オトコはツライよ #83

名残惜しさもあってなかなか降りようとしない僕を見かねて、課長は背におぶったままの状態でしゃがみ込んだ。
「…今日は逆になちゃいましたね」
「んー、偶にはいいよ。いつも俺ばっかり得させて貰ってるし」
「………」
それはちょっと違うんだけどな。
課長は毎晩僕をバッグハグするから一方的に甘えてると勘違いしているけど。
ちゃんと僕だって課長に甘えさせて貰っていたのに…
そう、例えばビールを飲みながらも唇に課長の温もりが欲しくなったら。
僕は自分のお腹に回っている課長の腕をぎゅっと抱き込むんだ。
すると課長は直ぐに『どうした?』って耳元で話しながら軽く耳の裏にキスをして。
擽ったさも相まって、捩った所を。
ちゅっ、て…お望みはここだろ?って感じで唇を塞いでくれる。
初めの頃はその慣れ感に戸惑いもあったけど、こんなに素敵な人が誰も放って置かないわけが無いか、と。
自分の中で納得をしてからは別にそれも大して気にもしなくなって来ていた。
まぁ…時々はちょっとだけ寂しくなったりもするんだけど…
今更、課長の過去に嫉妬しても誰も喜ばないだろって、ね。
…これって強がりかな…?
「はは、擽ったいっ、、」
勝手に回想に耽って、結局は悶々として。
課長の背中に顔を押し付けて自問自答をしていた。
「…広くてあったかい」
男の背中って感じ。
逞しい…
「そっか?大して変わんない…いや、シム君は横幅が細いか、、」
そうそう。
撫で肩なもんで。
「ん、、届かない…っ」
僕が息子を寝かし付けている間に、課長がリビングのテーブルに晩酌セットを用意してくれていた。
それに手が届かなかった。
「はいはい、ちょっと待ってて」
プシュッとプルタブを起こしてから手渡される缶ビール。
手酌が面倒だからって缶のままで飲むのが僕のスタイル。
渡されたのを口に付けて「どうも…」と言いつつ、一気に喉を潤す。
くうっ、、
「いつ見てもいい飲みっぷりで」
茶化す訳でも無くて、本当に感心した様子で課長がそんな事を言うから。
調子に乗ってその後もゴクゴクと飲んだ。
けど…水分だけじゃ僕の腹は満たされない。
「そろそろこれかな~?」
箸をカチカチと鳴らしてお行儀が悪いけど、課長のそれは何だかリズム感があって面白い。
大きくカチッと鳴った箸は意中の肉団子を捕まえて。
そのまま僕の…じゃなく課長の口へとナイスイン。
……チッ、僕にじゃ無いのか。
腹が減ると殺気立つって、隣の席の先輩からよく言われるのはこの舌打ちが原因だろう。
「ん」
ん?
食べ損ねた肉団子の行方なんて気にも留めずにまたビールを飲もうとしていた僕に。
課長が振り返っていた。
「エッ」
その口には、肉団子。
これって、、食えって事、だよな…?
「ん」
もう一度顔を突き出して肉団子を迫る課長。
恐る恐る、ガブッと噛み付くと、ムニッと課長の唇が当たった。
実はこの肉団子、口移し出来るレベルの大きさじゃないんだ。
大きくて食べ応えがあるのがウリなだけあって、二人で一つを分け合うのが丁度良かったりするサイズ。
だから噛み付いた僕も半分、そして咥えていた課長も残りの半分を食べて。
丁度良い。
そして相変わらず美味い。
「ん」
食べ終わるまでずっと課長は振り向いた姿勢のままだったから何だろって思ってはいたんだ。
だけど……
「ん」
催促したような言い方で再度突き出す唇には、肉団子の甘酢餡がべっとりと付いていた。
僕はさっき自分のは舐め取ったばかり。
「ん」
三度目の正直、いや、催促…
ペロッ。
餡を舐め取る僕の舌を。
課長の舌が絡め取る。
…何だかな。
「前に惣菜のおばちゃんに言われたんだ。『この肉団子は彼氏と分け合って食べるとより美味しいぞ』って」
・・・・多分、それ、こんな食べ方じゃないと思われますが…
と言うか、いつの間におばちゃんとそんな会話してたんだよ……
知らないのは僕だけだったのか、、
でも
確かにこうやって食べると。
満足感が、倍ですけどね…///
(*∵)……ଘ(੭´・J・)੭* ੈ✩‧₊˚……
遅くなりました、、、0時に間に合わなかったค(TㅅT)ค
2位確定しました~!!
初だ~有難う御座います!!!
慢心せずに日々精進致します。ひとえに皆様が居てこそですから。

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