2016_11
04
(Fri)00:00

Sweet honey #1














赤煉瓦造りの小さな洋菓子店。

これが僕の城。









苔や蔦が自然体のままで外壁に馴染み、小高い丘の上にある為になかなか目立つ存在では無いけど歴史だけはある建物だ。

どんな経緯で祖父が此処を買い取る事になったのか、よくは知らない。

だけどその祖父も今はパリのモンマルトルで悠々自適に余生を過ごしているそうだ。

僕も、いつかは行ってみたい。

憧れの地、パリ。





祖父とは違えどパティシエとしてやっとこの土地に慣れて来たのは数年前の話。

今は漸く固定客も付き、その日に作られた物は有難い事に全て売り切らせて貰ってから店を閉める日々だった。



「シウ、もう今日は上がっていいよ。後は一人でやるから」
「え、、ヒョン…」
「ん、何?」
「いえ…分かりました。じゃあ裏を片付けたら帰ります」

この子は唯一の従業員、そして僕の弟子。

シウミン。


彼は僕の秘密を知っても決して偏見を持たずに辞めもしなかった。

だからこうして彼を大事にして、早く上がれる時は給料に差異無く上がらせてるつもり。

だけどシウは毎回あまり嬉しそうな顔をしてくれないのがちょっと気掛かりなんだけど…

でも今日は特に早く帰って貰わないとこっちが困る。


「じゃあ、また明日宜しくお願いします」
「あぁ、うん。また明日な、気を付けて帰れよ」


シウが裏口から出てぐるりと表に回り、門のアーチを潜り抜けるまでその後ろ姿を店の中から僕は見送る。

見送った所で、店の入り口にそっと《Close》の札を掛け、同時に窓際のロールスクリーンを全て下ろす。


…これで、よし。

まだショーケースには幾つかケーキが残っていた。



カラン。

待ち人来たり…


表のCloseの札を無視してこのドアベルを鳴らすのは一人しか居ない。


「チャンミン居るか?」




「あぁ、いらっしゃいユノさん」


待っていたんだけど、待っていない素振り。
あたかも今、裏から出て来た風を装う。


「今日のお薦めはどれ」

ユノさんは甘いのが好き。
だけどスイーツのうんちくには全く興味が無い。

だから単純に

「苺のソースが掛かったこのチーズのがいいと思います」

こう言うのが手っ取り早い。


「じゃあそれで」

満面のサムズアップにくすりと笑って、僕はショーケースの内側へ入る。







ケーキの本当の名は【クレメ・ダンジュ】
フランスのアンジュ地方で作られた所から命名されている。

アンジュは直訳すると天使、つまりこのケーキはクリームの天使って意味合いもある。


「今日も早く上がったの?彼」

ユノさんが言う彼はシウだ。

「えぇ、まぁ」

此処にユノさんが訪れる日は大体シウを早めに上がらせているから、まずまともに会った試しが無い。

シウが店を出て坂を下って行く道とは反対側からユノさんがこの丘を目指して登って来るから鉢合う事も無い。


「俺と二人っきりになりたかったんだ?」

この店にイートインスペースは設けて無いから、必然とケーキを食べるには奥の厨房の腰掛けになる。

「えぇ、まぁ、、」

長い脚を組んで、そこをテーブル代わりにして。
皿の上に乗ったケーキから一口ずつ口へと運ぶ。

そのなんて事ない動作の一つ一つに目を奪われ、返事も疎か。


「来るの待ってた?」

苺の赤色のソースがふわふわの真っ白いチーズに絡み、それがユノさんの口元へ…

「えぇ、、まぁ…」

ソースが口の端っこに付いてしまった。


柔らかくてふわふわのユノさんの唇…



「食べたい?」



赤くて苺みたい。



「えぇ、、、まぁ………」




「そう」




現実は想像を遥かに超える。

クレメ・ダンジュなんて目じゃ無い。



「チャンミン美味しい?」

ふわふわと何度も押し付けられた唇から甘酸っぱいソースが香る。

「甘い、、かな…」

実はあまり甘い物が得意じゃ無い。


「…そう、じゃあ要らないか」

「え、、」




「嘘、口開けて」




ユノさん、、ユノさん……



明るい髪色にふわふわパーマの貴方は、僕には天使みたいに見えるんだ。


クリームの天使…



天使と隠れてこんな事。

「ん…っ、、……ユノさん、、甘い……」



僕と、天使は。

そう言う関係だった。









このお話はAliさんのブログで掲載されていた加工画像を元に構想しました。
ランキングバナーはオリジナルを作って下さりましたよ♪
挿絵は私が加工してますので、クオリティは落ちますが。雰囲気が伝われば嬉しいです。

温かい飲み物片手にお読み下さい…

Aliさんのブログはこちら

ホミンを愛でるAliの小部屋








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