オトコはツライよ #88

食べた感じがしないって、まさに今の僕の心境だ。
御飯をもぐもぐしてもなかなか喉に押し込めない。
それでも無理矢理ごくんと飲み込むと、待っていたように
「食欲無いか?」
って、聞いてくれるのはとても有り難いけど、、
いかんせん距離が近いッッッ///
このテーブルだってそんなに狭く無いのに身体を思いっ切り乗り出して、、
しかも、手が顔に触れようとそこまで伸びて来ているし…
課長には見えないけど、僕の視界には斜め前に座るジェミンの表情がよく見える。
苦笑いって言うか若干引いてる感じ。
課長が突然僕の下の名前で呼び出したのはジェミンへの牽制なのだと分かってはいても。
露骨過ぎてジェミンが困っているようにも見えた。
何だかな…でも何か腑に落ちない。
「チャンミン本当にどうした?骨でも引っ掛かったか?」
阻止をしなかった手は、そのまま僕の頬を撫でる。
「骨!?それなら御飯をそのまま噛まずに飲み込めっほら、俺のやるから」
何も答えていないのに横から先輩の御飯が僕のやっと減り始めた茶碗に移される。
「なっ、、!!俺のをやるからそっちを食べろ」
その茶碗を避けて、前の席からまだ二分の一ある御飯茶碗が移動して来て…
って、、先輩の過保護振りは今に始まった事じゃ無いけど、それに目くじらを立てて課長まで参戦するか!?
思わず、ハァ…と盛大に溜め息を吐くと、
課長は大ごとに捉えて慌てふためき、横からは背中をバシバシと叩く手が伸び。
そしてジェミンはクスリと笑った。
…やっぱり、何かが引っ掛かる…
会計の段階になると、いつも世話になってるからって僕の分を持つと言い出した課長に対して。
先輩が恨めしい気持ちを込めて「俺と住みませんか」って、真顔で迫り。
課長は即却下してたけど、意外とこの二人って気が合いそう。
つれない課長にまだ往生際悪く頼み込む先輩が擦り寄って行った。
後ろからそれを眺めながら僕はジェミンの歩調に合わせてゆっくりと下がる。
…会社に戻るまでに話すなら今しかない。
「あのさ、課長のフルネームって分かる?」
ジェミンの顔をチラッと見ると、聞かずとも答えは出ていた。
そっか、知ってるんだ。
「有名じゃないですか、チョン・ユンホって言えば…」
「あぁ、、社内でやり手だって評判だしな」
そうなんだけど、…でもジェミンは僕の名前は知らない…僕もそこそこ有名だって話なんだけど、、
「冷静沈着で、トレードマークの眼鏡が凄く似合うけど、でもその奥の目がいつも笑ってなくて怖いって…聞いてたんですけどね」
「……」
前の課長の印象か。
「でも実際の課長って…好きな人の事になると周りがあんなに見えなくなるんですね」
「………///」
「かっこわる…ダッサっ、、」
吐き捨てるようにジェミンは鼻で笑う。
「…"俺の好きになった課長"じゃなくて幻滅したって…?」
一か八かで、投げ掛けた問いに。
ジェミンの足が止まる。
やっぱり…そうだったか…
「、、、なんでシムさんには伝わって…課長には伝わんないんすかねっ、、」
ほら、見ろ…
どっちが人誑しだ。
(੭´・J・)੭ポカッ!(∵*)痛っ!なんで!?
何が罪かって?かっこいいのが悪いんです。
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