オトコはツライよ #35

「おはよう」
「おはようございます…」
何度も、玄関のドアを開ける前に心の中で呟いた挨拶は。
声に出した途端、掠れてしまい。
あんなに自分に平常心と言い聞かせたのが全て水の泡。
そして案の定、課長はすかさずにそんな僕の変化を感じ取り。
「もしかして風邪?」
先日みたいに俯いてしまった僕の額に手を添えて来る。
「……」
「良かった…熱は、無いね。昨日、あのままシム君を置いて帰ったのがずっと気掛かりでさ」
「…すみません…」
「ん?いや、別に俺はいいんだけど。だってシム君、全然動かなくなっちゃうから」
「いや、本当…すみませんでした」
「いやいや、謝らなくていいって。その代わりにちゃんと顔見せてくれない?」
くれない?って疑問系で聞いておいて、僕の返事を全然待つ気のない課長は。
額からずらした手を頬に添え、僕の俯いた顔を正面に向かせた。
だけど、僕は前を向かされても課長の目を直視する事が出来なくて。
その少し下の、鼻までしか目線を上げられず。
「顔色は悪くは無いみたいなんだけど、、やっぱり熱っぽくない??」
空いていた右手も頬に添えて、両手で僕の顔を挟んでは不思議そうな声をあげていた。
…それは、ただの火照りです!
アンタの手が触れている間は仕方ないんですよ、、、
と、言い掛けた所で僕の視線は鼻先からその下の唇へと下がってしまい。
『好き』
その二文字を呟いた唇…が。
視界に入った。
隣で、内線の電話を取って話す時も、真正面で向かい合って食べた食堂も。
どんなにマジマジと見つめていたって。
あんな風に、"ドキッ"とはしなかった。
逆に今日一日中、僕に見つめ続けられた先輩から。
不審な目を向けられた時は、流石に"ギクッ"とはしたけれど。
先輩はそんな可笑しな行動を取る僕に対していつも、 『…歯になんか挟まってた?』とか。
少しずれた解釈をしてくれるから本当に助かるけど…
いや。
先輩には到底、僕の考えている事なんて分かりっこない。
先輩の、薄くて横に長い唇を見て。
別に大して特徴も無く一般的?そんな感想しか思い付かないのに。
「…シム君、どうした?」
何で、この人だと。
こんなに"ドキッ"が止まらないんだろう。
「あは、何で」
俯けば当然のように耳に触れる手。
「耳が…真っ赤なの?」
昨日は勢いで課長に、僕と本気でキスがしたいのかと。
面と向かって聞けたのに。
今日の僕はそんな事も口に出せない程に、課長の顔を直視すら出来ていない。
昨日までは平気だったのに…
いや、、今朝までは恐らく大丈夫だった…
だけど…今日の僕は…
課長の唇の事ばかりを考えて過ごしていた。
オトコと、キス?
僕にもそれを望む気持ちが。
あるからこそ"ドキッ"ってするんだろうか、、
課長の、この柔らかそうな。
唇に………
き、き、、き、、、、、
「シ~ム君??」
「うわっ!!!!」
近いって、、馬鹿、、、
するりと手からこぼれ落ちたトマトよりも。
恐らく真っ赤な僕の顔。
そんな僕の目と鼻の先にはふわふわ笑う課長が居て。
ここがいつものスーパーじゃなかったら…
きっと、僕は。
「はは、そんなに怯えなくてもいいのに。こんな所で俺だって取って食おうなんてしないって」
確実に、食べられているに。
違いない。
これにて一旦連載を休止致しますm(_ _)m
休止している間にせっせと書き溜めをして帰って来ますので暫しお待ち下さいませ。
その再開の目処としましては、最短で二週間、長くて三週間を目標として頑張ります!
最後に、いつも温かい応援に心から感謝申し上げます(*˘︶˘*).。.:*♡
では次回、このイメージ画像にてお会い出来る事を楽しみにしております↓Aliさん有難う御座います♡やっとここまで来ましたよ~♪


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