オトコはツライよ #23

「はい、あーん」
シルバーフレームの眼鏡と言う、課長にとっての仮面を取り外したのはこの僕なんだけど。
今朝まで笑わなかった人とは思えないこの変わり様に、正直まだ僕は…ついて行けない。
「…自分で食べれますから、いいですって」
やんわりと断るのもまどろこしくてはっきりと拒絶をしたのにもかかわらず。
全然めげた様子を見せない課長は、そのスプーンをそのまま息子の口へと運ぶ。
二人は「美味しいね」だなんて満面の笑みで僕を見つめ返す。
また…その笑顔が。
瓜二つ。
つられて僕まで口元を緩ませてしまう程で。
「幸せだね」
課長がボソッと呟いた言葉に僕は返す言葉も無く。
ただ深く頷くだけだった。
だけど。
息子をいざ寝かし付けしまってからの僕らの行動はと言うと。
落ち着きが無く、以前のようにすんなりと甘えタイムへと突入する事が出来ずに。
やたらとそわそわしていた。
「今日は…どっちにしますか?」
とうもころし茶とビール缶を並べて選ばせると、課長の手は散々逡巡したのちにとうもころし茶を取り。
そして、僕はいつも通りにビール缶を選択したんだけど。
横からにょきっと伸びた手によってそれを飲む事を阻止されてしまったんだ。
「え、なんで」
思わず抗議の声を上げれば、課長は少し困り顔で僕にふわりと笑い掛け。
「…今日は飲まないで欲しいから」
だなんて。
勿論、自覚はしていたけれど。
自覚した上でのこの課長の笑顔は、ちょっとな。
色々と、来るものがあって。
「はは、耳真っ赤」
本日、初めてのヨシヨシは。
僕の耳から始まった。
「…シム君、あのさ」
「っ、、ちょっと…耳元で喋べんの止めてくれませんか、、」
「あ、ごめん」
「……」
はぁ、疲れる。
初めは耳を触られて、その次は頬に軽く触れて。
素面でそんな風に身体の一部に触られると、足元からぞわっと寒気が襲うのに。
触れ出したら課長の手は止まることを知らないみたいに、僕の身体をやんわりと包み込むから。
結局はその腕の中で収まってしまう僕だった。
けれど。
前よりもその肌の密着度を増す距離感に僕は落ち着きなくそわそわしっ放し。
だけど、がっちりと抱き締められた腕の中では僕の逃げ場所は無かった。
「はは、落ち着かない?」
「…はい…ちょっと」
「そっか。俺はやっぱりこれが落ち着くけどね」
「っ、うわ、っ、、!?」
ふぅっと長い吐息と共に、ぐりぐりと僕の背中に顔を擦り付け出す課長。
身を捩っても全然離してくれる気配はゼロ。
「ん、、ちょっと、、やめてくれませんか!」
執拗にぐりぐりする課長にちょっとだけキレ気味で声を上げた所で。
課長はあの特徴のある笑い方で更に僕の身体をぎゅっとする。
アンタ、ちょっと…調子に乗ってんな?
…だけど。
「今日だけは、…好きに甘えさせてよ」
だなんて。
切なげに言うのは反則だって、、、
Aliさん♡漸くこの柔らかい題字のイメージ画像に変更出来ましたよ~(*˘︶˘*).。.:*♡
緩やかに甘~くなるかな…(笑)?

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