2016_07
06
(Wed)00:00

オトコはツライよ #30








-Yunho side-



初めはただの同情心、それがいつからか…淡い恋心へ。






大学の時に見つけた"手取りのいい会社"へは難なく就く事が出来たけれど。

新卒は勿論の事、入社して4~5年経っても給料はそこそこしか貰えない現実を知り。

10年頑張って勤めていれば、その後がグッと手取りの額が上がって楽になるとか。

入社後の研修で意気投合をした同期との付き合いが時々あって。

その場ではやはり自分達の会社での今後のポジションを模索する話ばかりだった。


組織の中でただ流されていれば何とか定年までは勤め上げる事も出来る。

けれど、それでは満足したくは無い。

老後も暮らしに困らない金が必要だと思った。



そして俺は単純にこう考えたんだ。

要は他よりも上に行けばいいんだろ?と。




だが、悪友にその事を相談すると。


『お前みたいな優男が?上からも下からも舐められそうなのにな』


見た目が優しいから、厳しい出世争いについて行けないみたいな言い振りで。

またまた俺は物事を単純に考えて。

元々裸眼で生活出来るレベルの視力に恵まれていたのに、それを敢えて止め。


如何にも冷たそうな細いシルバーフレームの度なしの眼鏡をトレードマークに加えた。


少しは仕事が出来そうなイメージに見えるか?


トイレの鏡に映る自分を見る度に、職場でのイメチェンを計って行ったんだ。


まっ、そんなわけで見た目もさる事ながら。

仕事も出来ての今の地位がある。





が、しかし…


流石に課長職と言うポストまで昇りつめる為には一度本店から離れて支店での経験を積まなければならなくなり。

内示にそって異動したはいいけれど、肝心の妻はついては来ず。

支店での課長職に奮起している間に、妻からは離婚の申し出。

そうこうしている内にリフレッシュ休暇に突入。


妻の為にと思って密かに計画をした世界遺産を巡る旅を結局は俺一人で回り。


マチュピチュの壮大な景色を目の前に。

ふと、自分の中で築いた物全てが意味を無くしてガラガラと音を立てて崩れ落ちた。


そして。


旅行の最終日。

このまま全てを投げ捨てて、ドロップアウトでもしてやろうかと。

半分、自暴自棄になり掛けながらも足は勝手に社宅へと向かい。


無意識に部屋の暖房のスイッチを入れ。


寒くて、虚しいだけの部屋の中で。

ただ呆然と佇んでいた。



一生添い遂げる相手に選んだ妻から突き付けられた離婚の二文字に、相当なダメージを受けた自分が嫌だった。


父親の生き方が底辺だった筈なのに。


気付けば俺は、今全てを失おうとしている…


考えれば考える程、現実から逃げ出したかった。






…けれど、そんなどん底の心境の最中。

突然の訪問が、、


控えめなノックが一回、二回、妻子ありきで配慮されたノックに正直。

苛立つ。



居留守でも使いたい気分なのに、帰宅を待っていたかのタイミングに。

それさえも出来ないと思い、更に苛立ちが募る。



こんな不躾、一体誰なんだ?


逆にその顔を見て思いっ切り不満を漏らしてやりたくなり。


三回目のノックを待ってゆっくりとドアを開けた。



室内が暖まり始めた所に、一気に外気温が押し寄せて。

眼鏡のレンズが曇ってその顔が、よく見えない。

ぼんやりと滲んだシルエットにも見覚えが無かった。



それもその筈。


新しく俺の部下となる、シム・チャンミンだったからだ。


彼は俺と同様に、若くして異例の出世を遂げている為に。

本店時代にお世話になった上司から重々言い押しをされていたんだ。



『彼の評価を上げてやりたい、だからチョンも全力でサポートしてやってくれないか?出来れば私生活への配慮も充分理解して欲しい』



手厚い保護だと思った。


と、同時に。

可哀想な奴なんだなとの、認識も。



控えめなノックは気が利く証拠、俺の上司がわざわざ目を掛けてやる人物の顔は如何程に凛々しい物か。


曇った眼鏡の奥で、目を凝らして見れば。




…なんだ、普通じゃん。





それが俺の彼への第一印象だった。















課長の謎は?とコメントで問われた事がありますが、課長の過去編で謎は解けてますでしょうか。




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

関連記事