2016_11
27
(Sun)00:00

イクメンウォーズ Season2 #11









「おいっ!」と明らかに僕に向かって言ってるんだけど、さっきの嵐の余韻からまだ抜け出せなくて。


「、、っ」

言葉に詰まる僕にポイッと何かが放り投げられたんだ。


「…スコップ…?」

「あぁ、見りゃ分かるだろ」


さっきまでキャッキャッと騒いでいた子供達までもが僕と園長の様子を固唾を飲んで見守っていた。

一触即発とまではいかなくても、園長が発するピリピリオーラに誰も喋ろうとはしないんだ。


シーンとなった砂場に嫌な沈黙が流れる。

だけどそれを打ち破ったのは園長の鋭い声だった。


「さっさとそれで掘れ。ボサッとしてっと、いつまで経っても繋がんねぇだろうが」

チッと、相変わらず見た目とのギャップがあり過ぎる舌打ち。

けれど、言ってる事はお山に穴を掘ってトンネルを作れって事だと。
頭で理解した時には思わず僕の口からは笑い声が漏れていた。


「…っぷくくっ」

「おい、笑って気を抜くと山が崩れるからな。慎重に掘り進めろって、、あぁ…そういやお前…いや、何でも無い」

「え、?何ですか??」

「うっせぇ、何でも無ぇよ。黙って掘っとけ」


何か途中まで言い掛けた言葉がちょっと気にはなったけど。
僕等を囲む子供達の期待に満ちた視線に自然と僕も集中しなきゃと言う気持ちになる。


「ママ~もうちょっとだよー!」

ファイティンと、小さな拳を僕に見せるミヌ君。


「「「ママーッ♡」」」

気付けば僕の頑張りを小さな応援団が見守っていた。


園長は先に山の半分まで掘り進めて来ていて、慎重に掘っている僕を不安気にして見つめる。

やっと眉の間の皺が無くなったと思ったら、今度は別の意味で険しい顔付き。

…笑ってくれたらいいのにな、、


「おいっ!」

「は、はいっ!?」


手を伸ばしてザクザク掘っていた僕の頭の上から、突然声が降ってくる。


「最後は慎重に手で掘れ」

「………はい…」


確かに。

このまま最後までスコップで掘って行くと掘る加減を誤って、崩れてしまう可能性が高い。

手にしていたスコップを脇に置いて、厚手のパーカーを更に腕捲りして気合を入れ直す。



大きな山に顔を押し付けて、慎重に、慎重に…


「もうちょっとだ、頑張れ」

その顔を今の僕には見る事も出来ないけど、園長から頑張れって言われると不思議と身体中にパワーが漲る気がした。

「ん、、」

「もう少し」

「んんっ、、、」


爪の先で感じる砂の感触が段々と軽くなって行く。

壁の向こうまで、あと少し…っ


「あっ」


砂の抵抗が無くなって、その代わりに僕の指が掴んだ感触は。

「よくやったな」


山を隔てた向こう側から、表情は見えないのに。

柔らかく笑っている園長の顔が僕の頭の中に浮かび上がった。



…あれ、、なんか…前にも……確か、、、ずっとずっと昔にも、、、








『チャンスニ!やれば出来るっ!』


遠い遠い昔、僕がまだミヌ君みたいに幼かった頃。

鈍臭くて、おっとりしていた僕にはお山のトンネル開通は難関な遊びだったっけ…


だけど、、、それをいつも誰かが助けてくれようとしていたんだよ……

口が悪くて、ぶっきらぼうで…でも、、いつも最後まで……こうやって見守ってくれていた人が…っ




「あの、、園長って…何で……」

「あぁ?何だ」

「あのっ、、卒園しても…何で、、砂遊びとか一緒にしてたのかなって、、」


僕の記憶は恐らく年中ぐらいだ。

それなら僕よりも歳上の園長がそこに居るのはおかしい筈なのに、何故か記憶の中に存在していて…


「痛っ」

トンネルの中で繋がった指先の先っぽを園長にぎゅっとされる。


「んなの、、」

痛いけど、でも何だかその握る指がモジモジとしているような、、?




「お前に会いに来たに決まってんだろ!!」


身体ごと強引な力で引っ張られ。

僕は、痛みの衝撃とかそんなのを訴える暇なく。

突如、顔面に迫っていた砂山が押し寄せて来たと思った瞬間。


「「「「ウワーーーーーーッ!!」」」」

小さな応援団の大絶叫と、どこで見ていたのか。

「「「きゃーーーっ♡」」」

他のクラスの先生方の割れんばかりの奇声があちこちから飛んで来て、、、



「やっと思い出したな…この野郎、、」


砂まみれの身体を。

愛おしげに抱き締める園長の腕の中で、忘れ掛けていた昔の記憶を。

また一つ、掘り返していた。







何度やっても上手く出来ない砂山のトンネル掘り…

そっか、他の子が居なくなってから一人で練習してたんだ…

ピカピカのランドセルを背負った園長が、卒園してからも僕にちょっかいを出しに来ていたから…

あれ…じゃあ僕が怪我をして転園させられたのも…もしかしたら…小学生になっていた園長だったのかな……

卒園児が在園児に怪我をさせたなんて…

多分…大変な事になったんだろうけど、、、


「園長…」

「あん?」



でも、今はそれどころじゃないよな、、、


「うえーんっ!!お山がぁ~~!!」
「ひどい~~~~!」


さてと、、この事態をどう収拾するかが最優先だ、、、




























にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村



関連記事