2016_11
10
(Thu)00:00

Sweet honey #8










…マロングラッセが出来上がった。





マロングラッセは、意外と作る工程が段階を踏む為に何日にもその作業を続けなればならない。

その一つでも惜しんで手間を怠らない事があの宝石のような艶に変わる。

日にちを掛けて徐々に糖度を上げ、最後の最後までガーゼに包まれた大事な宝物。

だからこそ手間暇かけた分、美味しさは格別なんだ…

でも…ユノさんはその手間なんて知らないから、、スナック菓子を摘むみたいな感覚でこれを食べるんだろうな、、

いつもふらっとやって来てはケーキと一緒に僕を摘むみたいに…


「ヒョン…」
「うん…?あ、もう上がる時間だったか。ごめん、気付かなくて」
「あ、、いえ…今日ってユノさんが…」
「来るよ」
「……っ」
「ユノさんは絶対に来るって」





いつものようにシウはそれ以上何も言わずに裏から出で表に回って帰って行った。
僕はいつも通り、その姿を見送ってから入り口の札とロールスクリーンを下ろす。

…シウはこの曜日にユノさんが来るってやっぱり知ってたのか…

だけど多分、シウは人違いをしているから。
ユノさんが来たらその事を真っ先に話して2人で笑ってやろう。

ユノさんはこう言うのかな…『俺と同じ名前の色男?それって確かに俺の条件に当て嵌まるな』って口の端を上げて一笑に付してそれで終わりにしてくれるに決まってる。

ほら、もうそろそろユノさんが来る。


今日のお薦めはまんまの、マロングラッセと。
もう一つはモンブランベースのタルト。こっちはラムのリキュールを効かせて大人風味に仕上げてある。

これからはぐんっと気温が落ちて涼しくなるから栗や南瓜、サツマイモが恋しくなる季節だ。

ほっくりと…食べた瞬間に心まで和むようなあのホクホク感をユノさんに味わってもらいたいな…


ユノさん…
今日は何だかとても、、、恋しいです…















でも昨日、ユノさんは現れなかった。


「…ヒョン、、大丈夫ですか?」
「何が?僕は大丈夫だよ、どうしたシウ。そんな顔して」
「……ヒョン」
「それよりも手が止まってる。ちゃっちゃとかき混ぜないとシュワっと仕上がらないぞ」
「あ、、はい、すみません」


カシャカシャとシウの手の中のボウルがリズミカルに鳴り響く。
一定のリズムで掻き回していくうちに綺麗な渦が出来上がって行く。

ユノさんと僕を繋いでいた生クリーム…


「シウごめん、、ちょっとだけ抜ける」
「え!?ヒョン、、」


やっぱり自分の目で確かめないと。
きっと昨日は何か大事なお客様の予約があってそっちを優先したんだ。

僕だって客商売だからそれぐらいは弁えてる。
別にユノさんが一日来なくたってまた違う時に会えばいいんだし。

いや…いつも待ってるだけじゃなくてこうして会いに行けばいいだけ。

一目その姿を見ればこの胸の中に渦巻く靄が晴れる筈なんだ、、、





坂を下りて、僕の店とは真逆のモダンな外観が見えて来たらそこがユノさんの居る場所。

今日はどんな服装?
スタイルがいいから何でも似合うけど、僕はラフな格好のユノさんが好き…

リネンの風合いを好む僕にはあまり飾らない人がいいから…



「あの、、っ、」

少し走ったから息が上がってる。
しかもエプロンのままだった、、前に来た時に受付をしてくれたスタッフさんだからって声をかけちゃったけど…

「……貴方は…」

「ユノさんは居ますか!?今チラッと見たけど見えなくて…でも奥に居ますよね、、?」
「あの……ユノさんはもう此処には戻って来ませんよ」
「…え、、」
「何か御用でもありました?次回の予約の件でしたら別のスタッフが対応させて頂きますので。それとも御伝言でも?」
「あ…いや…違います、、」







坂を登る脚に力が入らない。

…あまりにも淡々とした言い方に、僕は傷付いたのかな。

だってシウも、この受付の女性も、口を揃えてユノさんは此処には来ないって言うんだ…












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