オトコはツライよ #67

「はぁーーーっ、、緊張した」
痛いくらいに握られていた指の力が抜ける。
僕の指は多分ジンジンと真っ赤になっていたんだろうけど。
そんな痛みよりも胸の動悸の方が凄すぎてそれどころじゃない。
けれどそれでも課長の言ってくれた言葉に何かを返したい。
だけど、正直何て言ったらいいのか、、、
肝心な時に限って僕の口は重く閉ざす。
「ま、現実問題としてはうちの両親は大丈夫だろし。あとはシム君の親御さんの理解とか。それにシム君の奥さんの御両親にも、ね…一応、今日会った時に俺の決意は伝えるつもりではいるけど」
僕が貝になったのとは逆に、課長は僕の返答を待たずに更に先の事を考えているようだった。
それが何て言うか僕にとっては驚きで。
「え、、あの…その、、」
「ん、?まだ何か懸念でもある?」
「い、いや、懸念って言うかその…」
「ん?」
まだ。
「まだ、、」
「うん?」
肝心な。
「…僕の気持ちとかは…聞かないんですか、、、」
まだ、僕は何も言ってないのに先の事を進めないで欲しいのに。
「Yes、でしょ?」
お、、///っと、、ええっ、、と、、
突然、僕の視界に覆い被さった課長が寝転がる僕の真上から。
柔らかく降り注ぐ太陽みたいな笑顔でそんな風に断定を含んだ疑問系を使う。
まるでそれは。
ズドンと、胸に剣が垂直に突き刺さる衝撃。
その衝撃波はドキドキなんて物では済まない。
…心臓が止まったかと思った、、、
この人と関わると本当、命がいくらあっても足りないと思う。
「ふふ、言わなくても知ってるから答えなくてもいいよ…」
そのまま視界を覆う影はぴったりと隙間なく僕に重なる。
って言うか、、もう言葉を伝える手段さえも課長は奪っておいて何言ってんだか、、、
でも。
憎まれ口も、素直に蕩けさせる程に。
課長から与えられるキスは甘くって…
「シム…くん、はぁ、…好き…」
息が継げなくて限界まで吸われ続けた舌が、突如ひんやりとした空気に晒された瞬間さえも。
この人の言葉は僕の心と身体に容赦無い。
課長が口を寄せた耳の奥、鼓膜までも震わす甘美な囁きに溶けそうになるってのに。
名残惜しい唇はいつまでも僕の耳朶を啄むばかりで。
あんなに熱く濡らした唇が、既に乾き始めているのが堪らなく寂しいんだ。
…だから。
僕の顔からそれた顔を引き寄せ。
「僕も…好きです、、でもまだ全然……足りないんですよ、、!」
自らキスをした。
押し付けた瞬間、その肉厚な唇が緩むのが分かった。
笑いたきゃ思う存分笑えばいい。
どうせ……僕は……
"Yes"意外の答えなんて持ち合わせてませんでしたよ、、、
本当、この人には敵わない。
…結局、濃厚なキスを続けるうちに二人の下半身が硬くなってしまって。
でも、それでも唇を離す事も出来ずに暫くはモゾモゾと擦り付け合って、ソレをどうするかと相手の出方を互いに待ったんだ。
"ここで抜く?"
"いゃー、それは流石に、、"
"確かに人気は無いけど…なんかね…"
"ですよね…分かります…抜きたいのは山々なんですけどね、、"
"抜いた後で何だか罪悪感に囚われそうだしね…"
"ぁぁぁあ、嫌ですよー!スッキリした後で我に返って虚しくなるパターンは!!"
"じゃ、そういう事で取り敢えず離れようか…"
"う゛、、そうですね…"
相変わらず唇はくっ付いたままで無言のアイコンタクトをした二人。
多分、こんな感じの事を目だけで語り合ったと思う。
意を決して勢いよく飛び退いたのは課長の方が先で。
そのままごろりと僕の横に転がって肩で息を吐いていた。
しかし、…笑える。
軽めのアウトドアだからってテントまでは課長のリュックには詰まっていなかったのに。
レジャーシートの上で大の字になっている僕等の股間には立派なテントが張られているんだから…
僕の視線に気付いた課長が自分と、僕のソレを交互に見比べた後に。
大爆笑をした。
あぁ、やっぱり僕等って…こんな感じでずっと一緒にいるんだろうな。
ずっと、ずっと…

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