オトコはツライよ #91

「…恐るべし、肉パワー、、」
課長は笑いを堪えようとしてるけど、声が震えている。
結局。
みんなが見守る中で二人が引き当てた物は3等の高級黒豚だった。
あぁーー、と一斉に落胆の声にその場が包まれ、居た堪れなかったのは何を隠そう、この僕だ、、
1等なんてそうそう当たるもんじゃないし、3等だって凄い事だと思うのに。
こうなるとティッシュ箱を引き当てたパターンよりもギャラリーの反応が良くない気がして凹む…
だけどそんな僕を放置して、課長の元へ今まで見守っていたお客さん達が殺到したんだ。
自分のを!遠慮すんな!って口々に叫びながらその手には抽選券を握り締めていた。
課長はもうそんな空気に逆らえずに次々とガラポンを回して行くけど、最後の最後まで1等を引き当てる事は無かった。
課長が引いたハズレは全てティッシュ箱に変わり、それは全て券をくれた人に渡し。
一つのイベントに盛り上がりを見せたテント内もサーッと蜘蛛の子を散らすようにして人がはけて行く。
「もしかしたら最初から入ってないのかもね」
そんな中、落胆する僕をお姉さんが慰めるけど、店員さん達は苦笑いで「ちゃんとありますよ」って1等の金色の玉を取り出すから。
それを見て、課長も完全に諦めがついたみたいだった。
テントはその場で贈呈されたが、黒豚は引き換え券のみ。
食べたい時は前日に連絡くれれば精肉コーナーで受け取れるシステムだとかで、僕等は後日にする事にして。
お世話なった御礼も兼ねて、お姉さんにもう一枚の引き換えをあげたら素直に喜んで受け取ってくれていた。
「しかし、、もっとコンパクトだと有難いんですけど…」
済州島に匹敵する旅行計画を、って設定だからか、どうやらかなり造りのしっかりしたテントらしく重量もそれなりだ。
課長がテントを担いで、僕が両手にスーパーの袋をぶら下げて歩いた。
だから息子が待つ保育園に着くと、担任の先生が目を丸くして僕等の様子を眺めている。
でも、その横で一人だけはしゃぐのは。
息子のテヤン。
このはしゃぎよう…自分の為に何かをおもちゃでも買ったと勘違いしてるかもな、、、
「テヤン、これはおもちゃじゃないんだ」
前もって言わないと、後が怖い。
だけど、、先手を打ったつもりの僕に対して。
「ん?大人にとってはおもちゃみたいなもんだから合ってるんじゃない?」
そうだよ、大人のおもちゃだよ!とヒヤヒヤなキーワードを連発する課長。
慌てて担任の先生を見たらふいっと目を逸らした。
「いやいやいや、、違うんですっ///!!これはテントなんですよ!さっきスーパーの抽選会で当たって、、、」
必死で訂正する僕の肩をちょいちょいとされて、振り向くと。
「そんなに必死に説明されると先生が気不味いでしょ」
って、、、アンタが言うかッッッッッ///
もうっ、、構ってられるか!!
「あ、チャンミン、待てって!この荷物どうすんだよ~~~!?」
スーパーの袋を置きざりにしてテヤンを抱えて、僕は走ったんだ。
…課長は残り数キロをタクシーを使って来ていた。

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