2016_07
09
(Sat)00:00

オトコはツライよ #33







今日は大人しく課長の腕の中に飛び込みたいと思ったのは事実なんだけど。

実際問題、課長と僕の身長差があまりにも無い為に。




自然と身体を包み込むとか、抱き寄せるとか。

それが微妙に上手くいかない。



僕が課長の左に顔を傾けて胸を合わせようとするのに。

何故か課長も今の今まで直立不動の体勢でいたくせして。

僕がその距離を詰めようとするタイミングで課長の顔も同じ方向に傾く。


うおっと思って避けて右に行けば、課長も同じように右に傾き。

慌ててそれを避けるのにまたまた課長もまた同じ感じに動くもんだから。



「あ、、」「おっ」「や…」「ははっ」


顔と顔がぶつかる寸前で交わすみたいな、まるでコントの一幕でもやってんじゃないかって話。


危うく唇がぶつかりそうになる事もしばしばだし。


…ん?…まさかな。



「もしかして…わざと、ですか…」

「ん?」

聞き返した『ん』が、今度は真正面で向き合った状態。

目と目、鼻と鼻と、口と口がトンッと押されれば触れそうな距離だった。


「や、ちょっと…ち、近いから…」
「嫌なの?」


嫌、ではないんですけど…何というか…


「ははっ、真っ赤だね。シム君」


視線が泳ぎっぱなしの僕とは対照的に、余裕綽々な課長は。

いつも真っ赤に染まってしまう僕の耳の縁を撫でている。


「…絶対に…わざと、ですよね…?」


後ろにも引けず、前にも進む事の出来ない状況に置かれてはいるけれど。

泳いでいた視線を戻して課長を思いっ切り凝視する形で聞く事は聞いてしまう僕。



けれど。


「はは、うん。わざとだね」


課長はあっさりと認め。



「で、嫌?」


ここで、『何が?』と聞き返されるのを課長は恐らく待ち望んでいる。


だからその一言をゴクリと飲み下すと、思いの外その音が響いてしまい。

課長が思わず正面を向いたままで噴き出した。



「や、、ちょっと!唾が!!」

「あははっ、ごめん、、今拭くから」



拭く、確かに課長はそう言って。

笑いながら僕の顔に付いた唾の上からチュッと。



肉厚な物を押し付けて。



「……もっとする?」



悪戯心を含んだ目を輝かせて、囁いた。












「シム君~!」
「………」
「本当ごめんって…」
「………」
「ね、そろそろ機嫌直してよ、、」



課長が唇をくっ付けたのは、僕の鼻先だったんだけど。

不意打ちで、しかも真正面で。

あの距離で課長に迫られた僕の心理状態なんか、、、



もうっ、もうっ、、心臓が、、



拗ねたわけでは無いけれど、一向に治らない動悸の所為で。

顔を上げる事が出来ない僕を全然放って置いてはくれずに仕切りに課長は謝って来る。


そして、終いには。


「…そんなに嫌だったらもうしないから」


そんな一言まで飛び出すから。

僕は俯いたままだったけれど、慌てて首を振って否定のポーズを示した。



すると。



「はぁ、、良かった…」




、、こんなんじゃいつまで経っても動悸なんか治まる気がしないんですけど…



ぎゅっと頭ごと課長の腕の中に包まれながら、独りごちた僕の顔は。


緩みっ放しだった。









にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

関連記事