イクメンウォーズ Season2 #6

大盛りの伸び切ったカルクッスを食べ終えて、心も身体も幸福感に満たされた頃。
「食い終わったか」
スカートを洗い終えた園長が、僕を見つけるなり目を眇めては少し冷たい指先で頬に触れ。
そして、二人でくすくすと笑い合った。
「伸びてただろうが」
「…ですね」
でも、そんな会話さえも愛おしいんだ。
だって。
ここは職場だから………公けにいちゃいちゃは出来ないんだもん……
「さっ!お腹も膨れた事ですし、次はお昼寝ですね!!」
名残惜しくもある園長の掌から、雑念を払うように自分に言い聞かせては行動を起こした。
そうだ、そうだ。
まだまだあと一踏ん張り!
子供達を寝かし付けてからが、僕等保育士の時間なんだから!!
ポーッとする暇なんて無いぞ、僕~~~!
と、言いつつ………
今。
僕の視線の直ぐ下には、午前中のイベントで大いにはしゃいだ園児達同様に。
すやすやと寝息を立てている………
園長が居て…
遡る事、数分前。
『膝貸せ』そう言ったと同時に僕の膝を占領して眠ってしまった愛しき人。
つ、、、疲れてるのかな………///
だよね、人形劇の片付けも押し付けちゃったしね…
目に掛かる前髪を指で梳くと、擽ったそうに顔を更に寄せて来る。
うッ……可愛い///
こんな無防備な姿もあまり目にする事なんて無いから、ある意味貴重だな。
だって、、、夜も…朝も…その、、、アレコレと弄られるのは僕の方だから、、、
とかッッッッッ///!
思い出してる場合じゃないーっ!
煩悩退散!集中集中!!
今の内に、連絡帳へのコメントとか。
雑務処理が山程あるってのに。
………でも。
はぁ……幸せだ…///
結局。
僕は他の先生から名前を呼ばれるまで、園長と折り重なって眠ってしまっていた。
後から子供達に冷やかされながらも、内心はふわふわしていた。
まだビリビリと残る足の痺れにもにやけが止まらない程に。
僕の心は温かかったんだ。
降園の時間が訪れると子供達の人数は一気に減り、補助役の園長の就業時間が差し迫る。
延長保育で残っていたミヌ君を膝の上に乗せて、僕はDVDを観ていた。
「チッ」
ん??
頭上から聞こえる舌打ちに、僕の膝の上のミヌ君も一緒に上を見上げた。
「パパ!」
ミヌ君と目が合うなり園長は口の端を緩めて笑顔を見せるものの、僕とは視線を合わせず。
そして、そのまま耳元に顔を寄せて来て。
「会社の打ち合わせで出掛けて来る、飯は先に食ってろ」
それだけを言うと、ポンっとミヌ君の頭をひと撫でして。
スタスタとその場を離れて行ってしまったんだ。
あれ……何だか、、、素っ気なくないか……!?
「ママ?どうしたの??」
「あ、、、うん…何でもないよ…」
何でもなくは無い、かな…
どうしたんだろ………園長……

にほんブログ村
- 関連記事
-
- イクメンウォーズ Season2 #8 (2016/11/24)
- イクメンウォーズ Season2 #7 (2016/11/23)
- イクメンウォーズ Season2 #6 (2016/11/22)
- イクメンウォーズ Season2 #5 (2016/11/21)
- イクメンウォーズ Season2 #4 (2016/11/20)