2016_07
05
(Tue)00:00

オトコはツライよ #29









-Yunho side-






あーぁ、鞄なんか抱き締めちゃって。

本当、分かり易っ。





世間体とか、体裁とか、そんなんばっかり気にしそうな彼が。

俺の一言だけで、スーパーの真ん中でこんな事になっている。


屈み込んで必死に赤くなった顔を隠しているつもりだろうけれど。

どうしたって耳の縁までは隠し切れない。


そっと伸ばした手で、触れて。

そして撫でて。


柔く噛んで。



で、その次は…?






スーパーの真ん中だと言うのに、あらぬ妄想に耽ってしまう。


だけど。

彼も、俺も、男だ。



容易には踏み込めない領域に挑もうとする勇気を。

知っているからこそ。


焦る必要は無いと俺は考えている。












親の背中を見て子は育つ。

確かに俺は両親から学んだ事は多い。




昔、俺の父親は小さいながらも工場を経営していた為に。

少しだけ裕福な暮らしが出来ていた。

しかし、国の経済危機の煽りを食らってすぐさま倒産の危機に追い込まれ。

元々事業家向きの性格では無かった父親は、酒の力で現実から逃避をするようになっていった。



酒に溺れた父親は、幼心に"悪"であり。

その"悪"の生き方が底辺だと、認識したのも早かった。


小さい頃は早く大人になりたくて、苦労続きの母親を救ってあげられるヒーローになるのが夢だった。


ヒーローになればいつかこの手で"悪"を排除する事が出来る。

純粋な少年は、その想いだけを胸に抱いて日々の苦難を乗り越えようとしていた。


だけど、その前に。

"悪"は呆気なく自滅。


あぁ、これでやっと幸せになれる…そう思っていた。





でも。

人生はそんなに甘くは無い。



父親が亡くなっても、結局は母親の苦労に終わりは無くて。

ヒーローになると言う夢半ばにして、俺は現実を知った。


世の中、全ては"金"さえあれば何とかなる、と。




幸いな事に。

中学の時の恩師が俺達母子の事を何かと気に掛けてくれる人であり。

母親を楽にさせる為に、俺がこれからすべき事を。

その恩師が全て教えてくれた。



具体的には、学校の成績は常に上位を保ち、品行方正にしていれば上の学校も推薦枠で何とかなるだろうとか。

更に進学を望むなら、奨学金制度を利用するのも手だとか。


だけど、結局は普通に進学をして。

大学も親のお金で行ける事になったんだ。



何故なら、その恩師が俺の継父になったからだった。


母親はか弱くて女らしく、苦労している割には老けた感じもしなかった。

それが、周りの目からは薄幸の美人に映るようで。

男心には"守ってあげたい"とでも思うのだろう。


母親の再婚に対して、異論は無く。


俺としては、母親が幸せになれば良かっただけ。


しかし。

ヒーローの夢も破れ、母親を楽にさせたい一心だった進学も意味を失ってしまい。

漠然と、"手取りのいい会社に就きたい"それだけの為に大学へ通ったと言っても過言では無い。

しかし、勉強する為に通う大学で。

様々な女性からのアプローチを受ける事が他の友人より多かった俺は、来るもの拒まずに手当たり次第に付き合い。


そのうち、段々と自分が苦手なタイプも分かるようになっていった。


大人しい、よりも、活発な性格を好み。

守ってあげたい、よりは、自立した方が良いと思えた。


つまりは母親と正反対が良かったんだ。




色んな女性と付き合った結果、一番条件に合った前妻との結婚を決めたのは。

今の会社に就職してから6年目の事。

そして、それから4年後に離婚。



活発で、自立した女性を選んでおいて。

母親のように苦労をさせたくないとか。

結婚したら家庭に入って欲しいだとか。

そんな条件を出したのがそもそも間違いだったんだろう。






離婚をしたと、俺から報告を受けた大学時代の悪友曰く。


『留学先の日本で選べば良かったんじゃねえの?お前の運命の相手は国境の壁を越える必要があるな』


だった。



韓国の女じゃ無理だって、俺を良く知る悪友が言うのは一理あると思った。






「シム君、…大丈夫?」



家庭的で、ちゃんと自立もしていて。

俺が望んだ理想の形がここにある。

おまけに、その息子も可愛い。




「早く帰ろうか?」

「…はい」








でもな、悪友よ。

超えるべき物は、国境じゃなくて。



性別のようなんだ。











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