オトコはツライよ #74

父親が子供の前でめそめそ泣いたら駄目だ…
いや、それ以前に、オトコ、だから…って、
そうそう人前で泣くもんかって、、、
心の何処かで常に我慢をしていた気がする。
…だけど、、
なりふり構わずにただただ涙を流す僕を、義父も義母も。
そして課長も…
慈愛に満ちた優しい眼差しで見守るから…
「ぱぁぱ、、?」
先程の剣幕とは打って変わったように、何で僕が泣いているのかと不思議そうに覗き込んで来る息子だった。
子供心に、今の雰囲気で何か感じ取るものがあったのかな…
「パパはね…じいじとばあばと、ユノが好きで好きで大好きだから、、、嬉しくて泣いてしまったんだよ」
溢れ出る涙を甲で押さえて、息子がこれ以上不安にならないようにって。
うんと飛び切りの笑顔を作ったつもりだったのに。
「…っ、、ふ、ぐっ、、」
テヤンの目には見る見るうちに水の膜が張り、今にも泣き出す寸前に、、
「えッ!?テヤン、、どうした、、?……あっ!!」
「うわーーーーんっ!!」
…遅かった、、
「ごめんごめんッ!、、テヤンの事も大好きだからね??ね、、ごめんな、、テヤン~」
僕とした事が…肝心な息子の名前を出さなかったから、、
父親、…失格だ…
泣きじゃくる息子に、おろおろと必死に宥める僕。
義両親はくすくすと笑い、課長はにんまり。
誰も助け舟を出そうとしないなんて、、
「っ、、、他人事だと思ってーっ!!」
「くくくっ。…泣き顔も、寝顔も本当にそっくり」
宥めるうちに泣き疲れた息子は僕の腕の中で眠ってしまい。
時間も時間だからと、帰り支度を義母に引き止められ。
結局、寝入った息子を用意された布団の上に置き。
そのまま僕等もその横でどうぞって、、
敷かれていたのは大きめの布団が一組だけ。
そこに枕が二つ。
これ…どう考えても夫婦で使う奴だろ、、
それを気にせずに息子の寝顔を見てそんな呑気な事を言ってる課長の神経が。
僕には信じられなかった。
「親子だから似てて当たり前ですっ」
さっき助け舟を出さなかった恨みから、ブスッと素っ気なく答えてさっさと布団に潜り込む。
こうなったら先に寝るが勝ちだ。
寝てしまえば恥ずかしさなんて忘れてしまうんだし。
「…怒ったの?」
ひんやりとした手が僕の下腹に触れる。
「っひ!ちょっと、、どこ触ってるんですかっ、、!?」
「お腹」
そりゃそうだけど…なんか手付きが危ういんだよ、、!
「べ、、べつに怒ってませんから、、離れて下さいよ!!」
「やだ」
「っ、、!?」
やだ、だって?はぁーっ!?
「俺、怒ってるんだけど」
「お、…、!?」
何でだよ…いつ、どのタイミングで!?
イマイチ、課長の怒りのツボが分からない……
「………夕飯、そんなに美味かった?」
「・・・・」
ハァ??夕飯、、、?
「はぁ、、、俺…結構頑張って用意したのにさぁ……」
「・・・あぁ゛!!」
これ…ランチのパターンだ、、、
「シム君の…馬鹿…っ」
「わ、、っ、アヒャ、、ちょ、やめ、、!ひゃひゃ、、!」
しなやかな指が、僕の脇を擦り抜ける。
…てっきり。
妻の実家で襲われるかと内心ドキドキしていた僕の思いとは裏腹に。
別の意味で課長に襲われた夜で、、、
翌朝…
こほんっ、と空咳をする義父と。
目を合わせようとしないのに目が笑ってる義母。
「ちが、、誤解なんですっ、、!!」
慌てて取り乱す、僕を見て。
息子が課長とそっくりな笑い声を上げる。
うっ、、もう…本当に、、、僕の味方って、、、
家族って…一体…
何なんだ……………
end
えっ?終わり?と思われた皆様へ。
今後のお知らせも更新致しましたので、そちらも御一読お願い致しますm(_ _)m

にほんブログ村
- 関連記事
-
- オトコはツライよ #76 (2016/09/25)
- オトコはツライよ #75 (2016/09/24)
- オトコはツライよ #74 (2016/09/23)
- オトコはツライよ #73 (2016/09/22)
- オトコはツライよ #72 (2016/09/21)