2016_11
01
(Tue)00:00

オトコはツライよ #95






「い、え…?」

「そう。家」

「・・・・」


テヤンの安眠を妨害しない程度のランタンの灯りで、課長がそれを冗談で言って無い事は表情で分かった。

「…唐突ですね、、」

やっと口から出たのは素直な僕の思いだった。

テントの話からどうしたら家を建てる事に繋がるんだか、さっぱり理解が出来ない。

変わってるとは認識してたけど、やはり課長はどこか飛んでいると思う、、


「唐突、か。別に脈絡無くこんな事を俺だって口にしないよ」
「あ、、すみません…」

仄暗い中でも課長の表情が少し歪んで見えた。
多分、傷付いたんだと思う…

「チャンミンは俺との将来をどんな風に想像してる…?」
「えっ、、」
「…考えた事無い?」
「………」


考えた事なんて、、数え切れない程…毎日のように僕の思考を支配してるって、、

だけど考えれば考える程、不安が付き纏って良い答えなんて出せなかった…


課長と付き合うと決めた時点で再婚の見込みはゼロになり、僕は一生シングルファザーとしてテヤンを育てなければならなくなった。

そうなるといつまでも今のように転勤を繰り返すわけには行かないし。

進路の事を考えれば自ずと僕の道も決まる。

出世を諦めて、テヤンの教育にあった土地を見つけて定住をする。

漠然とした中でもそれだけははっきりと道筋が見えていたんだ。

…だけど、そこに課長の姿が…


「俺達は今のままでずっと一緒に暮らす事が出来ないのは言わなくてもチャンミンも分かってると思う」
「…はい」
「お互い次の異動先さえも読めない転勤がこれから先続いてくんだ」
「えぇ、、」
「…会いたい時に、会えるようなドアがそこにあればいいのにって。何度も思ってた」
「…?ドア…??」

あ、もしかして例のポケットから飛び出す必須アイテムの事かな…

「ピンクの」
「あ、分かります、、どこでもドアですよね」

ビンゴだし。って言うか、、リュックといいドアといい、、やっぱり課長って…

「こら、笑うなって。俺は真剣にそう思ってんのに」
「あ、すみません、、つい…」

頭の中では真っ青な着ぐるみを着て四次元ポケットからアイテムを取り出す課長が浮かんでしまっていた。

「笑いたきゃ笑え」

口元を押さえても漏らしてしまう声に課長の唇が尖り出した。

あ、臍曲げた、、やばっ…

「すみません、、僕だって…毎日会いたいですよ…想いは同じです」

「…ん、そっか」

尖っていた唇が引っ込んで、僕は胸を撫で下ろす。

本当に、素直で羨ましい…


「逸れたけど、本題に戻すと」
「えぇ」

「会いたい時に、俺は会いたい」
「…えぇ、、」

僕も、ですけど…?


「だからチャンミン、悪いけど出世は諦めてくれないか」
「・・・へ?…どう言う意味で…僕はいずれそのつもりではいたんですけど、、えぇっ、
??」
「それっていずれ、だろ?テヤンの事を考えて小学校か中学校辺りで定住先を探そうとしてたとか?」
「…その通りですけど、、」
「じゃなくて、この二、三年の話で俺は言ってんだ」
「………家を建てるからですか」

家を建てるから、そこに僕とテヤンを住まわせるって事だよな、、

「そう」

それなら別に今じゃなくてもまだ先でもいい話なんだけど…

「チャンミンはさ、この街をどう思う?」

…ここで建てる気か。全く想像してなかったな、、ここで、暮らす…?

「…いい街だとは思います」

転勤する度に思うけど、慣れて来たと思った頃に必ず異動の命がくだるから。
あまりその土地に執着をした事なんて無かった。

「俺もそう思うんだ。…多分、皆俺達の関係に気付いているのに変な目で見たりしないし。寧ろ温かく見守られてるって気がしない?」

確かに…そう言われるとそうかもしれない。

「あのスーパーの店員さんも、お客さんも普通に接してくれるだろ」
「えぇ…」
「テヤンの保育園の先生だって普通だし」
「まぁ、、確かに…」
「土地はタダだし」
「はぁ…って、、え?タダって、、」
「惣菜のおばちゃんがさ、子供の為にって自分の家の隣に土地を空けておいたんだけど。事情が変わってその土地が要らなくなったんだと」
「そこに僕等をって事ですか、?普通に売った方がおばちゃんも得しそうな気がするんですけど…」
「まぁ、おばちゃんも色々あって…。変な人が買うくらいなら男二人の俺達に居て貰った方が安心するらしい」
「はぁ、、そうですか…」

おばちゃんの詳しい事情は一向に見えて来ないけど、要は僕等の方が知らない人に売るよりは安心してられるって言いたいんだろう。

「どうかな」

いや、どうかなって聞かれても、、

「…じゃあ、僕は家が完成したらこの土地にずっと居る事になるんですよね…」

具体的にテヤンの進路を考えてみても、ソウル市内の大学に通うとしてもこの土地なら可能だと思う。

それなら迷う事も無いんだけど…

「そっ、俺もこのままずっとこの土地に居る事になるけど」

・・・ん、?

んん??ちょっと待て待て、、えっ…?!?

「仕事は…」

会社の規定で家庭の事情で転勤が困難になってしまった場合のみ、その土地から異動が免除される事があった。

今回の家の話で行けば、僕だけがその対象にはなるけれど…課長はどう考えたって無理な筈…


「辞める」


「・・・は?」


「今の会社は、辞めるよ」











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