2016_11
30
(Wed)00:00

イクメンウォーズ Season2 #14









「くしゅっ、、」


ずっとむずむずしていたけど、出してしまえばそのむず痒さもスッキリする。

だけどそんな僕のくしゃみ一つにも反応して、ドライヤーのスイッチが切られてしまう。

「寒いか?」

今の今まで髪の毛を梳いていた手が、そっと僕のおでこに触れる。

「いえ、、寒くないです。ただちょっと鼻がむずむずしただけで…」

眉根に寄せられていた皺がふっと緩み、「それならいい」と呟いてまたドライヤーから温風が吹き込む。


…寒いわけなんてないよ…こんなにも過保護にされて寒いわけがないって…



入浴中に入ってしまったスイッチを、一旦は保留にしてそのまま風呂を上がった僕等だったけれど。

やっぱりどんなに急いで身体を拭きあってベッドへ移動しようとしても、目が合えば自然と唇が吸い寄せられた。

唇が触れ合えばまたスイッチは入る。

肌の水分はタオルで吸われたのに、それでもその場から離れられずにキスが深くなっていき。

しまいには洗面台に置いてあったボディクリームで後ろを解され出して、、

指を抜き差しする度に僕の口から漏れ出る喘ぎ。

それと引き換えにまた息を吸うタイミングと一緒にボディクリームの香りが鼻腔に抜ける。

園長が本来席を置いているのは化粧品会社、そこの新商品だって言ってたのはこれなのかな…

なんて此の期に及んで呑気な事を考えでいるうちに解し切ったそこをあっという間に埋め尽くされた。



その行為が約一時間前の話。

洗面台の前で裸で縺れ合って、その間も髪は濡れたままだった。

終わってからくたっとなって立てない僕を抱え直してまた風呂場へと戻った園長によって。

股を開かされて穴を広げられて、そして中を掻き出されて。

もう一度全身をタオルで拭かれた後には、お姫様抱っこでリビングに移動し。

さっき嗅いだばかりのボディクリームをたっぷりと塗りたくられ、最後にふわふわのバスローブに包まれた。

「喉が渇いたか?」と聞かれてこくんと頷くとペットボトルを渡されて。

それを手の中で弄っていたらまた取り上げられて、ほんの少し間があって口から冷たい水が注ぎ込まれる。


甘やかされている、って思うけれど全然身体に力が入らなかった。


だから園長が髪の毛も乾かしてくれるのにも甘えっぱなし。


くしゃみ一つでドライヤーのスイッチを切ってまで僕を心配してくれるなんて…


どれだけ…想われてるだろう………





「…疲れてるよな、ごめんな…」



瞼が重くて思考がぼんやりとしていた。

だからそんな風にして謝る声が園長だとは思えなかった。

だって…園長なら「ごめん」じゃなくて「悪りぃ」って…いつもならそう言うから、、









目を覚ましたらまだ僕はリビングに居た。

だけど身体の上には軽めのブランケットが掛けられている。

そしていつ来たのか分からないデリバリーのジャージャー麺が一つだけ、サランラップが掛かった状態でリビングテーブルの上に置かれていたんだ。


「園長…」

呟いてもその姿が現れない。

ジャージャー麺の隣に置かれた僕のスマホに着信を知らせるランプが点滅している。



画面のロックを解除し、未読のカトクを一件タップするとそれは園長からだった。

短く【仕事をして来る。先に寝てろ】たったそれだけのメッセージに、胸の内がさざなみ立つのを僕は覚えた。


…だって、、こんな時間に出て行くなんて…しかも仕事とか…そんな予定無かった筈なのに……


ゴトッと音を立てて手から落ちたスマホ。

落ちた隣には水滴が張ったサランラップに包まれたジャージャー麺。



…園長は、食べて無いの…?










翌朝、愛おしい人の腕の中で目を覚ました事で昨夜抱いた不安は消え失せようとしていた。

"甘くて幸せな日々に慣れてしまったから、少しでもその温もりが離れると不安になるんだろうな"

そんな風に昨夜の自分の気持ちに整理をつけて、名残惜しい腕の中を抜け出す。


けれど……

嗅ぎ慣れない香りにふと腕を掴まれた気がして足を止めると。

その先には園長が脱ぎ捨てたスーツの上着がスツールの上に放り投げられていた。


皺になっちゃうな…

取り上げてハンガーにでも掛けておこうと、手に持った瞬間。


ぷんっと、先程よりも強く鼻先を刺激する香りに思わずむせた。


『俺の好きなパフュームでお前が包まれて、それを俺が包む。最高だろ』

脳裏に園長が以前、僕に言った言葉がよぎる。

園長の好きな香り…


だけと、これは違う。

こんな甘ったるい果実のような香りを園長は好まない…っ


スーツに移る程に強い香り…

スーツに触れる程、…接近する仕事、、、?





何故か、この時の僕には。

園長が匂いを扱う仕事柄と言う事をすっかりと抜け落ちていた。

勝手に、見知らぬ第三者の影を感じて不安の色を一人で濃くしようとしていた。



だけど…それは無意識に働いた第六感的感覚だったと。

振り返って知る事になったんだ…













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