっと前に押し出した。


「こ、んにちは…」

ハニカミながら挨拶した発音のぎごちなさが異国の雰囲気を色濃く漂わせる。

「まだ韓国語に慣れないお友達なので、皆さんはゆっくりとコウ君に分かるようにお話して下さいね?」

「「「はーい」」」


父親の仕事の都合で急にこっちへ母と共に来る事になったコウ君は、片言だけど少しは韓国語を聞き取れる。

ご両親としては小さい内なら環境に順応して語学力が向上するだろうしって考えらしく、遠くにある外国人向けの幼稚園に入園希望は出さなかったとか。


「せんせ、、」

《困った事があったら日本語で僕に言って下さいね》


幸い僕が日本語を勉強していた為に日常程度の会話なら習得済みだった。

だからこそ、うちのクラスに彼が入って来た理由でもあるんだけど。


「…ありがと…」

心細いと思うのに必死に笑顔を作って一生懸命韓国語を使おうとするコウ君の姿に、健気さを感じたんだ。

《大丈夫、先生が付いてる》

ニッコリと笑い掛けて不安を少しでも取り除いてあげたかった。


小さくて丸い手を取って、それを優しく包み込んで。

大丈夫、大丈夫と。

暗示でも掛けるみたいに。


それはまるで不安で押し潰されそうな自分の心に言い聞かせるみたいに何度も心の中で呟いた。



大丈夫。




掌の小さな手が、きゅっと。



「……す、きっ」


握り返した手の力の強さと、真っ赤に頬を染めて見上げる無垢な瞳に。

「え、?」


聞き返した時には顔面に強い衝撃があって、、


っ゛、!!!!





顔って言うか……唇目掛けて頭突きって言うか…顔面が突っ込んで来たって言うか…

もしかしたらこれは、、、


「せんせ!すき!!」



小さな身体に押し倒されて、ぶちゅぶちゅ。



…キス、されてるよ、ね?

しかも。

愛の告白付き………















お越し下さり有難う御座います。
しかし、定時更新が遅れて大変申し訳ないありませんでした・゚・(。>Д<。)・゚・

そして申し訳ない続きでもう一つお知らせが御座います、、、、

また暫く更新をお休みさせて頂きます。
復帰の目処は未定ですが、年内に再開できたら良いなとは考えています。

今日から師走ですね、どうか皆様も体調管理に気を付けて一年の終わりをお迎え下さいませ。

ではまたお会い出来る日まで。








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