オトコはツライよ #54

その日はアラームよりも先に目が覚めた。
心配していた課長は相変わらず息子にお腹を枕にされ、顔を顰めながらもまだ眠り続けている。
普段はそんな状態を見れば、息子の頭をそっと外してあげたりするんだけど。
今日は…、放置。
悪意は全く無いんだ、、、だけど何と言うか、、その……
言い訳がましく自分に言い聞かせてみてもやっぱり課長を敬遠したのは確かで。
「おはよ」
早く起きてくれば甘めのカフェオレも偶には用意してあげたりもするけど、そんな時間はとうに過ぎ。
課長が僕に挨拶をして来た頃は既に朝食の支度も中盤に差し掛かっていた。
「…おはようございます」
決して機嫌が悪い訳では無かったけど、あまりにも爽やかな課長に対して。
口からついて出た挨拶は少しばかりブスッとなる。
スッキリとした顔をして、、、あっ、
…出す物を出したから…?
突如フラッシュバッグした昨夜の課長のソレ。
「い、、今、御飯出来ますから…ヒッ!」
どぎまぎしていた心を落ち着かせたくて。
御飯が出来るからあっちへ行ってくれって僕は言おうとしていたんだ。
だから、課長の顔をまともに見れない僕の視線は自然と下がり気味になり。
もれなくその視界に入って来たのは課長の朝の生理現象だった。
「あ、…」
僕が凝視している先に課長も気付いたんだろう。
でも、それを敢えて隠すわけでも無く。
「直ぐに治ると思うんだけど」
ははっ、とかお茶目に笑って尚も僕に近寄ろうとして来るから、、
「あっち行って下さいよッッ」
、、やってしまった…
男同士なんだし、それは仕方ない事だって充分に分かっているのにこうやって怒鳴り散らすとか。
その方がかえって可笑しいだろ。
ヒステリックでまるでホルモンバランスが崩れた女性みたいだ。
もしかして…溜まってんのかな?…
以前は息子が寝てからその類の動画で定期的に抜く事が出来ていた。
それが、どうだ。
今は四六時中課長の存在を感じてしまって、なかなかそんな時間も取れやしない。
一度会社のトイレで試みた事もあったけれど、あれは全然話にならず。
やっぱり家が一番やりやすい環境なんだとつくづく思い知っただけだったし。
そりゃ……溜まってるよな、、、
『あんまり溜めんなよ?ほどほどに抜けって』
これは。
今日、仕事中に隣の席の先輩から言われた台詞。
因みに、ストレスの話であってアッチの事を言い当てた訳じゃない。
「…シム君…溜まってるなら我慢しなくていいよ、、」
そしてこれは。
僕が今、課長から投げ掛けられている台詞。
因みに、課長は的確に僕の状況を理解している。
我慢なんて出来る筈が無い。
もう、課長の言葉に対しても受け答えする余裕さえもなく。
課長の手が忙しくなく上下するのに合わせて、僕の身体も反り返っていく。
ただただ浅い呼吸を継ぎながら、爪先から押し寄せる波を必死で堪える。
だけど。
やっぱり、そこは同性。
波が頂点に達しそうになるにはどうしたらいいのか。
その手は熟知していた。
静かに、静かに追い詰められ。
無言の攻防に決着が着いた時、僕は完全に白旗ならぬ白濁を吐き出して完全降伏。
そして、久し振りに味わった刺激に対して。
僕の快感の波は留まる事を忘れてしまったようで。
僕を征服した、その手を。
いつまでも。
濡らし続けていたんだ。
しかし。
…何で、こうなったんだっけ…?

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