2016_08
11
(Thu)00:00

オトコはツライよ #49






なんかもっとこう、堂々と課長を独り占め出来ないものか…


そんな風に思い始めているとチャンスは向こうからやって来るもんで。

思いも掛けない吉報が舞い込んで来ることもあったりする。


先日、結婚式を挙げた後輩夫婦が社宅の空きを希望し。

現在の社宅の空きはゼロという状況に、組合側が出した答えは。

独身になった課長を家族向けの社宅から独身寮へ移って貰うという話だった。

が、しかしだ。

独身寮も現在、満室。

となれば職場の近くのアパートを一室会社が借り上げて、そこに課長を住ませるしか手段が無かった。


それを組合から切り出された課長は、その夜の甘えタイムに僕にそのまま切り出したのだった。



「…という訳で、そのうちここから引っ越さなきゃいけないんだ」

しょんぼりして僕の背に顔を埋めて項垂れる課長とは反対に、僕はもう心が踊り出しそうに興奮をしていた。


「チャンス、、、」

「え?」
「いえ、なんでもありません」
「ふぅん」



チャンスだ、これを機に、、、


「シム君、なんかあまり寂しくなさそうだね…」

「は?寂しいですよ、滅茶苦茶寂しいです」
「あ、そうなの?でも声が弾んでる気がするけど、、」


「課長!」


お決まりのバッグハグから僕が勢いよく振り向いたから、課長はキョトンと言うかギョッてしてた。

でも、僕はそんな課長を御構い無しに肩を揺さぶる勢いで。




「ここにッ!住みましょう!!」




今思えば。

それはプロポーズみたいなもの。

だけど僕はただ単にもっと課長と一緒に居たいって思いだけで。

後先の事はよく考えもしなかった。


以前の僕なら周りからどう思われるかとか、そんな事ばかりを気にしていたのに。


ただ、ただ、課長と離れたくないって。

それだけで…






けれど。

意外にも僕の無謀な提案はトントン拍子で進み。

一応は独身寮が空くまでって言う特例パターンが適用されたらしいけど。

心の中では一生空くな!と願う僕もいて。

隣からせっせと荷物を移動する手伝いの足も軽やかだった。



要は。

僕は浮かれていたんだ。






実家の親が突然社宅に来ることはあっても。

妻の御両親が連絡も無しにここへ訪ねて来た事が無かったから、、どこかその対応が抜け落ちていたんだろう。


仕事の関係で近くに来たからと、平日の夕方に妻の御両親が社宅に寄ってみようと言う話になったらしく。

最初からその予定では無かった為に、僕に連絡を入れるのを忘れていたとかで。

近くのケーキ屋で息子へのお土産を手に突然訪ねて来たんだ。


前回は保育園で会い、今回は息子と一緒に入浴中。

そんな課長の存在を。

流石に御両親も不審に思ったに違いない。


半ば強引に夕飯を食べて行くと言いだした義母、その後ろでは義父が罰が悪そうな顔をしていた。


そんな中で一人喜んでいたのは勿論、息子だけであって。

隣はもう新婚夫婦が引っ越していた為に、もう逃げ場の無い課長は。

風呂上がりの無防備な格好のままでそのやり取りを見守るしか無く。


結局、髪を乾かし終えた息子と課長、そして義父がリビングで遊び。

残る僕と義母が、キッチンへ……



だけど。

義母は、僕だけに聞こえる声で。


『チャンミンさんの人生を縛る権利は無いけれど、新しい出会いをしていたらちょっと複雑だったわね…今日は抜き打ちみたいな真似をしてごめんなさいね』


と、少しだけ懺悔が入り混じった複雑な心境を吐露した。



あぁ、、、もし家に居たのが課長じゃなくて、女性だったら…どうなっていた事か、、

…妻の御両親は今も僕にとっては義理の父と母だったのに。



夕飯の後に頂いたお土産のケーキは4つだけ。

僕の心はチリリと痛かった。










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