2016_10
29
(Sat)00:00

オトコはツライよ #92







「チャンミンは冷たいなぁ…」


荷物と一緒に置き去りにされたのが相当ショックと見え。

ぶちぶちと文句を溢しつつも、テントの組み立ての説明書を見つけるとは今度はそっちに集中し出した。

本当…子供なのか大人なのか、掴めない人だな…

ガラポンを必死で回していた時は完全に無邪気な少年だったのに。

「チャンミン、チャンミン」

キッチンで夕飯の支度をしている僕の手を止めてまで呼ぶって事はよっぽど大事な事なんだろうと傍に駆け寄ると。

「今週末にでも例の森に出掛けようか」

って、玩具に夢中になって遊んでいたテヤンに聞こえないくらいの小声で僕に囁きかける。

「…テヤンも、ですか?」

「勿論。でも驚かせたいからまだ内緒」

そうやんわりと僕の後ろ頭をひと撫でしてチュッ…と軽く頬に口付ける。

息子の目を盗んではこうして僕の心を掴んで離さない課長に。

「…っ////…はい…」メロメロだった…












「今日はデートかい?」

引き換えたばかりの高級黒豚のスライスされたパック詰めを手に。
浮き足立っていた所を惣菜のおばちゃんに捕まってしまう。

「…えぇ、まぁそんな所です」

なんか色々と詮索される事を覚悟して素直に肯定してみれば、おばちゃんは「へぇ、それはいい事で」と。

意外過ぎるほどあっさりとしていた為に、こっちの方が何だか拍子抜けしてしまって…

「あの、、このコロッケを3つ下さい」

買う予定じゃ無かったけど、行きの車中で食べてもいいかなって。
そう思っておばちゃんに注文をしたら、頼んだコロッケとは別にゴソゴソと何かを取り出して。

「あんたもっと食いなさいよ?そんなに痩せっぽちで彼氏を満足させられてるのかこっちが心配になるわ」

ぽいっと、僕の口めがけてチョコレートを放り込んで来る。

…満足って、、どういう意味だ…っ////


「あぁーッ、おばちゃん!今チャンミンに何を食べさせたんだよ!?」

カゴに入れ忘れたモヤシをテヤンと共に取りに戻っていた課長がすかさず僕とおばちゃんのやり取りに割り込んで来ようとして。

僕の前にずいっと歩み出ると

「あ、あんたの分は無いよ。いいかい?男は30代後半になるとね、嫌でも脂が落ち難い身体になってしまうんだから今は大丈夫だと思っても少し気を付けないといけないね。あんただってそっちの彼氏に嫌われたくないだろ?」

前に出た課長の隙をついておばちゃんの手が課長の脇腹を摘む。

「う゛、」

確かに…近頃課長の輪郭が丸くなって来ていたように感じたけど…

「あんた達には長生きして貰わないと、」

そこでおばちゃんの言葉が途切れた。

どうやら僕の前に立つ課長の顔色が変わったようで、おばちゃんは慌てて口を噤んで奥へと引っ込んでしまう。

「どうしたんですかね…?」

おばちゃんが消えた方向へそう呟いても、課長からの返答は無かった。

…怪しい。

この前から何かこの二人は僕に対して隠し事をしている気がして、折角の泊まり掛けのキャンプを目前に心の中には不安が渦巻く…





「「うーっ!」」

前に来た時は二人だけだったけど、今日はテヤンが加わって三人の車内。

ワクワクと期待に胸を膨らませるテヤンがはしゃぎ過ぎて隣の席で交互に遊び相手をする羽目になった。

だから、、着くまでにかなりの体力を消耗した僕と課長は、車から降りるなり伸びをして唸り声を上げざる得なかったんだ。

だけど、やっと着いたー!って叫んでいる暇はない。

折角着いたってのに、息子の充電もそろそろ切れそうで車から降ろすと既に瞼が半分降りて来ていた。

森での宿泊の場合は、併設されてる管理施設への許可がいる為に先ずはそこで手続きが必要だったり。

持ち込みの荷物以外に借りたい物があれば、管理人に言ってレンタルも可能で。

その一切合切を課長に任せる事にした僕は、眠そうなテヤンの手を引いて取り敢えず前に見た湖を目指す為に歩き出す。




「…パぁぱ、、」

まだ発音がはっきりしない我が子の問い掛けに、心が和まされる。

「うん?どうした」

「ゆうにょ、、?」


課長の姿が見えなくなったのが息子の不安を掻き立てるのか…


「ユノ…はね、ちゃんと来るよ。だからもう少しここでパパと待っていような」

息子の前では課長の事を"ユノ"と呼べる。

そんな時間が密かな僕の萌えとなっているとは息子も、課長も知らないだろうけど…


僕の言葉に安心したテヤンは、その顔にパッと向日葵のような笑顔を咲かせてみせる。

あぁ…課長の言う通り、三人で来て良かった。

課長はもう、僕と息子の生活の一部なんだって…


課長そっくりに笑う息子の笑い顔に、心の奥が。




熱く締め付けられる…














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