2016_06
30
(Thu)00:00

オトコはツライよ #24








「…今日の夕飯ってさ、あれ全部俺の好きな物でしょ?」


「まぁ、そうですね…一応そのつもりで買い出しましたから」



僕の背中越し。

いや、正確には背中越しと言うよりは背中に唇をくっ付けたままでモゾモゾと話し出す課長。

またゾワッと寒気が込み上げて、身を捩ると。

ぎゅっと腹に回された腕が締まるんだ。




ゾワッとぎゅっで、正直、グェッな僕。

だけど、課長はそんなのは全然お構い無し。




「シム君って本当、…天邪鬼…」


口では悪態を吐いてるのに、その言葉には不釣り合いな含み笑い付きで。

また顔を背中にぐりぐりと擦り付ける。



「…そんな所が、まぁ…ね」


そこで言葉を一旦切った課長がこれこそまさに背中越しで照れているのが分かった。

いや、本当、勝手に照れられるとこっちだってそれが伝染するんですけど、、、

それにこの流れって……まさか


「す、」         「うわっ!暑っ、喉渇いた、、、お茶お茶!!」



…やっぱり例の言葉を言おうとしてるし…


僕は亡くなった妻にだって滅多に恋人同士に必須な甘いフレーズを囁いた事なんて無かったんだ。

今となればもっと言ってあげれば良かったと悔いる事もあるけれど。

それは勿論、男女の関係性で成り立つのであって。

ひょんな事で、隣同士で。

しかも、課長職の直属の上司と。


こ、………こ、………。

…まぁ、そんな関係になってしまったのは否定出来ない事実な訳だけど。


今回は妻の時とは、違う。



相手は男性、そして、僕も男だ。



愛とか恋とか、好きとか愛してるとか。

改めて口に出すのだけは本当。


勘弁して欲しい……









その後も課長は何度かその言葉を言い掛けて。

その都度僕に阻止されて言えず仕舞い。


その内、お互い半分ふざけ出し。

僕は明らさまに聞こえない振りをアピールしたり。

課長も課長で「す…」まで言った時点で、続きを僕が阻むと。

「あ~涼しいなぁ」とか、完全に言葉遊び。


そして、最後には二人で噴き出した。

甘いムードなんてそれこそ何処吹く風だ。

馬鹿馬鹿しさが、僕らにはぴったりなんだ。







結局、とうもろこし茶をちびちびやりながら。

その日は珍しく二人並んでテレビを観ながらたわいもない話で就寝時間を迎えた。

けれど、「泊まって行きますか?」の一言がどうしても僕からは言い出せず。

課長も泊まる素振りは見せずに自宅へと戻る雰囲気。

その様子が物凄く寂しいのに。

甘いのは照れるくせして、人肌が恋しいだなんて。

矛盾だらけの僕。





だから。



「最後にちょっとだけ、ぎゅってさせて」



課長からのバックハグの要求に快く応じたのは言うまでも無い。





…だけど。


背中に触れた温もりは、「す、き」と。



迷いなく服の上をなぞる。





「…じゃあ、おやすみ」





パタンと音無く閉められたドアに、ずるずると力無く崩れ落ちる僕。










やられた………









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