2016_07
01
(Fri)00:00

オトコはツライよ #25






「…ぁあ゛!」




寝返りを何度も打つ度に。

背中に触れた指の感触が蘇り、一人で悶絶を繰り返した。


背中は勿論の事、顔まで火照ってなかなか寝付く事も出来ない。



…す、き…



頭の中で反芻するだけで身体も心もポツポツと熱いものが込み上げる。


「……あぁ゛!!、、、」











…はぁ。

翌朝は案の定、寝不足ですと言わんばかりの酷い顔。


そんな僕とは打って変わり、課長は穏やかに菩薩のような微笑みをたたえ。

後光すら見えるんじゃないかと思う程に神々しかった。



「おはよう」


「…おはようございます」


ただの挨拶が妙に照れる。


「ん、どうした?なんか…」
「え?」


「顔色、良くないね」

照れて伏せがちだった顔を下から覗かれ、指の腹で僕の涙袋にちょんっと触れる。



「・・・・・」


「…あ、でも耳は赤い…?」



そんなやり取りを玄関でしていた僕ら。


それを見て息子はどう勘違いをしたのか。

俯き加減のまま固まって動けない僕と、そんな僕の耳をナデナデする課長の手を取るなり。

"仲直り"とでも言いたげに二人の手を握り合わせた。


その時の息子の顔が、まぁ、ね。







「…凛々しげだったな」



息子を園に送った足でそのまま会社に向かう道すがら、思い出しては課長と揃って噴き出した。


心の何処かでは。

子を持つ親としてお手本になる生き方をしなきゃ行けない、だからこそまっとうな生き方を見せなければ…

そんな風にまだ常識や世間体に囚われている部分があって。



けれど、実際は。

指針を示してあげなければと思っている親の気も知らずに、肝心の息子が僕と課長の仲を取り持つんだ。


…はぁ。


課長への想いを自覚したばっかりで、なかなか行動が伴わない僕を後ろからはぐいぐいと息子に押され。

つんのめってよろければ、前では課長が手を広げて。

恐らく、僕が飛び込むのを待っている。



だけど…そう簡単に飛び込めないんだよ、こっちは。











「シム君、…ちょっといいかな」


明後日の会議に向けて資料作りに没頭していた僕の肩に見知った手が触れる。


 
は?よく無いですよ。

とは言えない…、何故なら今はまだ勤務時間だから。

それにアンタは僕の上司だ、何か用があればそっちを優先せざる得ない。

だけど、今日は出来ればあまり課長に関わりたくは無かったんだ。


昨日は久々に眼鏡を掛けて、職場を不穏な空気に陥し入れ。

翌日はまた菩薩に舞い戻り。


そんな課長の一挙一動を皆が注目をしている。



…僕の変化には目敏く気付くのに、何で職場の空気が読めない?









「で、何処まで行く気ですか…?」


てっきりあのままデスクで何か話されるんだと思っていたら、課長はフロアの外へと僕を促し。

仕方無しに大人しく従ってみれば給湯室の前を通り過ぎ、更に奥へと歩みを進める。

こっちは比較的、用がなければ来ないエリア。


資料作りも直ぐに済むと思っていたのが意外にも時間が食ってしまい、課長の後ろを歩きながら頭の中はその事で一杯だった。

だから突然止まった課長の背中に思いっきりぶつかり。


「あぁ、ごめん」


言うなり身体を翻し、額を僕のそれにくっ付ける課長の行動に反応出来なかった。


「…良かった、熱は無いね。前みたいに具合い悪いのに無理して仕事してんじゃないかと思ってさ」


目線の直ぐ先には、柔らかそうな唇が忙しなく縦に横に伸びる。



「じゃあ、安心したから後はこれ飲んで頑張って……本当はさ、俺が飲ませてあげたいんだけどね…?」





違った。

課長は手を広げて飛び込むのを待っているようなそんな受け身じゃ無いようだ。






…結構、ぐいぐい来るんだな。










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